見出し画像

BOXIL EXPO「変化に強い営業組織のマネジメント論 - チームの力を最大化するプロセス①」

先日弊社倉林がBOXIL EXPO 第2回 営業・マーケティング展に参加し、ブラックラインの宮﨑さん、ジャパン・クラウドの福田さんのお二人をパネリストとしてお迎えし、営業組織マネジメントについてセッションをさせていただきました。

画像2

コロナという大きな環境変化に対して、それをチャンスとしてビジネスのやり方をアップデートできる企業と、そうでない企業の差が明確になってきました。変化に強い営業組織の「プロセス(仕組み)」と「マネジメント(人)」をどう作り上げていくのか、現場から経営まで広い知見を持つパネリストより盛りだくさんにお話を伺いました。

実はセールスフォース・ドットコム出身という共通点があった3人。前例のない対応を迫られている多くの企業の皆さまに向けて、今回は本セッションの前半をお届けします。

環境変化に対する営業マネジメントの視点

倉林:コロナによる大きな環境変化に対して、営業組織としてどう対応していくかを考えるにあたって、今日は以下のように4つにテーマに区切ってお話しできればと思います。
横軸には大きく二つの課題を取り上げています。一つはお客様の意思決定により時間がかかってしまうという課題、もう一つはIT投資に対するお客様のご予算が下落しているという課題です。縦軸には、こういった課題への対応として、お客様へどうご説明していくかという視点と社内をどうまとめていくかという視点で区切っています。

Boxil Expo用スライド

1. コミュニケーションプロセスの最適化

倉林:まず宮崎さん、お客様の意思決定の長期化という課題について、セールスフォースでのご経験を振り返っていかがでしょうか。

宮﨑さん:コロナが始まった時に何が起きたかというと、全ての商談がいきなりリモートに変わったんですね。幸いなことに私たちはSaaSのベンダーだったので、リモートへの切り替えは比較的早く対応できました。しかしお客様側はそうは行かないことが多く、商談期間はおよそ1.5倍長期化しました。

リモートになった時にまず考えたのは、コロナ前からリモート環境で営業をしているインサイドセールス(内勤営業)に知見があるのではないかということでした。すぐにそのチームのトップセールスやマネージャーにヒアリングを行ったのですが、「オンラインでのコミュニケーションは時間が長ければ長いほどお客様にとってストレスだ。だから時間は可能な限り短縮し、その分サイクル頻度を高くしている」と聞いた時には驚きました。
これをフィールドセールス(外勤営業)に応用すると、例えば1時間の商談訪問を月に1-2回やっているのであれば、それを30分の細切れにして1週間のうちにやってしまうということになります。小さい合意を30分単位でどんどん積み重ねていくことで、小さな進捗をきちんと重ねていくわけです。リモート環境下では、お客様のアポも取りやすいという利点もあります。加えて、単純に会う回数が多いと心理的なハードルが下がります。これらの相乗効果で、お客様の意思決定期間はだいぶ短縮することができました。

倉林:お客様も長いミーティングは嫌なんですね(笑)。これは今後面談ができるような環境に戻ってきた場合にも応用できるのでしょうか?

宮﨑さん:コロナが始まってから1年程経った今、きちんと対策をした上で訪問することも増え、リモートとのハイブリット型になってきました。第一印象は大事ですからファーストコールは対面、その後の商談は短時間のリモートミーティングを頻度高く、最後のクロージングはまた対面というサイクルが良いのではないかと考えています。この商談を進めていくところには、リモート環境でのノウハウが活用できます。

福田さん:長いミーティングが嫌だというのは良いヒントになります。以前は私もお客様はやはり訪問して欲しいのではないかという先入観がありました。しかし実際にお客様の声を聞いてみると、とにかく時間をくださいと受付を突破しようとするような営業には皆さん困っていて、欲しい情報を短めにパッと教えて欲しいというニーズが非常に高かった。これに対してオンラインや電話で対応していくというのはワークするでしょう。

私はよくプロセスとチャネルは切り分けて考えるべきとお話しています。できる営業の方は毎回訪問するというよりも、ここはメールでぱっと資料を送った方がいいとか、メールが見ない人には携帯に電話をするとか、お客様やフェーズを見てチャネルを使い分けていますよね。今後商談訪問が段々と戻ってくる中で、コミュニケーションチャネルは顧客が決めるくらいのつもりで、プロセスや役割とセットにして硬直化させずに自分を柔軟に合わせていくことは必要になってくると思います。

倉林:ちなみに、画面越しではどうしても伝わりきらない部分、コンテクストや空気感といったものがあると思います。これに対して何か工夫されていたことはありますか?

宮﨑さん:やはりリモート環境では伝わる情報量は圧倒的に少ないと思います。これに対して、まず数を重ねる、先程の頻度を上げるという対策があります。加えて、何らかのタイミングで対面できたのであれば、それを定期化してしまう。四半期に一度でもマネジメントとお会いする機会を設定するというのは、頻度をキープするという意味でも有効な手段です。

お客様の組織図も入手するようにしています。特に相手方の反応が個別で見えにくいリモート環境下では、お客様の商談に関わる意思決定プロセスを理解し、オセロのようにこの人はひっくり返った、あの人はまだ時間がかかりそう、など状況を把握しながら戦略を立てることが必要です。その際にチャートはとても役に立ちます。また、商談の後には必ず5分でもいいのでラップアップの時間を取っています。情報量が少ない中でも得られたものを共有した上で、全員で次のアクションを決めることで、より正確なアクションを取れると考えています。

