【Biz責任者対談】伸び代だらけの市場で作るビジネスと新しいインフラ
こんにちは! 医療と介護をつなぐドクターメイトのアオパンです。
ドクターメイトは、いつでも介護関係者のそばに医療がある安心をお届けするため、日中医療相談、夜間のオンコール代行サービスのほか、介護スタッフ向けの教育支援ツールを提供している会社です。
「ドクターメイトが社会貢献性の高い事業をやっているのは理解できたのですが、ビジネス的にはどうなのですか?」と質問される機会が増えました。持続的な企業活動を行う上で、社会貢献性と収益性のバランスは十分に意識しなければなりません。
そこで今回は取締役の宮﨑さんと、マーケティング&セールスチームのジェネラルマネージャー下村さんにインタビュー! 医療介護業界の市場感や、事業
のビジネス的な可能性と影響力について語ってもらいました。
登場メンバー
宮﨑さん:写真左
取締役 。不動産企業に新卒入社し、営業・採用職に携わる。リクルートキャリアおよびアソビューでの法人営業、マネジメント経験を経て、親族の介護体験を機に現場課題の解決をしたいと考え、ドクターメイトに参画。
下村さん:写真右
マーケティング&セールスグループのジェネラルマネージャー。学生起業を経て、キーエンスに入社し営業とマーケティングを担当。その後ビズリーチを始めとする複数社で事業開発やマーケティング責任者を務め、現在はドクターメイトで社会課題に向き合う。
セオリーが通用しない、特殊な市場
まず、医療・介護マーケットの特徴について教えてください
宮﨑:高齢化が進んでいる現在、「医療介護は市場が大きい」「必ず必要になるから伸びしろがある」と言われます。実際、介護の現場はIT化の伸び代がまだまだあります。多くのことが紙ベースで進みますし、施設にパソコンが1台だけで、個人のメールアドレスすら持っていないケースも珍しくありません。
どうしてかというと、人に向き合うことが本質の仕事だからこそ、裏側の効率化やIT活用が後回しになってしまっている印象です。でも昨今、人手不足で現場が回らなくなって、みんながIT化の必要性を感じ始めている。そういうチャンスだらけのタイミングかなと思います。
ただね。チャンスがあっても、介護は「儲からないだろう」という先入観がすごく強い領域なんです。しかも業態やしがらみが多くて、紐解くのが難しい。だからこそ、明確な競合が不在のまま、僕らが医療介護×ITの先頭を走ってきています。
下村:確かに、これだけ市場規模があって主要プレイヤーが少ないのは特徴的ですよね。不便や不満が積み重なっているマーケットに対して、まだ私たちしか本格的に取り組んでいないからこそ得られる機会があるのかなと。
宮﨑:まさに。とはいえ、開拓者としての難しさにもぶつかることが多いです。例えば、我々の顧客である介護施設は基本的に、介護報酬という社会保障費で運営されています。営利最優先ではない社会福祉法人が運営母体であることが多く、「もっと儲けたい」という発想自体が薄い。普通のBtoBビジネスでは「これをすれば売上が上がるぞ」というMORE(付加価値)で購入を検討してくれますが、介護施設はMUSTでないと動かない。この違いは非常に大きいですね。
下村:そうした特徴が要因となって、従来の営業・マーケ手法が通じないことはありましたか? 従来手法と言うと例えば、事例・広告になりそうな企業に徹底的にアプローチをし、その実績を携えてマスをとりに行くとか。
宮﨑:インパクトのある大手をシンボル案件として、類似事例で広げるやり方ですよね! それ、本当に驚くほど響かなかった(笑)。でも、近隣施設のやり方にはすごく興味を持ってくれる。これが面白いなーって思うんですよ。
下村:もしかして、法人格や本業の違いなんですかね?
