学校で不幸な熱中症事故を繰り返さないために

7月28日米沢市内の女子中学生が下校途中に熱中症で倒れて死亡するという事故が起きました。2012年7月にも山形中央高ラグビー部男子がやはり熱中症で死亡しています。

子供の学校での事故は部活動、授業中・休み時間、登下校、運動会などのイベントなどに分類されますが、新しい事故というものはなく、ほとんどが過去に経験した事故の繰り返しと言われています。

窓際に設置された収納スペースに子供が乗って窓から転落する、サッカーのゴールポストがしっかり固定されておらず下敷きになる、ウズラの卵・白玉など小さくて丸い食材を喉に詰まらせて窒息するなど、過去の事例を教訓に適切な対応をとれば防げる事故が適切な対応を怠ったがために毎年のように繰り返されているというものです。

熱中症については令和3年5月に環境省・文部科学省から「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」が作成されましたが、実際にガイドラインを作成するのは地方自治体(教育委員会)でその内容は千差万別、国がしっかりリーダーシップをとって対処するというものではありませんでした。さらには米沢の中学校では市のガイドラインに定められた暑さ指数の測定を怠っていました。

過去にやはり熱中症が相次いだアメリカではNational Center for Catastrophic Sport Injury Research (NCCSIR)に症例を集約し、データ分析して細かなガイドラインを作成して地方自治体や学校に周知しています。

体温が40℃以上に上昇すると30分後くらいから臓器障害が起き始める。しかし10分以内に冷却を開始すれば100%救命できることがわかり、学校には直腸温度計とアイスバス(氷風呂)が常備されました。

また、しばらく運動を休んでいた場合、復帰後1日目、2日目に障害が起きやすいこともデータ分析から明らかなため、復帰後2日までは運動を2時間以内に留めたり、タックルを禁止させるといった内容もガイドラインに盛り込まれています。

NHK特集で、試験のため部活が無かったテニス部の女子高生が復帰後第1日目に3時間の激しい練習を科され、顧問も出張で不在の中、熱中症で倒れて一命は取り留めるも重度の障害が残った不幸なケースを紹介していましたが、まさにアメリカとは雲泥の差と言うしかありません。

学校生活の主役は子供たちです。子供たちが十分安全を確保した状態で、学校生活を享受する。そのためのきちんとしたガイドラインを国が中心となって作成することが急務と思います。

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