人生の醍醐味は逆転劇にあり

Stage 4の肺がんで、手術をするとはとんでもないこと。でも、抗がん剤治療ではいつかどこかで生存曲線が下に向かう。それも、数年単位。そんな業況で、明るい気持ちにはなれない。

山あり坂あり、上り坂があるから下坂もある。登らない朝日はない。明けない夜はない。昔の人から言い伝えられた言葉は、我々現代人も励ます際に用いられる。でも、そういう手立てやすべがあるから。医療は科学、エビデンスに基づいて進めるものだから、奇跡や一発逆転は、治療方針にならない。

子供の頃の運動会、小学校最終学年の6年生、リレーでアンカーをしていた。二位でバトンをもらい、逆転を目指して猛烈に走った、第3コーナーで足がもつれて転びそうになり、そのまま二位でヒヤヒヤフィニッシュ。人の記憶に残らない出来事だけど、僕は一生忘れられない。要は、盛り上がって熱くなって結局平易な結果も、それなりにインパクトは心に残る。試みればそれなりに、熱くなる。

局所や他の肺、臓器に転移していても、画像で小さくなりほとんど見えない。分子標的薬は効果があったがだんだんと耐性ができつつある。腫瘍マーカーCEAはなおまだ40台と高値。そのタイミングで手術は、どう考えても無謀だろう。でも、手術をするなら、このタイミングしかない、のも事実。主治医は理解してくれている。

どうせダメならやらなきゃ。
自分の命、自分で責任を取る、文句は言わない。

年間130試合以上行われるプロ野球のペナントレースも、4年に一回のオリンピックでも、負けてるチームや選手を応援していたら”逆転”を最後まで祈るはず。逆転勝ちって希だけと、でも、本当に嬉しい、飛び上がるくらい。

病気になって、悩んで泣いて、しばらく飛び上がっていない。身も心も。そろそろそんなことを期待したくなってきた。
その裏には、”このままならどうせ死んじゃう”の気持ち。

人生の醍醐味は逆転劇にあり。そう、手術して、逆転しよう。何を?何でもいい。これから起こる何かだ。

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