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2020年から履歴書はJIS規格が使えなくなったから(新卒就活生に送るほどのものでもない手紙)

 BUSINESS INSIDERに『履歴書による採用は時代遅れ』と題した旧来的な採用に頼る他にない中小企業へ挑戦的な見出しをつけた記事が出されていた。しかも記事内にはリクルートホールディングスの出木場久征社長兼CEOまで出ていることから何とも言えない感情を抱くが、邪な気持ちを抱かなければいいだけの話なのはわかっている。

https://www.businessinsider.jp/post-246158 より)

 どうも、おはよう!会えなかった時のために、こんにちは!こんばんは!おやすみなさい!えんどう @ryosuke_endo です。

あっしは履歴書不要論者です

 別に隠していないのだが、僕は履歴書は不要だと思っている人間である。エントリーシートは共通フォーマットとして新卒の学生にとっては便利なツールなのかもしれないが、何よりも自分が新卒学生として就活を経験していないために便利なのかどうかも理解できていない。

 しかし、だ。

 年齢や性別、顔写真を掲載することは採用における「差別」を想起しやすいことはたしかだ。実際、国によってはunconscious bias(無意識の偏見)を排除する目的から上記の内容を記載・添付することを法律で禁じている。

 ただ、日本では何よりも慣習的に使われていることから未だに多くの事業者が求職者に向けて提示・提出を求める書類であることは間違いない。というよりも、代替物がないとした方が適切かもしれない。履歴書を一律に指定する根拠法がないことから、求められる書式・作成方法は一定ではない。

 実際、僕はここ数年の転職活動において少なくとも市販の履歴書を買った記憶はなく、職務経歴書を基本フォーマットとし、そこから履歴書(志望理由記載欄のないもの)を自作した上でデータ送付している。

性別をはじめとした書類提出の課題認識は...

 正直な話、日本の雇用環境において性別がどうだとか年齢がどうだ、人種がどうだと言い出した、もしくは認知されるようになってきたのは平成に入ってからであり、そこまで気にする人が採用側にいなかったことが原因だろう。

 現に、男女雇用機会均等法の前身である「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」は1985年に制定され、1986年に施行されたもので、実に36年が経過している。にもかかわらず上場企業2,220社外の中、女性役員数ゼロではない会社の数が2021年3月の調査で初めて50%を超えた。

 36年も経過し、やっと半数以上の上場企業で女性役員がゼロではない会社の方が増えてきているということで、前向きに捉えれば女性が活躍できる時代になってきたと言えるのかもしれないが、事実としてそんな数字がある以上「そんなもんだよね、日本って」などと考えてしまうのは僕だけではないだろう

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210716_03.html より)

履歴書の代替策の議論は実質すでに

 また冒頭のBUSINESS INSIDERの記事で触れている「履歴書による採用は時代遅れ」だと断じているのには微妙に履歴書が影響していることにも触れておこう。

 実は、これまで日本では日本産業規格(JIS)で定められた様式例があり、多くのメーカーがこれを参考にした記入欄を設けた履歴書を販売していたのだが、これがunconscious bias(無意識の偏見)や少し上の男女雇用機会均等の流れを踏まえてか、様式例が撤廃されたのだ。

 これにより、企業の採用に採用における各種書類のフォーマットの用意が必要になったのだ。そこで媒体企業であるリクルートが「すでに履歴書はオワコンである」と述べることに何ら違和感もない。むしろ、言うべくして言っているのだろうし、出るべくして出た情報だ。

 満を辞して、というべきかもしれない。

 そもそも企業側が履歴書を求める理由は、労働基準法107条に厚生労働省令に定める事項を記入した「労働者名簿」を用意しなければならないことによる。(労働者名簿の適応範囲に日雇い労働者や代表者・役員などは該当しない役割もあるものの、原則的に被雇用側の名簿は雇用側が用意する決まりになっており、保存期間も設けられている。)

