プリティーリズム レインボーライブ感想

最後まで見終えた!

隙のない、お手本のようなシナリオ

このアニメは「よく出来ている」と何度も唸ってしまうほどに、ストーリー進行と情報提示のテンポがいい。その出来と言えば、全51話の4クールアニメでありながら、1話でも見逃すと支障をきたすほどだ。

各話でメインストーリーを進めつつ、1クール目最後の山場(主人公チームとライバルチームが直接対決する)で後に克服される困難を提示したり(最終盤で成長っぷりが"答え合わせ"される)、のちのち関わってくるキャラクターを少しずつ登場させたり、あまりにも隙が無い。それなりな長さのある創作をする人はぜひ見た方がいい。そうでなくても見てくれ!

第11話から第13話で提示されるそれぞれのテーマ

いと :あんなおどおどした奴に負けるなんて!(自尊心)
おとは:自信のなさ、べるへの依存

あん :3連続ジャンプを最初から諦めていた(後悔&向上心)
わかな:失敗することへの恐れ

べる :孤独と重圧
なる :楽しむことと技術的向上の両立

……あまりにもはっきりと提示されるので、1クール目を終えたときに「なるほど今までのは全部プロローグか」と確信して、その時点で全体の構成に期待と信頼をもてるようになる。


各話のダイジェスト&各クールの感想

51話まで完走してから急いでざっと見返しつつ、主にストーリー進行よりも情報の提示に注目してまとめたもの。

太字にして強調しているのは主人公&ライバルチーム以外のキャラクター(主人公&ライバルの家族、男子3人、大人組)の情報。主人公&ライバルたちがメインストーリーを進める傍らで、周辺人物も少しずつ情報を小出しにされていることに注目してほしい。


1クール目ダイジェスト&感想

第1話:綾瀬なる、蓮氏城寺べる、プリズムストーンの登場
第2話:福原あんの登場(たしかこのへんで森園わかなと小鳥遊おとは…)
第3話:涼野いとの登場(…が登場したはず。詳しい描写は後ほど)
第4話:茨りんねの記憶喪失設定、非公式4連続ジャンプ
第5話:神浜コウジ(はじめて名乗った)から新曲をもらう
第6話:店長、速水ヒロ登場、コウジとの因縁、いと新曲
   ロック性の違いから、いととコウジが険悪
第7話:主人公たちの家庭の描写、あん新曲
第8話:仁科カヅキ登場、あんの新曲の権利を巡ってバトル
第9話:いと→わかな「あんなおどおどした奴」
   若菜→あん「負けたら金輪際ショーはしないで」(試合は中止)
   りんね初のソロライブ(gift)
   ドリーミングセッションの情報が初登場
第10話:謎の河童店長。ドリーミングセッション直前。
べる「好きな時に気ままに踊っている人たちに大会に出る資格はないわ!」
カヅキ「あんはいつも新しいことに挑戦していたよな(伏線)」
コウジ「音楽はやらない。母さんが悲しむから」
第11話:いとvsおとは、おとはとべるの過去。氷室聖が少しだけ顔出し
第12話:「失敗しないでね」、「もっと練習しておけばよかった!」
    プリズムショーの向上に熱心・真摯な
第13話:なるvsべる。ドリーミングセッション終了。
第14話:第1クール総集編。聖さんのスタンス表明。
   プリズムワールド関係者の正体明かし。

この時点ではヒロはとても悪い奴……なんだけど、なるにエーデルローズ流のプロ意識をわかってもらおうとしたり、少しは良い面もあるのかなぁくらいの印象。カヅキ先輩は聖人、コウジはメンヘラ。

2クール目ダイジェスト&感想

第15話:エーデルローズ校内初登場。おとはの両親登場。
    ここから徐々にエーデルローズ組のプリズムライブ解禁
第16話:カヅキとわかな接触。わかなの両親登場。
第17話:猛特訓するべるを気遣うヒロとわかな。
    わかなとべるの過去エピソード。
第18話:ヒロがPRIDEでデビュー。ヒロがいとに作曲依頼。
第19話:いと回。いとのあだ名("クロス")の由来。
    いとの父親の怪我(この時点では「事故が原因」)
    カヅキ「あいつ(コウジ)の親父さんが交通事故で亡くなってな」
    コウジとヒロの因縁(より具体的な盗作問題)
第20話:ジュネと聖(プライベート)のやりとり。
    ヒロ「高みに登れば上るほど、人はひとり、孤独になってゆく」
    トリオ大会の開催決定&プリズムライブが採点対象に
第21話:エーデルローズ、空席になった3人目を求めるオーディション。
第22話:りんね「約束は大事」
第23話:あん&わかな過去回。わかなの家庭環境も。
第24話:べる様の家庭事情が明らかになる。
    ヒロ「一人ぼっちの女王、それがべるの望んだ姿?」
第25話:トリオ大会開幕。ベルローズ結成。
    ヒロトップに立つ人間は誰にも助けを求められない」
第26話:ハッピーレイン結成。


