【Drぷーの私見】利尿薬いろいろランキング【使い分けの参考になるかな?】

いろいろ利尿薬の記事を書いてきたので,ここいらでいろいろなランキングをつけてみました.

完全に私見です.

質問とか意見があったら,議論してみたいのでTwitterでコメントやDMください!

1.利尿作用

利尿薬ですからね.利尿作用は比較したいですよね.

1位.ループ利尿薬
・やはり,利尿作用といったらループ利尿薬.増量の効果も期待できる.
・静注薬があり,効果判定や用量調整もつきやすいのも良い.
(≫ループ利尿薬が最強の利尿薬である理由を解説した記事はこちら.)

2位.トルバプタン
・出る時はすごい出る.「もうそんなに出なくていいよー💦」ってくらい出る時がある.ADH系の亢進の具合にもよるのかな?
内服薬しかないので,腸管からの吸収効率にムラがある.
・最大利尿効果が得られるのは,12時間後前後という報告もあり,導入した日には利尿効果判定がしづらいのもデメリット.

3位.カルペリチド
・単剤で使用することが少ないので,単体の利尿作用は判定しがたいが,腎不全や血圧著明高値症例などで併用すると,サーっと尿が出てくることがある.
・点滴薬しかなく,単独ルートが必要な点は面倒.

4位.サイアザイド系利尿薬
・カルペリチドとどっちを3位に使用か迷ったくらい.ループ利尿薬には見劣りするが,食塩感受性の高い症例では,結構尿が出るようになる.
・内服薬しかないので,活躍の場の中心は外来加療.

5位.ミネラルコルチコイド拮抗薬(MRA)
利尿作用はほぼ期待していない
・ループ利尿薬抵抗性時のループ利尿薬との併用以外で,MRAに利尿作用を感じたことはない.

 

2.腎不全

利尿薬を使用するときに必ず腎機能は気にしますよね.

腎不全の時に活躍する利尿薬のランキングです.

1位.ループ利尿薬
尿細管ー糸球体フィードバックの阻害作用があることから,腎不全症例でも利尿作用を期待できる.
・剤形も多く使用できる場面も多いことから,安定の1位.

2位.トルバプタン
・腎不全症例でも作用が低下しづらい
・また,腎血流を低下させにくいので,利尿薬使用に起因した腎機能の増悪も起こしにくい
・これらのことから,腎不全症例では,ついつい手を出したくなる薬剤ですが,高価な薬剤なので,安直に使用しないように.

3位.カルペリチド
・糸球体濾過量を改善させる効果から,腎保護的に利尿をかけられるとされる.
・他の利尿薬に抵抗性の腎不全症例でも,最終兵器として併用を検討できる選択肢.
・腎不全症例で活躍が期待できる薬剤ですが,点滴薬のみで単独ルートが必要となる使い勝手の悪さから,トルバプタンより下の3位.

4位.ミネラルコルチコイド拮抗薬(MRA)
・高カリウム血症のリスクが高まるため,腎機能障害では使用しづらい
・しかし,使用しないわけではなく,心不全の予後改善エビデンスがあるので,ケイキサレート®のような高カリウム血症改善薬と併用してでも使用する場面は少なくない.

5位.サイアザイド系利尿薬
GFR<30では,効果が期待できないとされる.
・腎血流を低下させることから腎機能を増悪させるおそれもあり,腎不全ではよっぽど使用しづらい
・使用する場合も,ごく少量から.

(≫腎不全症例ので利尿薬選択のコツはこちらの記事で解説しています.)

3.低血圧

血圧が低いと,利尿薬って使用しづらいですよね.

そんな低血圧症例での比較です.

1位.ループ利尿薬
・少量から使用.2位のトルバプタンと迷ったが,点滴薬のあるルループ利尿薬は,薬効の立ち上がりが早く,用量の調整がしやすい.その点で,低血圧症例の利尿薬量の微調整もしやすく,1位にとした.

2位.トルバプタン
・血管内volumeを下げにくいトルバプタンは,血圧を下げにくく,低血圧症例でも比較的安心に使用可能.

