見出し画像

8/23開催【ドコモベンチャーズピッチ】GovTechが実現する新しい政治と行政~スタートアップが取り組む政策立案スタイルとは~

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2022年8月23日(火)に行ったイベント、

【ドコモベンチャーズピッチ】GovTechが実現する新しい政治と行政~スタートアップが取り組む政策立案スタイルとは~

についてレポートしていきたいと思います!

本イベントでは、GovTechに関連する新しい事業に取り組まれている注目のスタートアップを4社をお招きし、ピッチをしていただきました。

  • GovTechに興味のある方

  • GovTech関連への投資や事業連携をご検討されている方

  • 日本の政治・行政の改革にご興味がある方

  • 新規事業、オープンイノベーション等をご検討されている方

  • 最新のサービストレンド、テクノロジートレンドに興味のある方

にぜひお読みいただきたい内容となっております!

以下、各スタートアップにピッチをしていただいた内容をご紹介します!

■1社目:Polimill(ポリミル)株式会社

1社目は、Polimill Julian Brody様にご登壇いただきました!

<Polimill株式会社 テクノロジーエバンジェリスト/営業 Julian Brody様>

Polimill株式会社 Julian Brody様

・Polimill社の事業内容

この国の持続可能性の危機の要因でもある、「他人への無関心、支え合いへの忌避感と無関心、政治や政策への無関心、危機への無関心」に対して、AIやレコメンドアルゴリズムを活用し、人々の興味関心を喚起するためのインフラを設計、開発しています。

  • 現代に合う適切なコミュニティをつくるためのアクションや行動変容を促すSNSツール

  • ルールづくりへの参加体験と社会課題に対する探求型学習のためのSNSツール

  • デジタルコミュニティそのもの

を大学や自治体、企業に提供しているほか、機能限定のWebサービスについても提供中です。

・Polimill社の事業対象

Polimill社は2021年の2月に創業した新しい会社で、上記で触れたように、目的特化型のSNSを用途に応じて提供しています。

提供先の対象、及び提供の用途となるのは大きく分けると次の6つです。

Everyone - 一般の人々
Academy - 学校
Public - 地方公共団体
Enterprise - 企業
Advocacy - 政策提言
Industry - 産業

では、それぞれについて簡単に説明していきます。

Everyone - 一般の人々

一般の人々向けの目的特化型SNSとして、Polimill社はすでに「Surfvote」というSNSを公開しています。
PC版とスマホ版があり、それぞれ開いた画面には社会の課題(イシュー)が記載されたカードが表示されます。

そのカードを選択することで、イシューの共有や意見表明のための投票が可能になります。さらに2022年の秋ごろから議員などの参加を本格化する予定で、Surfvote内では各議員の意見をプロフィールから閲覧できます。

またユーザはログインさえすれば、意見表明などを匿名で投稿することが可能です。

今後実装予定のサービスは次の二つです。

サービス①
AIのファシリテーターとの議論を通じて、賛成・反対に共通する価値観を見出していくというサービス

サービス②
イシューに対する意見を選択した時、その意見通りになった場合の2050年までの予測をAIによって表示するサービス

続いて、一般の人々以外の提供先について確認していきます。

Polimill社は根源的な社会課題を解決するためにサービスを展開しています。具体的には

  1. 1. 企業、社会、ひいては国の「共感できる」ビジョンの不在

  2. 他者、政治などへの無関心

という2点を課題として捉えています。

Academy - 学校

学校というくくりでは、若者の政治参加に対する態度について注目します。

若者が成人した後に、選挙に参加しようという意識を持つためには、何か自分の行動や意見で変化が起きたという成功体験が必要であると考えます。

そこでPolimill社が提供するのが、社会課題に対する探求型のSNSです。すでに大学向けに提供を開始しています。

Public - 地方公共団体

地方公共団体向けに提供するのは、地域の社会課題を議論して、合意を目指すSNSです。Surfvoteを活用することで、地域に絞ったクローズドなイシューから、国家に関わるような幅広いものまで、意見を表明できます。

さらに社会的孤立という社会問題へのアプローチもできます。

ソーシャルキャピタルの重要性

また、早期の死亡(平均死亡年齢よりも前に死亡すること)にソーシャルキャピタル(※)が寄与する部分は無視できない大きさです。社会的孤立を解消することで、早期の死亡を減らすことが可能であると考えられます。

Polimill社は社会課題の解決のために用いたSNSを利用して、自治体のステークホルダー内でデジタルなつながり・コミュニティを形成することで、社会的孤独という課題の解決を目指しています。

(※)ソーシャル・キャピタル

厚生労働省より

Enterprise - 企業

企業向けのSNSでは、モチベーションの向上につながるサービス展開を目指しています。

現行のサービスは業務効率の改善を主要な目的としており、モチベーションの向上を促す作用はありません。そこでPolimill社は「何の役に立つのかわからないがモチベーションの向上につながるサービス」を新たに開発中です。

Advocacy - 政策提言 と Industry - 産業

政策提言や産業に活かすためのサービスとしては、一般の人々向けであるSurfvoteをベースに進めようとしています。

具体的には、Surfvote内で収集した意見の賛成・反対の数や議論プロセスを、専門家や企業・団体に提供したり、収集した意見の論点を整理したりして、最終的には行政に提案できることを目指しています。

■2社目:株式会社issues

2社目は、issues 廣田 達宣様にご登壇いただきました!

