神経活動の知覚

最近おもしろいタイトルの論文が出た。

How many neurons are sufficient for perception of cortical activity?
何個の神経細胞が活性化したら、それを知覚できるか?というもの。

実験としては、マウスのヒゲからの体性感覚を処理するバレル皮質 第II/III層の神経細胞を光遺伝学的に活性化する。このとき活性化する細胞数を厳密にコントロールできるように、実験時に細胞を検出してそのうちの決まった数の神経細胞にのみ光を照射して活性化する方法を使っている。

その活性化が知覚を引き起こすかどうか知るために、神経細胞が活性化したことを知覚したらマウスは目の前にあるセンサーを舐めるよう訓練された。この訓練においては、多数の神経細胞を同時に活性化している。これによってバレル皮質 第II/III層の神経細胞群が活性化され、それを知覚できたら舐める行動としてそれを報告せよ、という実験パラダイムが出来上がる。

まず結論としては、14~40個くらいの神経細胞が活性化すると知覚が生じることがわかった。14個あたりから報告の割合が増え始めて、40個程度を活性化するとほぼ必ずそれが知覚された。

実はこの実験は、2008年の別グループの研究に端を発している。この先行研究でもほぼ同じことをしていて、同じ脳部位の細胞を一気に活性化させている。違うのは活性化の方法で、この先行研究では活性化に使う光の強さを変えることで活性化される神経細胞数が変わることを見出している。その情報を使って、どのくらいの強さの光を与えたら、このくらいの細胞が活性化するとして数を推測している。

これに対して今回の論文では、厳密に光を当てる細胞数を制御している。これはHolographicな(空間の一部に限った)光照射の技術が開発されてきたおかげで、技術の進歩を思わせる。

今回の結果を受けて、意外と少ないなという印象を受けた。マウスは大脳皮質だけでも神経細胞が400万あると言われている。そのうち高々数十個が活性化するだけで、知覚/行動を引き起こすのだそうだ。1つ1つの細胞がそれだけちゃんと機能的であることを示唆している。

もちろん別の脳部位、特に細胞が集団として情報をコードするPopulation Codingに従う脳部位(海馬の場所細胞など)だとまた話が変わってくるだろう。

とりあえずここまで。

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