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世の中で一番ニガテな生き物がいる町、で暮らす。

きっかけは、アメリカ在住の妹からのLINEだった。
「お姉ちゃん、笠岡の家に住んだら?」

笠岡の家、というのは義弟(妹の夫)の実家。
岡山県笠岡市神島(こうのしま)にあり、義弟のお母様が
25年一人暮らしの後、5年前に施設に入られて以降は空き家になっていた。

その家は港から徒歩2~3分。
築90年ほどの古い家だが庭が広く、金柑、すだち、みかん、八朔など数種の柑橘系の木が育ち、お母様は庭の半分ぐらいを畑にされていた。

妹一家は子どもが小さいころは毎年帰国時にこの家を訪れ、目の前の浜でとれるアサリや魚を食べるのを楽しんでいた。
そして私の住む京都の実家へも、朝、漁港で揚がったばかりの魚や庭で採れる金柑やすだち、野菜を山盛りお土産に持って帰ってくれたのだった。

神島も元は島だったが、昭和40年代に湾が埋め立てられて広大な干拓地となり、今では陸続きになっている。

家は瀬戸内海側にあり、JR笠岡駅からは10㎞ほど。
駅から干拓地を通るバスに乗れば40分ほどかかるが、駅に近い港から笠岡諸島を巡る船に乗れば20分で家のすぐ近くの港まで行けるので便利だ。

駅の周りに大きなスーパー、ホームセンター、病院、市役所などがあるので、車を持たない私でも自転車さえあれば何とかなる。

漁港は家から徒歩2分

私は海のそばで農仕事ができるところを探していた。
移住するなら何度か訪れて気に入っている九州か四国に、と考えていたので岡山はリストになかったのだが。

海のそばの空き家。
しかも、家賃タダ! いいかも!!

ただ、ここには大きな問題が一つ。
笠岡市には、世の中で一番ニガテで、私にとっては天敵である生き物が生息しているのだ。
しかも、町をあげて推している!

それは……カブ〇〇〇
 ※笠岡市のホームページに必ず出てくるので、そちらをご覧ください。
実物はもちろん、写真も、文字からも連想してしまうのでダメ。

  • 高校生のころ、生物の教科書に載っていた写真は紙を貼って封印していた

  • 大学生のころ、電車の網棚に荷物を上げたら、そこに貼ってあった水族館のポスターの写真を見て「カブ〇〇〇や~!!」と悲鳴をあげ隣の車両まで逃げた。一緒にいた友達が「どこに?」と座席の周りを探した

  • 水族館の「生き物ふれあいコーナー」で、遠足に来ていた幼稚園児がワイワイしていたので、「何がいるのかなぁ?」とのぞき込んだらソイツがいた。悲鳴をあげて逃げたため、園児たちに笑われた

  • たまに水族館に展示してあるので、入るときはビクビクしている

  • 近くで「兜谷公園でね……」と話しているのが聞こえたら、ビクッとなる(兜谷の「ダ」が「ガ」に聞こえるため)

  • 形が似ているカブトムシやキャスケードブーケなどもニガテ

ソイツは「生きた化石」といわれ、もう日本にはほとんど生息していない。
だから日常生活で見かけることは、まずない。

ヘビとか蜘蛛とかG(ゴキブリ)がダメな人はいるけど、なんでそれがダメなん?
とよく言われる。でも、40年以上ダメなものはダメ。

それはたしか、私が中学生ぐらいのとき。
夢の中でのはなし。夢ですよ、夢。

ふと、庭を見るとソイツがいた!
おっ! これって、「生きる化石」て言われてるやつやん。
捕まえたら高く売れるんちゃう?
(と、網で捕獲し売りに行った)→夢ですよ、夢。

その晩、夜中にふと目を覚ますと、天井にソイツが張り付いている。
えっ? なんで、あんなところに?
と、思った瞬間。ソイツが裏返って、私の顔の上に落ちてきた!!!!

ギョェェェェェ~~~!!!!
(そこで、目が覚めた)
夢ですよ、夢。 あまりにも怖すぎて、以来40年以上、ダメ。
ほんまにニガテ。
(ちょうど当時上映されていた「エイリアン」に似た場面があり、その影響も大きいとも思います)

それなのに、笠岡市には博物館がある。

その形を模したカブ〇〇〇博物館

町名にも。道案内にも。

消火栓はかわいいキャラクターなので何とか大丈夫だけど

マンホールはリアルすぎて、ダメ!

目を瞑って撮影した

とりあえず空き家を見てみようと訪れた昨年11月。
同行してくれた県北在住の義妹が別れ際にくれたお土産は、カブ〇〇〇饅頭カブ〇〇〇煎餅だった。

「お姉さん、大丈夫ですよ。今はもういませんよ」と義妹は笑う。
でも……。

駅にも、道にも、看板にも、市のホームぺージにも、
コレしか、ないんかい!
と言いたくなるほど、町のあちこちにソイツがいる。

海のそばの空き家。
近くの農仕事も見つけた。
自転車で生活できる。

なのに、よりによって、なんでココにソイツが……。

天敵と暮らす@笠岡の生活を綴ります。(続く)









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