キラ・ヤマトという自己矛盾男に結論を
本題に入る前に、まずよかったところを一通り列挙するよ。
変わらないもの、佐橋俊彦。前作前々作の引用もたまらん。
ネイビーハロや
ズゴック草
『Meteor -ミーティア-』ほんま草。笑い泣きが止まらんかった。
デュートリオンビーム照射とか隠者の頭突きとか設定回収ありがとう
そうなんよSEEDは艦隊戦なんよ
他にもキャラ間の掛け合いとかお前生きてたんか元気そうやな!とかファンサービスの嵐。普通にエンタメ映画としてのパワーがたまらんかった。Vシネクストで痛い目見てる親会社に相当言われてるのかな・・・
艦隊戦ってホントに不人気みたいだよね・・・
前にAAAヴンダーについて考えた時も思ったのだが、戦艦や艦隊戦は現代人には受けにくいらしくすっかり見なくなってしまった。
特にガンダムにおいては『SEED』を最後に、『00』『UC』『鉄血』『水星の魔女』においてだんだんと戦艦の活躍シーンは減りもっぱら輸送船としての役割にとどまる作品が増えてしまった。その点『Gレコ』はすごい(ステマ)(話がぶれるので止めます)
もはや艦隊戦を期待する気概すら失っていたところに本作はぶっ刺さってしまった。
クソでかビームとやけくそミサイルの打ち合い、ミサイルには当たるけどMSには当たらない対空気銃、そしてクルー達の掛け合い・・・
確かに『SEED』の艦隊戦は精密さには欠けるかもしれない。でも戦艦をかっこよく見せてやろうというホスピタリティ。沈む戦艦のエロティシズム。この大味さこそが『SEED』のカタストロフィであり、それをMS戦だけでなく艦隊戦でも見せ尽くしてくれるところが、”ヒーロー作品”として最高なんよ。
でもアークエンジェル落ちたのは普通にショックだったわ。
ああ、推しが○んでキレる人ってこういう気持ちか・・・勉強になった・・・
ラクスが一番笑えるのは予想外すぎる
プラグスーツ着て、
オーライザーに、
ベガさん式搭乗、
機体の前で決めポーズ、
複座コクピットで操作すると、
絶対守護領域起動!!!
声我慢するのに必死だった。脳内PARTYだった。
復習:キラ・ヤマトという存在の矛盾
ギルバート・デュランダルによるディスティニープランは社会のボトムアップを目指している。現状が不幸な人間を社会システムで救う、最強の福祉システム。代償として自由が失われる。本人の自覚なく。
キラ・ヤマトは自由の強奪を阻止するべくデュランダル議長を撃った。
ところがキラ・ヤマトはコーディネイターの最高傑作である。いわば最も優秀な人間。
「勉強も運動もできる顔がいい男」が「優勢人類コミュニティで政治権力をもつ美女」を抱きながら”自由”を名目とした正義を振るい「新しい社会福祉システム」を潰す、というお話になってしまっている。
僕は当時中学生ながらに
(そりゃあディスティニープランは間違ってっかもしれねえけどよぉ・・・何でも持ってるおめえに言われるのだけは違うじゃねえか・・・)
(しかもほんのり社会不適応な疑似家族もヤっちゃってさぁ・・・)
(ほらシン・アスカもなんか腑に落ちない感じで泣いちゃってるしさぁ・・・)
と思った。
彼は禊として不殺治安維持ボランティアを無限に続けるしかない。
そりゃあおいそれと続編作れないわけだ
自由主義と社会主義の対立を下敷きにしたテーマは結構定番で、作品ごとにいろいろな答えを出してきたものの、『DESTINY』のオチだけはなかなかグロテスクなものだった。
一方で完結のその2年後に放送された2作品を思い出し、やや粗雑な対比をしてみたい。
イオリア計画とリボンズ・アルマーク
『ガンダム00』に登場するイオリア・シュヘンベルグ。彼はイノベイドによって人類の変革を誘導し、予見される外宇宙との対話に備えた。
イノベイドとして作られたリボンズ・アルマークはその天命に対抗するべく行動する。
遺伝子に規定された運命を否定し自由を勝ちとろうとするスタンス、ここまではキラ・ヤマト(や『FREEDOM』のラクス・クライン)同じである。
刹那・F・セイエイがイノベイターに覚醒し、人類の管理者になろうとするリボンズを否定する。そして人類を見守るスタンスをとる。
大雑把に考えれば、キラ・ヤマトを半分に割るとリボンズと刹那になる。
遺伝子操作で人類に変革をもたらすイオリア計画と遺伝子操作で人類に平和をもたらすディスティニープラン。イオリアはデュランダル議長だ。『FREEDOM』でイノベイド出てきたし。
リボンズは否定されたがイオリア計画は成功している。
優勢人種の誕生を肯定する最終回を見た時、『SEED』否定してんな~ほんまにこれでええんか~?と思った。
だがイノベイターの真の必要性、刹那のその先が『劇場版』で語られることになる。
イオリアには戦争根絶の更に先の目的があったのだ。イオリアがDr.ヘルやビアン・ゾルダーク博士のオマージュだとは思わなんだ。
逆説的にデュランダル議長が如何に自己中心的に社会システムを再構成しようとしたかが説明された気分だった。
ゼロの自死
類まれなる頭脳で独裁政権を打倒したルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、最終回にてゼロに殺害されることを選ぶ。
独裁政権を打倒し民衆が真に自由を勝ち取るためには、一連のクーデターの張本人であるルルーシュが死ぬしかなかった。
この最終回を受け止めんとした時、キラ・ヤマトも死んだ方ええやんけ、そう思わずにはいられなかった。
『DESTINY』のラストを『コードギアス』で例えるなら、ナナリーの隣で顔出しルルーシュが准将軍服を着て新しい民主主義国家を作ろうとしている、ルルーシュに賛同したスザクやカレンも一緒だ!ハッピーエンド!!!!んなわけあるか!!!!責任取れクソ王家のクソ末裔!!!!
