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『丘の上の本屋さん』を観た。日本で生きるということ。

映像が綺麗な映画が好きだ。
内容は淡々としていても、綺麗な街並みやおいしそうなご飯、独特なカメラワークの映画にはつい引き込まれてしまう。
 
『丘の上の本屋さん』は2021年製作のイタリア映画で、
チビテッラ・デル・トロントという村を舞台に、
石畳の丘を上がっていくと小さく構える古書店での出来事を描いた作品だ。

※以下ネタバレありなのでご注意を。


主人公 リベロは本をこよなく愛するおじいさん。
隣のレストランで働く恋する若者との友情や、
医者を目指す本好きの移民少年エシエン、
本を売り込みに来る客や探し求めている客、
そしてある日ゴミ箱から拾い上げられた「戦後の女性の日記」。
 
舞台はこの古書店からほぼ動くことはなく、
リベロの日常を淡々と描いている。
 
激しい動きはないものの、
彼の周りを取り巻く環境が少しずつ変わっていき、
リベロの本や人への愛情が浸透していく様子に心が温まる。


リベロは亡くなって映画は終わりを迎えるのだが、
彼がエシエンに譲った唯一の本は「世界人権宣言」だった。
 
最後の最後でやっと気づいた。
そうか、この映画は移民として生きていくことの難しさや人の自由である権利を訴えることを含んだ映画だったのだ。
 
気付けなかった自分を恥じた。
わたしはただのハートフルストーリーとしてこの映画を眺めていた。

それほどわたしの生活は「移民」と接点がない。
あとで調べると、ユニセフとの共同製作映画だった。
 
本好きの一人として、
古書が並ぶ店や愛する人々の話に大きな魅力を感じるとともに、
人間の一人として、
世界には向き合ったことのない問題がたくさんあるのだと思い知らされた。


ところで、作中に出てきたお菓子「スフォリアテッラ」が気になって調べてしまった。

貝のような見た目に何層ものパイ生地が象られ、中にクリームが入っているパリパリとしたナポリの伝統菓子らしい。

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