<株式会社issues 代表取締役 廣田 達宣様>

株式会社issues 廣田 達宣様

・issues社の事業内容

誰もが困り事を地元議員に相談できるロビイングプラットフォーム「issues」を運営しています。

議員のマーケティング活動支援、及び企業/団体のロビー活動支援によりマネタイズを行っています。

ビジョンとユーザ

issues社が掲げるビジョンは「政策作りのDXで様々な社会課題を解決するインフラを創る」というものです。

具体的には国民と政府に介在して、スマホなどを利用して国民側のニーズを吸い上げて、政策へとつなげるという役割を担おうとしています。

特に現在においては、国民と政府をつなぐ中間的な役割であった自治体や労働組合などの中間組織と国民との断絶が顕著になっていると考えられます。そうした状況を解消するために、issues社は困りごとを地元市区議に相談できる政策実現プラットフォームを展開しています。

ユーザの特徴としては、政治に接点がないものの困りごとを抱えている層で、ユーザ全体で見ても、無党派の人、または地元議員と接点を持たない人が高い割合を占めています。

政策実現へのインセンティブ

現在では与野党問わず、23区を中心に150人以上の議員に利用されています。議員にとっても効率の低いポスティングのような宣伝活動に代わるものとして利用されており、この議員向けの利用料がissues社の収益の一つとなっています。

議員が利用する理由の1つは、上のスライドのように議員の平均等落差は50票程度であるものの、issuesに寄せられた数百人単位の要望を実現していくことでその票数は増やせる可能性があるため、当選の可能性が高まるというインセンティブが含まれていることだとわかります。

実際にissues社によるアンケート調査で、72.9%のユーザが投票先を選ぶ際にissuesでのやり取りを参考にするとしています。

ユーザ獲得手段としては、現段階では東京都の各区に絞って広告を出すことが中心ですが、シリーズが進行してからは新たなマーケティングを行っていく予定です。

官民共創

issues社が提供するのは、政府と国民をつなぐプラットフォームだけではありません。国民一人一人の意見だけでなく、企業の課題を政府と協力して解決するという支援サービスも展開しています。

解決方法としては、企業の課題に共感する市民の声を地元議員に届けて政策の実現につなげたり、政策実現に取り組む議員を紹介して連携して解決を目指したりするという形が挙げられます。

行政だけでは解決できない課題を、共創して解決する適切なロビイングを実現していくことを目指しています。

■3社目:PoliPoli(ポリポリ)株式会社

3社目は、PoliPoli 伊藤 和真様にご登壇いただきました!

<株式会社PoliPoli 代表取締役CEO 伊藤 和真様>


株式会社PoliPoli 伊藤 和真様

・PoliPoli社の事業内容

政治家に声を届けるウェブサイト「PoliPoli」および行政に声を届けるウェブサイト「PoliPoli Gov」の企画・開発・運営・販売を行っています。

これまで複数の政党や中央省庁、地方自治体に導入された実績をもち、サービス展開を通じて、誰もが政治・行政とつながり、生活に潜む問題を政策共創によって解決できる社会を目指しています。

また2022年6月には、これまで培った政治家や若い世代とのリレーションを活かし、企業向けルールメイキングサポートサービス「PoliPoli Enterprise」を開始しました。

サービス内容

PoliPoli社が提供するサービスは大きく分けて、政治家向けの「PoliPoli」と行政機関向けの「PoliPoli Gov」の二つがあります。政治家向けの「PoliPoli」に関しては、現在は国会議員に絞ってサービスを展開しています。

PoliPoli社が展開する2種類のサービス

サービスの流れとしては、国民からの意見を「PoliPoli」または「PoliPoli Gov」を通して収集して、それを政治家または行政機関にサポートとともに提供し、最終的に政策や行政からの相談内容を掲載しています。
意見を収集する方法としては、コメントだけではなく直接会ったり、政策のリクエストをしたりするといった手段も採用しています。

実績としては、生理に関する政策で数十億円単位で政府予算を獲得したり、特定商取引法の解釈が変わったりといったことが挙げられます。

現在は「政治ドットコム」という政治情報メディアや、企業向けルールメイキングのサポートなどを中心に提供しています。

社会課題の整理

ここからはPoliPoli社が解決しようしている課題の整理を行います。

まず国民全体について、国民の約70%が、意見が政策に反映されていない、と感じているということ、そして自分の行動で国や社会を変えられないと考えている若い世代の割合が諸外国に比べて高いことが挙げられます。