そう、『復活のルルーシュ』で責任を取ったのである。
ルルーシュは復活したものの植物人間、そしてL.L.に。ナナリー、元黒の騎士団や元ブリタニア軍人は新国家の設立のため皆頑張っている・・・
ルルーシュはナナリーの元にいるわけにはいかないと決心が揺るがないが、どこぞのスーパーコーディネイターどの面下げてザフト白服なんか着られるんだ・・・
キラ・ヤマトは今更やることがないし責任も取れない
他にもいろんな自由主義VS社会主義をテーマにした作品はあるだろう。それらの出してきた答えが須らくキラ・ヤマトをやんわり否定している。
今更キラ・ヤマトのその後を描こうにも刹那やルルーシュの二番煎じにしかならないと思っていた。
もしくは無限に治安維持を続ける苦労人話をやろうか。いやそれも『00 1期』の二番煎じだな。
なので宇宙クジラが出てきて『劇場版00』とか『トップをねらえ!』の感じで映画作れ!宇宙クジラを倒すキラに「倒しちゃだめだ!」って飛んでくるアスラン。最終的にキラ&アスラン&シンが合体ロボに乗って〇ッタービームを・・・
じゃあディスティニープランとラクスを絡めてイチャラブだ!!!!!
そこで『FREEDOM』の追加設定ですよ。舞台装置として完璧すぎる。ずる過ぎるけど完璧すぎる。
『DESTINY』の残債とは、”キラ”がディスティニープランを否定したことへの責任も当然ながら、キラとラクスの人間的成長がないことにもあると思う。『SEED』で結ばれて以降、関係の進展もない。何があってもイチャラブ!という良さもあるが、進展がないから成長が見えない。
その責任を取らせようにも、他作品が答えを出したので二番煎じになる。
じゃあラクスがディスティニープランの申し子だったことにして、そんなの関係ない!あなたが好きだからぁ!とキララクに言わせよう!!!!!
は?天才か?設定考案博士か??
思えばSEEDサーガは全編通して激熱設定の宝庫だった。決してリアリティに媚びず、劇的な設定を駆使することでドラマを転がす。
遺伝子組み換え人類、バッテリー駆動のMS、色が変わる装甲、NジャマーにNジャマーキャンセラー・・・
コーディネイター以上の遺伝子組み換え人類が出てくるのもうまい。
スーパーコーディネイター以上の人種がディスティニープランを遂行せんとするなら、そのスーパーコーディネイター様が黙ってないぞ!!!
話がとってもシンプルになりました(*´ω`)
ラクス・クラインからキラへの愛
そう!『SEED』に足りなかったのはそこなの!!!
ラクスがキラを好きだっていう確証がないの!!!
アスカガはわかる。キャンプファイヤー楽しかったんだろ。
キラがラクスに行くのもわかる。目が覚めたらいた巨乳。しゃあなし。
ラクスはようわからん。婚約者に逃げられたから?スーパーコーディネイターだから?てか数回しか会ったことなくない?
きっかけなんてどうでもよくて、スーパーコーディネイターとかそういうのもどうでもよくて、ただ無償の愛がそこにある。だからキラも頑張れる。
っていう本来『DESTINY』がテーマにするべきだった部分が、度重なる総集編と乱雑な終盤展開で全く印象づかなかった。
だから20年越しだとしてもやる価値がある。
ラクスからの無償の愛。
それをキラに伝える。
でもラクスにはオーライザー届けてほしいし・・・有償感出ちゃうよなぁ・・・
せや!プラグスーツ着せて(ry
―――――全ての演出に納得がある。
カップル成立!!!
”無償の愛”をテーマとして伝えるためにも、例のカップルたちがこれでもかと見せつけてくれるぅ!
シンルナのデュートリオンビーム照射(とかいうS〇Xのメタファー)
アスカガはお揃いのキャバリアーなんか着ちゃって・・・
あぁ、ポスターがみんな楽しそうにイチャイチャしてるのもそういうこったかぁ・・・
全ての演出がテーマに沿っている。
すごい。
純粋に感心してしまった。
おしり
さて、宇宙クジラはどこに・・・