 1クール目はプリズムストーン組がメインだったのに対して、2クール目は全体的にエーデルローズ組にスポットが当たっていて、それゆえヒロがべるを気遣う描写も多い。また、いととコウジの……というより涼野家と神浜家の話をするための外堀も埋められつつある。

 第26話は恋愛回。勝手に曲をアレンジしたコウジに怒っていたいとが、曲を聞いたべるの一言「これは愛ね」で一転、流れで告白イベントまで発生する。玉突き衝突で、なる→コウジの失恋とわかなのあんへの嫉妬まで起こってしまう。べる様の一言がなければ6人+男子3人の関係は大きく変わっていたかもしれないんだなあ……。(余談だけど、流れが流れだから自然だったけど、普段のべる様なら「これは愛ね」なんて言わなそう)

 トリオ大会の結果発表で、べるの第一声が「ありがとう」なのは第17話の「昔は"ありがとう"ってちゃんと言えてたよ」に対応している。丁寧。それ以外にもべるの部屋でくまのぬいぐるみが飾られているところも、伏線というほどではないけど見返すと発見がある。


3クール目ダイジェスト&感想

第27話:総集編。法月仁が登場。いかにも悪人。
    法月「セカンドシングルはもっと有名な作曲家に」
    ジュネと聖の過去の話をする。
    プリズムショー界を懸念する聖。ピコック先生、怒る。
第28話:神浜コウジの母親登場。ジュネの5連続ジャンプ宣言
第29話:修学旅行編。べる店長。
第30話:涼野家の別居の理由。
第31話:べるの経営(大赤字)にフォローを入れるDJ.Coo
    ヒロの回想の中で、黒川玲が少しだけ登場する。
    「俺たちが目指すのは勝者じゃなく勇者だろ」

 第27話、法月主催が愛・NGの話題を出した途端に"図星"な反応を見せるヒロ、ヒロ→べるの貴重な恋愛っぽい描写。後のヒロの決断は、第31話「勝者じゃなく勇者」だけでなく、この時の「セカンドシングルはもっと有名な作曲家に書いてもらいます」もきっかけの一つか。(第38話のべるとの会話でも「俺はもうそういう生き方しかできないんだ」と思いつめた本音を語っている)

 第27話でジュネ様がかぐや姫の話を出したことや、第28話での5連続ジャンプ宣言(この世界に人間に負けないための競争)も今にしてみると伏線か。

 第29話、べるの軟化した態度が現れる回。「ハードルを飛び越える手助けをすればいい。俺たちはエーデルローズ、観客によりレベルの高い喜びを提供するのが俺たちエーデルローズだ!」はなかなか名言。

 第30話:クロスがcross(交差路、十字架)だけでなくcloth(布)もかかっていると判明する回。この時点では涼野父の起こした事故の死傷者が誰かは明かされていない。第32話でもハンカチが密かにキーアイテムとして用いられていて、神浜家の人たちにたくさん握りしめられている。

 第31話、エーデルローズのやり方を理解しているからこそ、DJ.Cooは失敗をフォローするような発言を敢えてしたんだよなあ。とてもいい人。


第32話:ジュネと聖の出会い男子三強の話。
    黒川玲が喋る(声が特徴的なので喋るとネタバレになる)
    コウジ母「北海道はもう雪が降る頃かしら」
    ジュネ5連続ジャンプ実行
第33話:森園家の引っ越しが決まる
第34話:子供向けはハピなるライブ
第35話:デュオ大会のチーム決め。いとがわかなの引っ越しを知る
第36話:お泊り回。わかな引っ越し取りやめ
第37話:お泊り回(いと&おとは)……だけど実質いと&コウジ回
    コウジ母の口から事故の詳細が語られる
第38話:お泊り回(なる&べる)
    ヒロ「俺はもうそういう生き方しかできないんだ」(先述)
    歩道橋でべるを抱きしめ「一分だけ、こうさせてくれ」
第39話:温泉回(主に男子)(全裸でPRIDEが流れる男
    ヒロ「何万と言う大観衆の期待に応えようという勇気だ!」
   「カヅキ先輩に告白しちゃおっかにゃ」
    ジュネのパートナー発表

 デュオ大会編では主人公&ライバルの家庭環境の話に焦点があてられる一方で、3クール目全体としては徐々にプリズムワールドの使者や男子3人、男子三強(今さらだけどこの呼称紛らわしいな)にも話が広がりつつあることにも注目したい。

