見出し画像

線路は伸びるよ(夏)縮むよ(冬)どこまでも―猛暑で歪む鉄道レール

鉄の熱膨張率は、0.000012とされており、一般に定尺レールと呼ばれるレールの長さが25m(25,000mm)なので、例えばレールの温度が0度から30度へ上昇したと仮定して公式に当てはめると、0.000012×250000×30=約9mmとなる。実際には冬は氷点下に、そして真夏の炎天下では50度以上にもなることから、長さの変化はもっと大きな値になる。

このため、遊間の間隔を十分にとっていないと、レールが伸びた際に遊間が0になってしまう。そうすると、レールの内部で発生する、レールが延長方向に働く軸力という応力により大変な力が加わることになる。これはレールの太さ(断面積)で異なるが、30度近く温度が上昇した場合には、数十トンもの力が加わることになる。

当然、こうなってしまっては大変だ。レールは枕木で軌間(きかん=レールの間隔)が強固に固定されていて、このはしご状になった軌匡(ききょう)が、バラスト(砂利)によって路盤に固定されているが、この大きな軸力の影響でレールが曲がってしまうのだ。

この非常に危険なレールの曲がりを「張り出し」といい、過去には張り出しが発生して脱線事故なども起きたことがある。

間接データを活用した線路設備の状態推定手法の開発


酷暑が続いた昨年の夏は日本列島の各地で鉄道のレールが伸びて歪み、運転の休止や危険区間を徐行せざるをえない状況が多発しました。

東海道新幹線の場合、一般的には、表面温度が50℃以上になると温度を逐一測り、60℃以上で列車を時速70キロメートルに徐行させ、64℃以上では運転見合わせとする決まりだ。レール1本を8.8キロニュートン(900キログラム)以上の巨大な力で押さえてもレールが伸びてしまうリスクが高まるからだ。

※1 特別巡回の結果、動的にあおりが認められた場合は、70km/h徐行とし、さも無ければ、特別巡回の継続とする。
※2 7.5kN/本未満の場合で、特別巡回の結果、動的にあおりが認められた場合は、59℃で運転中止とする。それ以外の場合は、60℃を適用する。

今年の夏も梅雨明け前から猛暑が続き、各地の鉄道会社からアラートが発令されています。

実際、一昨日の夕方と昨日の夜、愛媛県東部の予讃線(JR四国)でレールが曲がり、多数の列車が運休したそうです。

7日にレール温度一時53度も 四国中央市のJR線路にゆがみ 一時運休や遅延発生

2024年7月8日 月曜 午後0:08

愛媛県四国中央市のJR予讃線で7日夕方、暑さによる線路のゆがみが見つかり、新居浜駅から香川の観音寺駅までの間が約3時間ほど運休しました。川之江のレールの温度はこの日の最高で53.2度を記録していました。

線路のゆがみがあったのは四国中央市のJR予讃線で、普通列車の運転士が7日午後5時5分頃に伊予寒川駅と赤星駅の間で振動を感知しました。

JR四国によりますと、現場では暑さにより長さ約10メートルに渡って、最大で約3センチのゆがみが見つかりました。

川之江駅のレールの温度計は、この日の午後5時10分頃に49.2度。また午後3時25分頃に53.2度を記録したということです。

このレールのゆがみのため、特急列車で新居浜駅から香川の観音寺駅まで。普通列車で新居浜駅から伊予三島駅までの間の上下線で、午後8時37分頃までの約3時間に渡り運転が見合わされ、運休が12本、遅れが10本発生しました。

影響が出た利用客は約1600人ということです。

猛暑…西条でも8日JRレールゆがむ レール温度は一時54度 一時運転見合わせ運休や遅れ

2024年7月9日 火曜 午前10:43

愛媛県西条市のJR予讃線で8日夜、暑さによるレールのゆがみが見つかり一部の区間で、列車の運行を約2時間半の間見合わせました。

JR四国によりますとレールのゆがみが見つかったのは、西条市内の伊予小松駅~玉之江駅の間で、下り列車の運転士が8日午後7時20分頃、下り列車が異常な振動を感知しました。

線路の担当者が現場を確認したところレールのゆがみを見つけ、午後9時頃から特急列車は松山駅~高松駅、普通列車は伊予西条駅~壬生川駅の間で、約2時間半列車の運行を見合わせました。レールのゆがみは約20メートルに渡り、最大で約46ミリでした。

ゆがみの原因は暑さのためと見ていて、この日の午後2時前にレールの温度が54度まで上がっていたということです。気象台によりますと、西条市では7月5日から35度以上の猛暑日が続いています。

このレールのゆがみの影響で、特急列車と普通列車あわせて3本が運休、12本に遅れが発生し、約1000人に影響が出たということです。

JR四国は7月12日にまでに半径800メートル以下の曲線の線路で、レールのゆがみ具合を点検するとしています。

愛媛県内のJR予讃線では7日も四国中央市内でレールにゆがみが見つかり、一部の区間で一時運転が見合されていました。

伊予小松 ― 玉之江間(JR四国 提供)

高温に晒される区間で様々な対策が行われる一方、保線作業に携わる皆さんは、猛暑の中、徒歩で目視点検を続けていらっしゃるようです。

地球が沸騰(化)する中、世界各地でレールに歪みが生じているようですが

国内外で深刻な脱線事故等が発生しないことを祈ります。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?