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第4回① 竹田陽介先生

「医師100人カイギ」について

【毎月第2土曜日 20時~開催中!】(一部第3土曜日に開催)
「様々な場所で活動する、医師の『想い』を伝える」をテーマに、医師100人のトーク・ディスカッションを通じ、「これからの医師キャリア」を考える継続イベント。
本連載では登壇者の「想い」「活動」を、医学生などがインタビューし、伝えていきます。是非イベントの参加もお待ちしております!
申込みはこちら:https://100ninkaigi.com/area/doctor

発起人:やまと診療所武蔵小杉 木村一貴
記事編集責任者:産業医/産婦人科医/医療ライター 平野翔大

一般社団法人「病院マーケティングサミットJAPAN」を主宰し、「医療と社会の橋渡し」をテーマに活動する竹田先生。循環器内科医からの転身、そしてその活動の根にある「想い」について、語ってくださった。

竹田陽介先生
循環器内科医としての診療に加え、数多くの病院広報コンサルティング、学会イベントの企画・プロデュースを手がける医療コミュニケーションのエキスパート。2018年より病院マーケティングサミットJAPAN代表理事を務め、医療分野のインタープレナーとして病院・学会・企業の橋渡しや共同プロジェクトの企画・監修を行なっている。

幅広い場と人とでゆるくつながる

「イメージしてるのはね、ゆるい学会風のコミュニティなんですよ」と、自身の主宰する
「病院マーケティングサミットJAPAN」を語る竹田先生。名前からして、病院広報の話かと思うが、今ではその枠を飛び越えたコミュニティを形成している。
これまでに4回、「サミット」として大規模なイベントを実施してきた。その筋となる大きなテーマが、「社会×医療」である。当初は「病院マーケティング」という題目からスタートし、広報やプロモーションの助けを目指した本企画は、参加の対象を広報担当者としていた。ところが、「医療の価値を外に示していく」という観点から、その対象はいつの間にか、診療する先生や、部長、教授といった現場の人をも巻き込み、オンライン開催になってからは医療分野を超えた各企業にまで広がっている。年齢層も幅を増し、直近の会をみてみれば、参加者の層は中学生から高齢者まで医療内外の垣根を超える会となった。
その中で一つの合言葉は、「病院進化論」であると竹田先生は語る。

病院マーケティングサミットJAPANの活動の様子(講演スライドより引用)

 「病院進化論」 

場にとらわれない医療体験をともに楽しく考える

 これまで、「クリニック」や「病院」と聞いて一般にイメージするのは、一戸一戸の医療機関という「建物像」であった。ところが、これらクリニックや病院という場を「医療体験がうけられる場所」としてとらえなおすと、今やその形は建物ばかりにとらわれない。
 例えばワクチンの接種会場は「疾患の予防を目的とした医療体験を受ける場」であるといえる。あるいは公衆トイレでは、近い将来、「便器で便潜血のチェックを行い、大腸がんのスクリーニングをする」日が来るかもしれない。こうなれば公衆トイレも一つの立派な「医療機関」 だ。
「ヘルスケアが展開される場は、必ずしも医療機関内だけとは限らないのである。社会の中で、医療がユビキタスに広がっていく。そんな医療体験を設計するのは、病院の中にいる医療従事者のみではなく、むしろ市民や医療にとらわれない企業の人たち、そんな社会の構成員すべてではないでしょうか。」
そう語る竹田先生のモットーは、「同じ目線で、楽しく医療を考える」だ。「仕事にかこつけて、面白いことをやりたい。それが本音です。」と先生は話す。病院の外にいるいろいろな人とともに、わくわくできることに取り組み、育てていく。その場を作っていくことそのものが、先生にとって楽しいことであるという。

「医療を考える」という、共通の趣味に打ち込む場

最初、病院マーケティングサミットJAPANでは1年に1回の頻度で「学会」としてイベントを実施していた。しかしこの楽しい取り組み、場づくりを1年に1度のみで納めるのはもったいない。そこで思いついたのが、「医療マーケティング部活動」である。仕事への参画という意識ではなく、共通の興味がある人同士で、「趣味の一環」として集うと称するこの活動を、竹田先生は3種類紹介してくれた。
①病院のマーケティングを考える「病院ファンづくり部」
②学会の企画を組み立てる「学会プロデュース部」
③起業家を意味する「アントレプレナー」と、越境人材を意味する「インタープレナー」をかけて、医療業界にも展開・醸成する「医ンプレ部」
である。

①は、「白衣を着た先生」ではなく、「地域で愛されるスポーツチーム」のイメージだという。このコミュニティでは、組織の中から外の地域にいる人まで、広く同じ目線でまちのひとに愛される病院づくりを目指している。重視しているのは、「病院広報の企画監修」ではなく、あくまで「ゆるい世界観でともに遊ぶ」という姿勢だ。この取り組みによって、企業のみならず、病院外の地域住民にとっても病院が大事な場所になり、よりよい場所にしようと働きかけられることができるのだという。

②のコミュニティでは、学会に対し、ただ参加するというよりも「当事者として参画」することを重視している。自身の所属する学会へ愛着を持ち、よりよい場づくりのために盛り上げていこうという熱が生じる学会づくりをプロデュースする。

さらに③の「医ンプレ部」のコミュニティにおいては、「出会いと共創」をキーワードに掲げている。この場では、登壇者とオーディエンスの区別がはっきりつけず、普段では会えない人、業界の外にいるエキスパートたちと出会い、当事者同士の出会いから新しいものが生み出されていく場を作っている。
この3つの場で生じる活動はつながっている。まずは垣根のない場で情報を共有しあい、さらに、病院や学会、そして地域へと実走していく、という流れだ。

「医ンプレ部」における活動の内容(講演スライドより引用)

「医師のキャリアはもっと自由だ」という、「持たざる者」なりの楽しさ

先生がこういった活動を通じて感じるのは、
「医師のキャリアはもっと自由でもっと楽しい」
ということだ。先生はご自身のことを、「持たざる者」と呼ぶ。
医師でも幅広い働き方が浸透しつつある中で、竹田先生は専門医・博士号を持たず、海外留学経験やMBAの取得経験もない。それでも10年以上の生活の中で医師免許さえ持っていれば大丈夫だと実感したという。
医師という立場に「成る」ことから、医師をはじめとした医療職という立場として、どのように役立ち、どう「為る」のか。それを自身に問いかけることが、先生のテイクホームメッセージだ。

病院マーケティングサミットJAPANは、クリニックや一般病院で働く一般の医療者でも加入可能だ。いつ、だれが、どんなことをやっても構わない。企画を実践するタイミングもそれぞれである。それが間口の広さと参加者の広さにつながっているという。
このような活動に対し、忙しい人でも参加し続けられる工夫を伺うと、
「一人ではなく、二人以上で楽しいこと、時間を共有することが大前提です。
ゴールとしては、いろんな形があると思います。企画が進むときに、事業化・産業化することはきれいなストーリーではありますが、そうでなかったとしても、必ず定期的に対話するということはお願いしています。」
と語ってくれた。
この対話の積み重ねこそが、前回、今回、次回へと、様々な形で新たな可能性に繋がっていくのだという。

最後に、この病院マーケティングサミットが達成したいミッションについて尋ねた。
「医師、あるいは医療職に限らず、あらゆる職種のキャリアはもっと自由で楽しいと思うんです。」
それが、竹田先生の伝えたい軸であり、自分の好きなことをマルチに取り組んでいく世界で、幅広い人と新たな楽しさを共有するということこそ、病院マーケティングサミットの目指す世界なのだと語る。

取材・文:大井礼美(島根大学医学部3年)

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