 涼野家と神浜家の過去については、一番早い回だと第19話、遅い回でも第32話(北海道であんな話を聞かされた後の「北海道はもう雪が降る頃かしら」だ)とたくさんの伏線が張られている(序盤のそれははっと気づくための伏線というより、唐突に感じられないための雰囲気作りみたいな感じだ)。……とにかく全編を通してなるべく情報がちりばめられている。

 ヒロだけに注目すると、法月仁の「セカンドシングルはもっと有名な作曲家に」、「俺にはもうそういう生き方しかできないんだ」、「一分だけ、こうさせてくれ」、(全裸PRIDEからの)「何万という観客の期待に応えようとする勇気」……と徐々に法月仁への反感から、真実を告げる決心へと至る過程が表れている。

第40話から、ウィンターホワイトセッション本戦。


4クール目ダイジェスト&感想

第40話:W告白。(わかな&あんの間接キッス!)
第41話:事故の詳細が涼野父の口から語られる
第42話:なる&べるがショーをする裏で、涼野&神浜家の話は続く
カヅキ「お前もしかして、俺たちに助けを求めてるんじゃないのか?
ヒロ「嫌うっていうのは、なるちゃんに何かを期待してるんだよ」
第43話:ジュネ&りんねライブ。りんね覚醒
第44話:男子三強の真相、聖失脚、法月の根回し
第45話:盗作公表、法月失脚
    ヒロ「お前とコウジにエーデルローズのことを頼みたい」

 4クール目前半。この辺までくるともはや女子は最低限の話だけで、ほとんどプリズムワールドと男子プリズムショーの話しかしていない。

 露悪的なヒロに対して「お前もしかして、俺たちに助けを求めてるんじゃないのか?」と気づけてしまうカヅキさんのSSS級勘の良さ、やっぱり只者じゃない。それとも、もしかしてレインボーライブの世界では本音を隠して露悪的になるのはよく認知されたありがちな行動パターンなのか? (エーデルローズ伝統芸能か?)

 「法月さんの根回しで出場できないよー!」「フハハ! 私の天下だ!」から法月失脚までが本当に短い。これまで2クールにわたって悪さをしてきたのに、たった1話でインスタントに失脚してしまうのか……。


第46話:オーバー・ザ・レインボーセッション開幕
    おとは、あんのライブ
第47話:事故の真相(今度こそ全ての真相)、いとライブ
第48話:わかな、べるライブ
第49話:ジュネライブ。プリズムの使者
第50話:なるライブ
第51話:後日談

 おとはが「おどおどしているだけじゃだめだ」となるのはありきたりだけど、"仲間をリラックスさせるために"先陣を切るシチュエーションを作ることで単なる過去の自分の否定にならないようになっているのは偉い。脚本の人ほんと偉い。

 あんの「人生甘いことだけじゃないね(意訳)」という答えは、プリパラのスマイル0%のような、「なるほどその手があったか」の意外性と説得力がある。彼女がスイーツ担当なのもここから逆算されてたんだろうか?

 わかなの母親は元ヤンキー、父親は元陽気。結婚の際に相手に好かれるために真面目を演じていたというオチ……というか後味の良い回収。中盤で明かされるとリアリティラインが心配になるけど、ラストスパートだから単純に「いい話だな~!」で済むね。
 7連続に挑戦(して失敗する)だけならある程度予想がついてしまうところを、べるの直前に配置することで視聴者の期待を高める役割が与えられていて、やっぱりよく出来ている。レインボーライブは要所要所できちんと計算されているから偉い。

1クール目ラストで提示された課題への"答え合わせ"は、それぞれ

おとは:人を癒すために時には先陣を切る勇気も必要だと学ぶ
あん :人生には甘いこと以外もあって、それを知った上で甘いことが好き
いと :他人に目を向けることの重要性
わかな:7連続ジャンプに挑戦、失敗したけど笑っていられる
べる :夢を追いかけることを決心する。
   (母親の期待に応えるという夢→茨の道→女王の孤独→
    →仲間の愛→夢があるからジュネを超える覚悟ができる)

……全員がこれまでの経験から学んで、過去の自分から出発して今の自分へとアップデートしているという説得力が本当に強い。本編中で描かれた内容が過不足なく利用されている。

 プリズムワールド関連は……私がプリティーリズムの他シリーズを見ていない(思い入れがあまりない)こともあってか、それほど心に響かなかった。これまでずっと現実的な話をしてきたんだから、リアリティラインが滅茶苦茶な話よりも現実的な成長の方が感動しやすいよ。

黄緑のマスコットを見たときに、第一印象で「あっ、たぶんこれは河童とペンギンの中間の存在なんだろうな」と理解できたけど、冷静に考えると黄緑の一頭身をペンギンと認識できるのはおかしい。ペンギンはふつう青か水色、それか黒色だ。たぶんすみっコぐらしにミーム汚染されている。

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