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大学院進学へのきっかけ③:手書き図面からCADへ

 工学部機械系だった大学時代は,ドラフターというものを使っての手書き図面が主流というか,それが当たり前の時代でした.

ドラフター

 これが大学には50台くらいずらっと並んでいます.直角に配置された透明な定規を上下左右に自在に滑らせられるんですね.これがとっても気持ちい.この直角定規の角度も自由自在.机の高さやテーブル角度そのものも自分の背格好に応じて,長時間作図しても疲れないように調整できます.下宿にはとても置けませんし,そもそも個人で購入するには高すぎる.でもこれが使えるんです!平行線なんかも,ずらしながらサッサッと引けてしまう.これが楽しくて仕方なかったんですね.おお,機械設計製図の学科に進学してよかった〜.

 さて,メーカーのエンジニアとして社会人生活がスタートです.会社に入ると,2次元CADなるものに遭遇します.ドラフターからの劇的進化.これがまた最高なんです.何が最高かというと,①線種設定可能,②拡縮,③コピペ,④レイヤー,⑤ライブラリ,⑥バルーンといった機能がある!ここで,これらの主要な機能をざっと説明させて下さい.(これを知ると2次元CAD触ってみたくなりますよ)

<2次元CADのうれしい機能>
 これまで手書きで製図していたのに,2次元CADに触れて衝撃の嬉しい機能6つを紹介.
①線種:今までの手書き製図の時は,2H〜2Bの鉛筆を自分の使いやすい様にカッターで削るか,0.3,0.5,0.7,0.9,1.2,2.0mmの製図用シャーペンを用意する必要がありました.図面では,点線〇〇mm,断面線は△△mmなどと決まってたりしますので,それ様に持ち替える必要が出てきます.でも,2D-CADでは,ショートカットキーで切り替えてマウスでクリック.
②拡大縮小:手書きの時は,どれくらいの用紙サイズにどんな尺度(1/2,1/5,1/10,1/20など)を描く前によく検討して,正面図/背面図/断面図などどのように配置するのかを決めておかないと書き始められない.これは事前にしっかり検討するという良い面もありますが,今となっては,すぐに書き始められるメリットの方が圧倒的に大きいと感じます.2D-CADでは,後からいくらでも拡大縮小ができるので,用紙からはみ出してしまうとか,断面図が適切な場所に描けないといった心配がないので,すぐに作図開始です.
③コピー&ペースト:これが手書きからディジタルへの圧倒的な時短機能の1つですよね.機械部品は,往々にして同じ部品を複数箇所に用いたり,左右対称や放射状に配置されていたりするので,この機能は大活躍です.
④レイヤー:これもまたディジタルならではの超優れ機能.隠れ線など実際には見えない線や部品を各レイヤーに分けて描いておく.そうすると,線の色をレイヤーごとに一括変換したりして見やすくできる.さらに,レイヤーごとに表示・非表示も切り替えられるので,修正がとっても楽になります.これによってミスも減り,製品品質も格段と向上する.そうそう,手書き図面では基本的に黒だけど,ディジタルになったことによって,線の色づけができるようになった.モニターをずっと眺めていると眩しいので,画面の背景色を黒など濃い色に設定しておいて,基本線は白で他の線はお好みで設定する.電気は赤とか油圧系は水色とかにして表示させると,背景の黒から浮き上がって表示されるので,とっても玄人っぽくてかっこいい.
⑤ライブラリ:ボルトやナットなどの標準部品や一般的な購入部品をライブラリ登録しておくことで,毎回描く必要はなく,ライブラリから選択して,画面上をクリックすることで配置することができる.もちろん自身が設計した部品も後で流用する可能性が高いものは登録しておくこともできる.独自ライブラリ部品が増えていくのも密かに嬉しかったりする.
⑥バルーン:図面で風船?なんのこっちゃと思った人もいるかもしれません.バルーンというのは,複数の部品が組合さったアセンブリ図面を描いたときに示す部品番号・個数を示す丸型の表示のことです.,バルーンに記載された番号がどのような部品なのかが図面の右上表に示される(これ,ちゃんと設定すれば,名称や個数が自動でアップデート表示されのです!配置した個数を覚えていてくれる).

 こんな2次元CAD時代も,私にとっては5年待たずに終わりを告げます.あ〜あ,せっかく楽しく図面描きしてたのに...と思いきや3D-CADのタクスフォースチームなるものができて,そこに選抜されます.2000年めがけて,3D-CAD化を会社として推進する!ということになったのです.しかし,そこは高度成長期時代を手書き図面で支えてきたのだという人たちが反対勢力として立ちはだかります.当時の3D-CADは,機能・処理速度・GUI(操作性)・CAMなど工場との連携・脆弱なネットワーク・社外や他部門とのデータ共有など,まだまだ不完全極まりないソフトでした.今のように3Dモデルがあれば,ものが作れるという状態でもない.ものを作るためには製作ツールを熟知した職工さんが2次元図面見て作る.したがって,ものを作ってもらうためには,図面が必要で,これまでは2次元図面だけを作成していたのに,3Dモデル→2次元図面という(3Dモデリングという不要な手間が増えているだけ工数が余計にかかり,3次元設計によって,開発期間を短縮するどころか長くなってしまう)ことに対する現場からの当然の反発が起こります.

 でも私は3D-CADが楽しくて仕方なかったんですね.友達との遊ぶ約束のない土曜日・日曜日は会社に行って,ずっと3D-CADを触ってました.20年以上前のコンプライアンスやパワハラなんて言葉を世間が知らなかった時代です.2次元の世界では,無味乾燥な3面図.頭の中で正面から見たらこれで,上から見たらこれだから,ああこんな形なのだなと思い浮かべるだけです.でも,3D-CADは,どんなに大きな製品であっても,マウスの中央ホイールで拡大/縮小できて,任意断面が表示できて,それが画面上でくるくる回せてしまう.挙げ句の果てには,リンケージをちゃんと組んでおけば,アニメーション表示もできてしまう.画面上で製品が動くのですよ.それはそれは面白いこと! 修正も,任意の部位をダブルクリックで寸法が表示されるので,その値を変更すれば勝手に形状が変わるではありませんか!Great!

 そんなこんなで,3D-CADが次第に市民権を得てきます.もちろん機能もどんどん充実してきます.ただ単に,形状をデザインしているだけではダメなんですね.強度設計というものが不可欠です.ということで,解析を専門としてやるようになっていきました.


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