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東北旅 三日目 その7

小屋に到着すると
ビニール幕の中で、
作業する人が数人。

全く初めての場所なのに、
何故か知ってるような場所。

こんにちはと
声をかける。

中で作業している
おばあさんと
背の高いおじさん、
そして、若いお兄さん。

家族で牡蠣を
きれいにする作業をしている。

水色の大きなカゴに
たんまりと入った
とれたての牡蠣。

海から揚がったばかりの
牡蠣を小さなナタで
小気味よく海藻や
付着物を取り除いていく。

本物の漁師さんの仕事、

ああ、そうか、これは
海人さんのお仕事だ。

すごく、リアル
というか
本物だ。

少しことわって
作業を見ていると

奥の方から
年老いたおばあさんが
出てきた。

きれいな澄んだ目。

きっと若い頃は
綺麗だったに違いない。
今でも現役。

あらぁ、どこから
来たの?

東京だと答えると

よかったらお茶でも
飲んでいきなぁ、と

奥の薪ストーブの
ある場所まで案内してくれた。

これが、煙の正体。

誰と来たの?

一人です。
旅行で、、

すると、はぁ
独りで、、?
なんでぇ、、?

と不思議そう。

そしたら、おばあちゃん、、、
私の目をじーっとを見て

ずっと、ここにいて
いいんだよ。
いくらでも、ここにいて
いいんだよ。

って、、

なんにもない
得体の知れない
この私にそう言う。

なんで
そんなこと言うの?
おばあちゃん。

帰れなくなっちゃうじゃん、、


この道の上に、
新しい家建てて
住んでる心根のいい人いるから。
その人子供もいないんだ。
ばあちゃんのこと言ったら、
このあたりのいいとこ、
案内してくれるから、
そこいけぇ。

って、、

なんだか、
涙が出て
止まらなかった。

って言うか、
本当にここにいたい。
ずっといたい。

帰りたくない。

こんな気持ちになったの
生まれて初めてだ。

私はいつも
帰りたいって思ってた。
どんな場所も
居心地が悪くて、
アテのない居場所を
ずっと探していた。

もしかしたら、
ここが心の故郷なのかも。

涙が止まらない。

「ずっとここにいていいよ。」

これ、ずっと私が
欲しかった言葉だ。

なんで、わかるの?
おばあちゃん。

おばあちゃんの
出してくれたお茶と沢庵。
美味しい。

私は、しばらくそこにいた。
気の済むまでいようと思った。












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