こうした意見からもわかるように、日本では政策の共創が進んでいるとは言えませんが、その原因は市民の声を集めるのにコストがかかること、政策に役立つ意見をそのまま反映できることが少ないことなど、様々なことが考えられます。

課題解決に向けて、PoliPoli社は「PoliPoli Gov」のサービスを展開しています。

PoliPoli Gov

「PoliPoli Gov」の最初のアプローチは、上記で紹介してきたサービスとは少し異なります。初めに行政担当者が問い、または相談を提示して、それに対して国民側が意見やコメントを投稿できるというものです。

ここにPoliPoli Govが介在することで、誹謗中傷などをのぞいた有効な意見を行政担当者に届けて、政策への応用を促す仕組みです。

政策をわかりやすく伝えるグラフィックスも特徴的で、行政が取り組みにくいことを民間の力で行っていきます。

実際に経済産業省やデジタル庁でも意見収集のプラットフォームとして利用されており、こうした省庁から入札されることも収入源の一つです。

■4社目:株式会社WiseVine(ワイズバイン)

4社目は、WiseVine 吉本 翔生様にご登壇いただきました!

<株式会社WiseVine 代表取締役社長 吉本 翔生様>

株式会社WiseVine 吉本 翔生様

・WiseVine社の事業内容

地方自治体および広域自治体向けに予算編成事業を高度化させるSaaSを開発・提供しています。

公会計や政策・施策・事務事業という行政独特の世界観で経営管理を成し遂げる仕組みを構築しており、2022年度から一部の自治体でβ版を提供、2023年度から本格提供開始予定です。

170兆の行政支出(GDPの1/3)の予算編成が変われば世界は変わる、を信じて事業に取り組んでいます。

事業と行政の現状

WiseVine社は現在、

・事業横比較、交付金検索サービス
・官民連携プラットフォーム
・行政予算検索サービス
・予算編成・経営管理サービス(開発中)

のサービスを展開しています。
それぞれのサービスは「自治体の財政はどれくらい持続可能なのか」という素朴な問いから始まります。

WiseVine社によると、2018年においては1741団体中656団体が、貯金切り崩しを含む臨時財政がなければ回らない状態です。

一部の地方自治体は上記のような臨時財政の他、中央政府による地方交付税交付金なども利用してどうにか財政を保っていますが、その地方交付税交付金などは国債を利用しており、国債発行自体が持続可能的なものではありません

ごく少数の地方自治体を除いて何らかの財政的な問題に直面している現在、WiseVine社はDX化を通じたコスト削減を目的として、上記のようなあらゆるサービスを展開しています。2019年ごろからそうしたサービスが評価されて数多くの賞を受賞しているほか、実際に行政側へ採択されたサービスもあります。

サービスによって成せること

地方自治体が抱える問題の根本的な部分に、新規事業を始める前に古い事業をやめることが困難である、ということが挙げられます。

それにより限られた予算が逼迫するものの、そうした財政状況を火急の問題として行政職員が理解していなかったり、優先順位付けができなかったりする状況が生じてしまいます。

そうした問題は、予算編成において事業事務の一元管理を行い、見える化を図ることで解決できるとWiseVine社は考えます。

Wise Vine社では自治体が執行する2,500以上の事務事業を一般化し、行政官の内部事務用に「事務事業タグ」としてデータ化しています。

WiseVine社のサービス全容

少し細かい図になりますが、オレンジ色の部分がWiseVine社が提供するサービスで、下部の「事務事業データベース」がWiseVine社内部で有している機能です。

長期的な計画の段階から予算編成、さらには事業評価までを包括的にDX化することで、結果として予算編成の事務量の削減、財源獲得の機会、透明性などが達成されます。

こうした財政・予算編成の意思決定機関に該当する部分のDX化を中心に進めており、長期的な計画から市民に公表するまでのすべての部分に関わるのが特徴的です。実際に525の自治体・中央省庁がアカウント登録済みで、特に横浜市は全庁でWiseVine社のシステムを活用しています。

まとめ

今回は、GovTech関連の代表的な4社のお話をお聞きしました。

国民と政府をつなぐサービスの紹介や、国民が思う「自分の意見で政治が動かない」という課題の解消、さらには行政が根本的に抱える課題を民間の力で解決していこうとする動きなどが、多くの企業に共通して見られました。

日本は特に若者を中心に選挙の投票率が低い状態ですが、今回紹介したスタートアップなどが主体となって政治への関心を押し上げていければ、日本全体がより住みやすい環境へと変化していくはずです。

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!

引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!

>>今後のドコモ・ベンチャーズのイベントはこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?