3位.ミネラルコルチコイド拮抗薬(MRA)
・血圧が低い場合,やや使用しづらいですが,そもそもの利尿作用が弱いので,そこまで大けがすることはない.

4位.サイアザイド系利尿薬
・利尿作用も嫌だが,血管拡張作用も合わせ持つサイアザイド系利尿薬は,低血圧症例では使用しづらい.ほぼ使用することはない.

5位.カルペリチド
・血管拡張作用や,RAA系抑制作用など,あらゆる昇圧の機構を阻害する.低血圧症例ではまず使用しない.

4.高血圧

前項とは逆に,高血圧時です.

Ca拮抗薬などを併用すれば解決される問題かもしれませんが,体液量過剰と血圧上昇は関連するので,この項目でもランキングをつけてみました.

1位.カルペリチド
・血圧(後負荷)含め,ありとあらゆる心負荷を軽減する
・病的な血圧上昇+体液量過剰に,これ以上マッチした薬剤はない.
・単独ルートが必要な煩わしさはあるが,カルペリチドがもっとも輝けるステージが,「体液量過剰+高血圧」という状態だと考える.
(≫カルペリチドについてはこちらの記事で解説しています.)

2位.サイアザイド系利尿薬
・利尿作用以外に血管拡張作用があり,降圧薬の第一選択でもある.当然,高血圧症例では優先した使用が検討される.
・食塩感受性の高い症例では,とても有効に作用する.
(≫サイアザイド系利尿薬についてはこちらの記事で解説しています.)

3位.ループ利尿薬
・体液量過剰が血圧上昇の原因の場合,利尿作用の切れ味が良いループ利尿薬は,高血圧症例でも活躍の場がある.

4位.ミネラルコルチコイド拮抗薬(MRA)
・MRAは,降圧薬として議論される場面もあるが,たいした降圧作用はない.
・昇圧系であるRAA系の産物であるアルドステロン作用に拮抗するわけだが,RAA系自体を阻害するACE阻害薬/ARBとは違って,腎臓におけるナトリウム再吸収を抑制するだけなので,血圧を下げる効果は弱い.

5位.トルバプタン
・血圧が下がらないことはトルバプタンの強みでもあるが,降圧目的の使用はしない.

5.低ナトリウム血症

ADH系の亢進が原因となる低ナトリウム血症.

心不全や血管内脱水が示唆されますが,そのような状況で使用しやすい利尿薬の順位です.

1位.トルバプタン
・断トツでトップ.
・ADH系を抑制する作用は低ナトリウム血症を改善させる.SIADHにすら適応が通っていることは,低ナトリウム血症への有用性を物語っている.
・もちろん,心不全加療の点でも問題なく,血管内脱水も起きにくいので,低ナトリウム血症における利尿薬としては理想の利尿薬.
(≫トルバプタンについてはこちらの記事で解説しています.)

2位.ループ利尿薬
・低ナトリウム血症は心不全で起こりる.心不全がADH系を亢進させるため.
・ループ利尿薬はナトリウム利尿薬だが,体液量過剰がベースにある場合は,低ナトリウム血症を増悪させない可能性がある.低ナトリウム血症だからといって,ループ利尿薬を敬遠する理由にはならない.
.ただし,逆に言えば,体液量過剰が目立たない状態でループ利尿薬を使用すると,ADH系がますます亢進し,低ナトリウム血症が増悪する可能性があるので注意.

3位.カルペリチド
・カルペリチドは,電解質に影響を及ぼしにくい利尿薬.低ナトリウム血症があるからといって,決して使いにくい薬剤ではない.
・ただし,低ナトリウム血症の原因が血管内脱水であった場合,カルペリチドは血圧低下を起こしうるので注意.

4位.ミネラルコルチコイド拮抗薬(MRA)
・浮腫性の低ナトリウム血症を引き起こす肝硬変などでは,MRAは利尿薬の第一選択.同じく低ナトリウム血症をおこしうる心不全においても,MRAの推奨は高く,低ナトリウム血症だからといって使用を禁ずるものではない.
・しかし,薬理作用的には,低ナトリウム血症を増悪する可能性はあるので,低ナトリウム血症が増悪していかないことを確認しつつ使用する.