宮﨑:たしかに介護業界の大手株式会社って、本業が保険や教育系だったりしていて、兼業農家的にシェアを取ってきた企業が多いですね。そうすると、社会福祉法人の人たちとしては共感しにくいし、真似しにくいと感じるのかもしれません。
下村:今まで培ってきた経験を活かしつつも、常識的なセオリーが通用しない業界で頭をひねって試行錯誤するのが、難しくも楽しいところですね。
「流れに乗る」だけでなく「流れを作る」
介護報酬が主な財源ということは、国の政策とビジネスが密接に関わってくる領域ですね
宮﨑:そうなんです。直近でも大きな報酬改定がありまして、かなり注目していました。結論、効率化推進のためにITを積極的に活用していくという方針だったため、我々にとっては追い風が吹いているような状態ですね。
政策変更によって稼げる額が変わる、と聞くと、国の意向次第ではうまくいかないビジネスモデルなんじゃないかと考える方もいるかと思います。これに関しては明確な勝ち筋を持っていると思っているので、補足しておきましょうか。
下村:ドクターメイトのサービスは、活用が進めば進むほど「使われる税金が減っていく」モデルです。救急搬送の削減、待機人員の削減、社会保障費の削減。これは国が目指している方向と完全に一致しています。
宮﨑:それに加えて、タイミングも国の歩みと並走しているんですよ。これは本当にたまたまですが(笑)。
現在、国が設定している介護報酬の増収算定項目「加算」は主に「体制加算」と言われるもので、サービス品質向上のための研修や人員配置に対して算定されます。こういう体制になったらお金を出すよ、という目標があり、クリアするほど報酬が増えるわけです。
それが段々と、こういう動きができたらお金を出すよ、という「運用加算」に移行しつつあります。さらに今後5年以内を目処に、こういう実績が出たらお金を出すよ、というアウトカム評価に変わっていくはずです。
例えば、今までは医療機関との連携が必要という緩い要件だったのですが、改定により「特定の条件を満たした医療機関と月に1度会議をして、レポートを出したら加算」という要件が新設された。今後はそうしたプロセスを経て「入院が減った」「救急搬送が減った」という結果が要件になる可能性が高い。これはすでに国が言及し始めています。
下村:形式的なものではなく、実態を伴う成果が求められるということですね。国が本気で医療介護を変えようとしている感じがしますね。風向きが変わっている。
宮﨑:そうそう。でもこれって、僕らがもともと向き合っている話じゃないですか。体制を作る支援から始めて、プロセスを回し、結果を出す。この動きに最初から参入できているのがアドバンテージだと思うんです。
下村:プロセス無くして結果は無いですし、体制無くしてプロセスは動きません。体制加算の時点でドクターメイトがインフラになっている場合、後発での参入は難しいでしょうね。
事業の先では、どんな可能性が拓けるのでしょう?
宮﨑:最大の価値であり面白みは、医療と介護をつなぐ行動ログデータを集められることですね。3、4年前から青柳(代表)と議論していたのですが、介護医療の連携データや行動ログは大きな可能性を秘めています。でもこのデータ、なんと国さえも持っていない。
我々のところに情報が集まることで次に展開できるビジネスって実はめちゃくちゃいっぱいあると思うんですよ。例えば、トリアージデータを分析し、製薬企業と組んで認知症の進行度に応じた投薬開発を行うとか、第三セクターを組んでいくとか。
下村:医療と介護をつなぐポジションだからこそですよね。今後、高齢化で介護度が上がっていくわけなので、どう復帰させるか、いかに重篤化しないようにしていくか、という予防医療・予防介護のような考え方が中心になっていくと思います。そこに貢献できる中間データを持てれば、ビジネス的にも社会的にもすごく貴重です。誰しもやっぱり、健康に人生をまっとうしたいですから。
それと、ちょっと飛躍するかもしれませんが、実績や数字を出し続けることでドクターメイトの社会的な貢献意義を可視化していくこともできますよね。学会などで、ドクターメイト調べのデータや医療と介護の効果的な施策を発表していくとか、我々がカンファレンスを用意して有識者に発言していただくとか。
そうした積み重ねが国に対する影響力や、業界のあるべき姿を変えるきっかけになるかもしれない。これはかなりのゲームチェンジになりますよ。
宮﨑:結局は「流れに乗る」だけではなく、我々が「流れを作って」いかなきゃなのかなと思いますよね。
データをどう活かしていくかはまだまだ議論していかなきゃなと思いますが……。ちなみに僕はね、この大きな可能性に、いち早く感覚値で気づいていた青柳直樹(代表)ってかなり偉いなーと思ったりします(笑)。
完璧じゃないから、面白い可能性に満ちている
可能性を実現するために、乗り越えるべき壁とは?
