疑わしきは被告人の利益に
あふれるニュースの中から、学びや気づきがほしい。そんな方のため、元県紙記者の木暮ライが取材し、印象に残ったニュースを取材後記で紹介しています。
■けんかで被害者死亡/暴行の特定に至らず―男2人に「同時傷害の特例」
両被告は、傷害の罪に問われ、求刑通りそれぞれ30万円の判決を下した。木暮は、単なる傷害事件と思い事実だけを報じた。今ではこの判決について検証取材しなかったことを後悔している。あとで社会部デスクにも釘を刺された。しかし、河北新報の記者は地検などに取材を重ね、暴行の特定に至らなかった理由を丁寧に記事化した。
検察は、当初傷害罪で起訴したものの、傷害致死罪への訴因変更を模索していた。しかし、解剖医は「頭を打ったことが直接の原因とは考えにくい」と判断。亡くなった男性の死因は、病死の可能性もあることから、検察は訴因変更を断念した。
裁判所が下した判決は、刑法例外規定の「同時傷害の特例」だった。
かつて「疑わしきは罰せず」という言葉を作りだした法廷弁護士のウィリアム・ガロウは、「裁判は、告発者が証拠を提供し、法廷で徹底的に検証されるべき」と主張した。日本の刑事訴訟法336条には「被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない」とある。「疑わしきは被告人の利益に」の原則を表明したものだと理解できる。しかし本件は、その法則を無視したといえるのではないか。2人の被告がやったことは到底許されることはない。しかし、法律の矛盾を考えると、判決は妥当だったのだろうか。
今も、判決後の加害者側親族の涙を忘れることはできない。
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