【2つのポイント】血清ナトリウム値の異常は,こう考えると理解できる【低Naの話中心】 -第1部ー
低K高Kなどと違い,低Na高Naって,解釈が難しくないですか?(特に低Na)
低Naというだけ,病態を考えるとフワフワしませんか?
比較してみましょう.
まず,低Kの鑑別ですが,
低Kの鑑別
➀K摂取不足
➁細胞内へのK移行
➂K喪失
≫詳しくはこの記事
このように,思い浮かべやすい「inが足りない」「outが多い」に加え,「細胞内に移行」が加わった形ですね.
では,次に低Na.
低Naの鑑別
➀volume depletion(体液量減少)
➁体液量正常の低Na
➂浮腫性疾患での低Na血症
「あれ?『inが足りない』『outが多い』って考え方はないの?」
「そもそも,なんなん?この分け方?よくわからないんだけど...」
この不思議さを解決させるべく,生体内におけるナトリウムの特殊なところを考えていきましょう.
(書いてみたら,思っていたより情報量が多くなったので,2部構成です)
■血清Na値の異常は,こう考えると理解できる【2つのポイント】
血清Naを考える際のポイントは2つ.
・水とナトリウムの関係の理解
・2つの調節系のバランス
です.
今回は,第1部ということで,水とナトリウムの関係について解説します.
■水とナトリウムの関係:切っても切り離せません
突然ですが,水分はヒトの体重の60%を占める(成人の場合)って話は聞いたことがありますか?
すごいですよね.ヒトの身体は半分以上が水でできているわけです.
その水の分布ですが,2/3は細胞内液,1/3が細胞外液となっているとされるんですが,
「この2/3と1/3て分け方,誰が決めたの?」
ってなりません?
この水分の分布を決めている犯人は,浸透圧物質です.
浸透圧が,水を“そこに”留めておいてくれるんです.
細胞内液の浸透圧物質の代表はK(カリウム).
そして,細胞外液の浸透圧物質の代表はNa(ナトリウム)です.
以下のような血漿浸透圧の式があります.
血漿浸透圧(mOsm/kgH2O)
=2×[Na+]+Glucose(mg/dL)/18+BUN(mg/dL)/2.8
このうち,尿素BUNは,細胞膜や血管壁を自由に通過する自由人です.
なので,分布の決め手とはなりません.
(尿素自体は,濃度勾配で勝手に移動してしまうから)
この式から尿素BUNを抜いたものを血漿張度といい,有効浸透圧 effective
osmoleとも呼ばれます.
血漿張度=血漿有効浸透圧(mOsm/kgH2O)
=2×[Na+]+Glucose(mg/dL)/18
―閑話休題―
すいません,難しい話をしました.
水とナトリウムの関係について,何が言いたいか.
それは
ナトリウムは,細胞外の有効浸透圧を主に担っている
ナトリウムがないと,細胞外に水分を保てない
ということです.
(ちなみに,細胞内の有効浸透圧は,カリウムが主に担っています.)
余談
”細胞外”といわれると,ピンと来ないかもしれませんが,血漿も細胞外なので,細胞外に水分を保てないことは,循環血漿量の減少を意味します.
つまり
ナトリウムは不足するときは,水(体液)が不足するとき
であり
ナトリウムが過剰になるときは,水(体液)が過剰になるとき
という考えが基本.
ナトリウムは水とともにあり,なんです.
■まとめ:一回立ち返る
最初に示した低Naの鑑別を見てみましょう.
低Naの鑑別
➀volume depletion(体液量減少)
➁体液量正常の低Na
➂浮腫性疾患での低Na血症
「ふむふむ,『ナトリウムは水とともにあり』ね」
「ということは,Naが低い=脱水かな?」
「...お,あったあった,『➀volume depletion(脱水)』ね!」
「...➁と➂は何よ?」
この,不可思議な状態を作るのが,2つの調節系です.
これは次回の第2部で解説します.
今回もお疲れ様でした!
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