宮﨑:「Webとリアルの融合」は、乗り越えなければいけない壁になると思っています。ドクターメイトは今まで、全国の医療リソースをWebで集め、全国の施設に対して遠隔支援をする、という形で成長してきました。
でも、お客様の課題は遠隔支援だけでは解決できない部分があって、一定の駆けつけニーズがあるんです。それを実現するには相応の体制や仕組みが必要で、コスト効率は一時的に悪くなるかもしれない。
ただ、リアルとの融合を実現できれば、本当の意味で医療介護のインフラになれる。施設を作る時に「スタッフを採用するか、ドクターメイトを使うか」という2択になるはずなんです。
下村:その意味では、潜在看護師の存在が肝になりそうですね。ドクターメイトのオンコールナースたちには今オンラインで働いてもらっていますが、時々は現場に出たいという方への機会提供になるかもしれない。新しい働き方のモデルが作れる可能性もあります。
宮﨑:まさに。リアルを含めたWin-Win-Winな仕組みを作って医療と介護の中間データを確実に集めていければ、さっき語ったような社会的なインパクトや信頼性を実現できると思うし、やりたい。
下村:マーケティングに関しては、CRMの領域がより重要になってくると考えています。これは乗り越えるべき壁というよりは、作るべき礎、というイメージです。
バーティカルSaaSではありますが、単なるタイミングキャッチだけでは不十分だと感じています。お客様の加算取得状態や課題などを踏まえ、タイミングを仕掛ける仕組みを作る必要があります。
派手な広告を打つのではなく、テクノロジー・データ・仮説を使って、当事者意識を持ってもらえるような1to1に近いコミュニケーションを作っていく。そういう、地味だけれど高度な「大人のマーケティング」が求められているなと思います。こういうエコシステムの設計、好きな人は好きですよね(笑)。
最後にメッセージをどうぞ!
下村:ビジネスの可能性や面白さについて語ってきましたが、正直なところ入社時にはそれほど意識をしていなくて。マーケットの大きさや成長性以上に、「誰と、何をしたいのか」が重要でした。
ドクターメイトのメンバーには、自己実現だけでなく、誰かのために働きたいという志を持った人が多いなと感じます。それは社会貢献性の高い事業だからこそだと思いますし、一緒に働くならそういう人がいい。
宮﨑:めちゃくちゃ共感します。僕が魅力を感じたのは、いい意味での「隙」なんですよ。真面目でいい人たちなんですが、めちゃくちゃ不完全。その分、自分にできることがたくさんある。
下村:確かに。今までの戦い方を見せてもらった際に「よくこれでやってきたな!」と思うようなこともある(笑)。課題は山積みだからこそ、プロダクト・組織・営業・マーケティングなどあらゆる面で、目先の伸び代はいっぱいあるだろうし、自分の経験も活かせるだろうと感じました。
キラキラ経歴のスター社員が山ほどいるような会社に入って既存の成功体験に乗るよりも、自分の貢献で会社を良くしていけるほうが面白いと思ったんですよね。おこがましい言い方だけど、素晴らしい志を実現させるお手伝いをしたい、と。
宮﨑:僕も下村さんも、「可能性はあるけど余地もある」っていう場所を選びたいタイプってことですね! 同じような感覚を持っていて、医療介護の課題解決に関心を持ってくださる方がいたら、この大きな課題に一緒に挑んでいきたいです。