盗まれたバイク

僕は埼玉に住む尾崎豊が大好きな青年。彼の曲「15の夜」のフレーズ「盗んだバイクで走り出す」を聴くたびに、胸が熱くなる。そんな僕はある日、自分のバイクが盗まれたことに気づいた。その瞬間、心の中で「盗まれたバイクで泣き叫ぶ」状態だった。

しかし、ただ泣いているだけではない。僕は行動する男だ。まず、仮面ライダーになりきって、バイクを取り戻すためにあてもなく埼玉中を走り出した。もちろん、僕は普通の埼玉県人であり、変身ベルトもバイクも持っていない。だが、心の中では確かに仮面ライダーダブルのイケメンの方だった。

その途中で、ドミノピザのデリバリーカーが僕の前に立ちはだかった。ピザが食べたくなったわけではない。単に空腹だった。運転手はケンシロウのような筋肉ムキムキの男で、「お前はもう腹が減っている」とでも言いたげな表情を浮かべていた。僕は彼からピザを奪うつもりで突撃したが、逆に彼からピザを差し出された。

バイクを盗んだ犯人は、まさに尾崎豊の曲のように自由を求めて走り回っているのだろう。僕はようやく犯人を見つけた時、彼はバイクに乗って尾崎豊の歌を口ずさんでいた。思わず笑ってしまった。彼も僕も、同じ曲に魅了されていたんだ。なんだか彼が憐れに思えた。

だけど許せない、バイクのナンバープレートは東村山、つまり東京都に付け変わっていた。僕はリモコンを取り出すと、バイクの自爆スイッチを入れた。彼がバイクごと木っ端みじんになったその瞬間、心の中で尾崎豊が微笑んだ気がした。

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