 ここまで散々と書いてきておきながら何なのだが、履歴書はすでに不要どころか使われなくなってきつつあるツールであり、代替的に何を基準にしていくべきなのかを手探り状態になっているのが現状だ。

 正直、ものすごくどうでもいい議論な気がしてならない。

 そもそも多くの学生が履歴書にかける内容なんてたかが知れている。部活にバイトにサークルの話ぐらいなもので、そこを深掘りのできる人間が優れているわけでもなければ、一言だけしか書いてない履歴書を持ってきた人間が優れていないとも言い切れない。

 とにかく、働いてみるまでわからないのだ。

『気になる人』で印象に残るのが就活では大事

 以下は『読みたいことを、書けばいい。』や『会って、話すこと。』の著者であるコピーライターの田中泰延さん(@hironobutnk)の1993年度の就職に向けて応募した企業に向けて送付したES(エントリーシート)だ。

 詳細説明は画像下のリンクをご覧いただきたいのだが、ここまで「質問をしたくなるような内容」を記載できるのであれば、内定はほぼ確だろう。僕が採用面接の担当者であれば、即時的に採用内定を進言するし、何とかして採用してもらう方向で働きかける。

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https://diamond.jp/articles/-/272656 より)

 どんなに世界を一周して世界観が変わろうが、有名企業で長期インターンをしていようが、何なら屋号を取得して納税するようなことを繰り返していたところで、マッチできるかどうかは働くまでわからないのだ。

 しかし、「おもしろそうな人」だとか「優秀そうに見える人」として印象に残ることは就活における生存戦略において、最も重要な位置づけとなる。働いてみるまでわからないのであれば、そもそも働くという段階に至らなければならない。つまり、入社するしか答え合わせはできないのだ。

 となると、必然的に内定を獲得するために何かしらの実績が必要になるだろうが、そんなことは他の下世話な大人に教育された意識高い系の学生ならやってくるはずである。

 そんな熱烈な情熱を持つ、「意識高い系」と「意識高い系になりきれない系」、そして「意識高い系になれなかった系」といった有象無象の学生たちがひしめき合う就職戦線の中で、入社というステージに進むためには面接官にとって印象に残る必要がある。

 優秀である必要なんてないのだ。

経営者目線でいえば人手不足だけど日本は人手不足じゃない

 いま、日本は人手不足だと言われているが、実はそうではない。

 平成27年と少し前のデータとなるが、内閣府による当時の調査で若年(15〜34歳)無業者は56万人。

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https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h27honpen/b1_04_02.html より)

 また、労働政策研究・研修機構によると、日本の完全失業者(働きたくても働き口がない人)は2021年9月時点で192万人となっている。

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https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/c03.html より)

 ハローワークに寄せられている2021年9月時点の月間有効求人数は220万件であり、失業者の定義には入らない転職希望者も含めると(ハローワーク求人に限定した話ではあるが)決して人が不足しているわけではないことがわかる。

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https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21819.html より)

 安い賃金で言うことを聞いてくれるような人手を雇用したいと願う企業側と比較し、安い雇用条件で働こうとする求職者が減ってきているといえる。そこで外国人の雇用を拡充させようって取り組みを始めようと日本国政府はしているが、それでは賃上げなどできないだろうし、しないではないか。

 これまでは新卒学生を安い賃金で雇用できていた様々な業界が、人を集められない上に賃金を上げられないからと言う理由で外国人を雇用して何とか凌ごうとすることは本来、あって然るべき姿なのかどうかは検討というよりも再考すべきことだろう。

 その辺りはこの辺に書いたので、暇があれば読んで欲しいのだが、日本はさらに日本人を減らす方向に舵を切っているのである。

 さて、この辺で終わることにしよう。

 新卒っていう大きなカードを手にしている以上、ぜひ、新卒学生にはがんばってもらいたい。オジさんは遠い目をしながら君たちを応援している。

ではでは。

えんどう

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