作品紹介|映画『ショーシャンクの空に』

*この記事は一部ネタバレを含みます。

― 絶望のがけっぷちで、自分の信念を貫くことができるか ―

こんにちは。生意気な犬です。
本日は、私の大好きな映画『ショーシャンクの空に』について語りたいと思います。

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『ショーシャンクの空に』1995/フランク・ダブロン

ストーリー
エリート銀行員のアンディは、無実の罪でショーシャンク刑務所へと収監されてしまう。荒れた囚人たち、刑務所内にはびこる汚職などを目の当たりにしながらも、自らの希望を信じてもがき続け、ついに彼は難攻不落のショーシャンク刑務所からの脱獄を果たすのであった。

どこまでも誠実な男・アンディの生き様
この作品の一番の見どころはやはり、絶望の中でもわずかな光を信じて脱獄用の穴を掘り続けた主人公・アンディの力強い生き様でしょう。
銀行員だったアンディはその腕を買われて刑務所の経理を任されるようになり、次第に周囲の信頼を得ていきます。しかし彼は決してそんな”都合の良い囚人”にとどまることはなく、常にその眼は「脱獄」という一筋の光をとらえ続けていました。途方に暮れるような地道な作業を続け、ついに刑務所に希望の穴を開通させてしまうのです。
転落人生からの這い上がりという王道ストーリーでありながらも、この作品を名作へと仕立て上げた要因は、まさに誠実さと力強さを兼ね備えたアンディの生き様にあるでしょう。

調達屋・レッドの存在感
外部から様々な品物を手にする調達屋・レッドも、この作品には欠かせない重要人物です。
彼はアンディが入所するずっと前から刑務所で服役しており、ベテラン囚人として存在感を光らせています。長きにわたる刑務所生活で希望を持つことに恐れを抱いている彼は、作品の前半では自らの無実を訴える新入り・アンディの対比として描かれます。しかし徐々にアンディの生き様に魅了されていく彼は、ついに希望と向き合うようになるのです。
口数は少なくとも、彼の表情は多くの心情を語ります。新入り・アンディの生き様を見て、忘れたふりをしていた希望を取り戻していくその表情は、他者を魅了するアンディの人間性を存分に惹き立てるほか、レッド自身の人間らしさも色濃く表現しています。

ユーモアあふれる行列シーン
基本的には絶望の演出が続くこの作品ですが、くすっと笑える私のお気に入りシーンがあります。それが、アンディに納税や資産運用の相談をしようと、刑務官たちが行列を作るシーンです。
会計や法律に精通するアンディは、囚人ながらも刑務所の大改革を行います。所長の下で経理を担当するほか、図書館の拡張にも尽力し、囚人たちの中でも特別な扱いを受けます。そんな中、気が付けば彼のもとにはお金のことで悩む刑務官が殺到し、行列ができるようになるのです。普段は仏頂面の刑務官たちも、そのときだけは人間味あふれた表情を見せる貴重なシーンです。
こうしたユーモアがあるのも、洋画らしくて素敵ですよね。

希望の青空と絶望の大嵐
この作品で最も有名なシーンは、やはりアンディが脱獄に成功し、大嵐の中で両手を広げて喜びを爆発させるシーンでしょう。
このシーンを見て私はすぐ、「なぜ喜びのシーンなのに悲しみを想起させる大嵐を降らせたのだろう?」と疑問に思いました。その疑問に対する私なりの回答は、「太平洋の青空との対比」でした。作品の一番最後のシーン、脱獄に成功したアンディはその後、青空の下の太平洋を見据えながら新たな人生を歩み始めます。つまり、ショーシャンク刑務所という絶望の場所から太平洋という希望の場所への物理的・精神的移動を、大嵐と晴天という相反する天気描写で表したのではないか、というのが私なりの解釈です。
たくさんの解釈があると思いますが、いずれにせよ、大嵐の中で喜びを表現するあのシーンは、現実でも真似したくなるほど印象的なワンシーンになっています。

吹かれなかったハーモニカ
最後に、私が納得のいかなかった点について触れようと思います。それは、レッドがアンディからプレゼントとして渡されたハーモニカを最後まで吹かずに終わることです。
作中では音楽は自由の象徴として描かれ、ハーモニカもまた、レッドにとって希望を意味する小道具として描かれます。アンディの脱獄後、レッドも仮釈放を許可され、社会復帰の厳しさにさらされながらもアンディと共に夢を追うことを決意するのですが、肝心のハーモニカはその後登場せずに終わります。青空の下でレッドが盛大にハーモニカを吹き鳴らすシーンを期待したのですが、みなまで描かないのを美としたのでしょうか、そのような描写は最後までありませんでした。
映画において音楽の持つ効果は大きく、私が楽しみにしている一要素でもあるため、この作品でハーモニカが吹かれなかったことはどうしても残念に思えてしまいました。しかし、レッドにとってハーモニカを受けとったことが大きな意味を持つことは間違いないと信じています。

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ストーリーは単純かつ王道で、登場人物もそこまで多くない『ショーシャンクの空に』ですが、誰もが応援したくなるアンディの誠実さや、細かな意味が込められた数多くの演出など、映画全体を通した質の高さがこの作品を永く愛される名作へと育て上げたのでしょう。
深く考えなくとも気軽に楽しめる作品ですので、ぜひ一度観てみることをお薦めします。

最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

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