5位.サイアザイド系利尿薬
・最も血清ナトリウム値を下げやすい利尿薬.
・低ナトリウム血症での使用は勧められない.

6.低カリウム血症

多くの利尿薬の副作用である低カリウム血症.

そんな時に使用しやすい利尿薬は.

1位.ミネラルコルチコイド拮抗薬(MRA)
・低カリウム血症症例といえば,MRA.
・利尿薬使用時の低カリウム血症形成に大きな役割をもつ遠位尿細管のNa-K交換系を抑制するので,理にかなった薬剤選択.
(≫MRAについてはこちらの記事で解説しています.)

2位.トルバプタン&カルペリチド
・いずれも低カリウム血症は起こしにくいとされる.

4位.サイアザイド系利尿薬
・低カリウム血症を起こす代表的な利尿薬.使用開始時から低カリウム血症のときは,カリウム補充製剤や,MRAの併用を検討する.

5位.ループ利尿薬
・サイアザイド系利尿薬同様,低カリウム血症を起こす利尿薬.
・サイアザイド以下の5位にしたのは,利尿作用が強いから.利尿作用が強いことと相まって,低カリウムの引き起こし方は,ときに強力であり,高カリウム血症の治療に用いるくらい.
・サイアザイド同様に,使用開始時から低カリウム血症のときは,カリウム補充製剤や,MRAの併用を検討する.

7.心不全の外来加療

利尿薬の選択は,入院に限ったことではありません.

外来で使用しやすい利尿薬のランキングです.

1位.ミネラルコルチコイド拮抗薬(MRA)
・心不全の予後改善エビデンスがあるので1位.
・利尿作用はごく小だが,外来加療レベルの心不全は,切迫した体液過剰ではないので,MRAでまずは様子を見ることが多い.

2位.ループ利尿薬
・単純に切れ味のいいループ利尿薬は,外来でも使用頻度が多い.便利な薬剤.

3位.サイアザイド系利尿薬
・そこそこの利尿作用があり,食塩感受性の高そうな症例では,外来でも活躍する.

4位.トルバプタン
・薬理作用的には外来でも活躍しうるが,添付文書上,開始/再開は,入院下で行うように指示がある.よって,外来加療に向いているとは言えなかった.
・グレーな使い方だが,外来で開始しないこともない.(病院や薬剤部の厳しさによる)

5位.カルペリチド
・点滴薬のみで,外来加療では出番なし.

8.薬価(安い方が高順位)

最後に薬価の比較です.

1位.ループ利尿薬&サイアザイド系利尿薬
・いずれも安く,ジェネリックもある.薬価を気にする薬剤ではない.

3位.ミネラルコルチコイド拮抗薬(MRA)
・スピロノラクトン(アルダクトン®)であれば薬価は気にしないが,エプレレノン(セララ®)エサキセレノン(ミネブロ®)は割高なので注意.

4位.カルペリチド
・1バイアル1785円.用法にもよるが,安い薬剤ではない.
・無為に使用し続けるのはやめましょう.

5位.トルバプタン
・7.5mg錠は1084円.15mg錠は1650円.
・カルペリチドと比較すると大したことないように思われるかもしれないが,こちらは内服薬であり,一生涯継続することも可能.
・継続使用した場合の薬価は計り知れず,15mg/日で1ヶ月使用し続けると,3割負担でも薬15000円/月.安易に処方することはやめましょう.

 

■まとめ

いかがでしたか?

私見も多いですが,足場によって薬剤の見え方って変わりますよね

循環器内科医の私から見た,それぞれの利尿薬の特徴は,実際の使い分けのときに参考になると思います.

今回の記事は独創的な部分もあるので,質問とかあればバンバンTwitterでコメントかDMください.(noteのコメント欄は,気づきにくいのと,返事がしにくいという2点でおススメしません)

今回の話は以上です.

本日もお疲れ様でした.


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