倉林:大企業では関係する意思決定者が多く、中には1人の反対でひっくり返ってしまう場合もあります。チャートでしっかりと確認することでそれをカバーしているんですね。福田さん、こちらについてはいかがでしょうか。

福田さん:オンラインでの見せ方を営業が学んでいく必要があると考えています。やっている方は一生懸命で気づかないけれど、見ている方はとても気になる点というのは、実はたくさんあります。細かい話ですがマウスの動き、プレゼン資料の送り方一つとっても今見ているから動かさないでほしいのに、といった余計な雑な動きは、対面ではカバーできていたものもリモートでは全くカバーできません。お客様がハイブリッドの良さに気づいている以上、オンラインでプレゼンやデモをする能力に長けた営業はこれから伸びていくと思っています。

2. OKR、Sales Enablement、トレーニング、Sharing Success

倉林:では、2つ目の意思決定の長期化という課題に対する社内での対応というテーマに移ります。今福田さんがおっしゃったような、ニューノーマルの中でどのようなスキルを身につけるべきか、他のメンバーの成功体験をどのようにシェアしていくかなどトピックが広いのですが、宮﨑さん、実際の取り組みやその成果について教えていただけますか?

宮﨑さん:リモート環境では、自分の働きがどう貢献しているのか非常に見えにくくなります。縦ラインである直属の上司とのコミュニケーションは濃度が濃くなるのに対して、それ以外の横・斜め・後ろとは極端に減っていくので、上司にだけ貢献しているように感じてしまうんです。そうではなくて、会社・チーム・個人の全てが向かっているベクトルが一緒なのだということを周知徹底することが必要です。

OKRのような公開型の目標設定では、お互いが「この人はこういう目的で仕事をしているんだ」ということを把握した上で協力関係を築いていくことができます。このベクトルを揃えるという点を強く意識した上で、リーダーから下へ数珠繋ぎになるように目標を設定していったというのが大きな工夫です。目標のレビューも以前より頻度高く行うように変更しました。今までは半年か1年に1回だったものを、四半期に1回、場合によってはもっと短期間で行うようにしました。

倉林:マネージャーの方の負荷がずいぶん増えてしまいそうですね。

宮﨑さん:はい、なので同時にマネージャーの負荷を下げる工夫も行っていました。やはりリモート環境に変わっても上手くできる人はうまくできるんです。でもいきなりできなくなってしまう人もいる。そこで上手くできている人のやり方をすぐに真似できるように、シェアリングサクセスをする頻度を4倍、5倍まで増やしました
例えば、先程のリモート商談の細かいやり方を共有したり、インサイドセールスの方に営業向けにプレゼンをしてもらったり、毎週のようにやっていました。リモート環境の良い点として、会議室などもいらないのでクイックに集まれるんですね。そうするとマネージャーを要として情報共有をしていく必要がなくなります。また、共有する方のメンバーも自分のやっていることが伝播されていく喜びがあります。こういった意味でも良い循環を作ることができたと思っています。

倉林:コロナという大きな環境変化の中で、営業の方のクオータの見直しは実施されましたか?

宮﨑さん:セールスフォースでは目標自体を変えるということはなかったですね。ただ目標のトレースのやり方や頻度を大きく変えました。 身動きが取れない中で売上だけを注目するのは非現実です。そこでまずはお客様との対話を増やそうと、アクティビティの件数を今まで以上に頻度高く行うようにしました。ここが担保できると、自然とパイプラインに繋がっていきます。そこで次はパイプラインにフォーカスし、最後は売上に戻っていく。こんなやり方を行っていました。

倉林:なるほど、これまでとペースや順序を変えて、先に種植えを行って後から収穫しにいくという調整を行ったんですね。福田さん、こちらのテーマについていかがでしょうか。

福田さん:私は、営業組織の強さはファーストラインマネージャーに現れると思っています。営業担当者を直接束ねているマネージャーが強いかどうかで、短期的な業績は間違いなく変わってきます。しかし、中長期的な成長、本日のテーマでもある変化に強い組織を作れるかどうかというのは、そういったマネージャーを束ねている事業部長や本部長が強いかどうかで決まってきます。

というのも、営業担当者やファーストラインのマネージャーは、与えられたテリトリーの中でどれだけ数字を上げるかが勝負なので、全体感を持って進めるというよりは戦略的に的を絞って活動をすることになります。ただ会社としては、会社の組織やマーケット全体を見て、今後より成長していくためにどういった投資が必要なのかを考えていかなくてはいけません。足元の数字ではなく、大きな変化が起きるだろう3年後、5年後といった将来を意識しなくてはならない。コロナだけではなく、ニューヨークのテロやリーマンショック、東北の大震災など、誰も予測できないことは起きるんです。そうすると、大規模なレイオフが起きたり、お客様に会えなかったりする。
だからこそ、プロダクトや地域、リソースといったポートフォリオのバランスを考えて、どこにいつどういう順番で投資していくのかを考えるのは非常に大切だと思います。その際に助けになるのは、2年後の組織図をイメージすることです。その組織図の中でどのピースが足りないのか、どういう人になって欲しいのか、それは社内なのか社外なのか。一つ一つ組み立ていくことで、社員のイネーブルメント、リクルーティングにつなげていくことができます。来年の計画を考える時に、その先の2年後から逆算して考えるということです。

もう一つ付け加えると、成績が上がる営業とそうでない営業を分けるポイントとして、わからないことがあったときに社内の誰に聞きにいけばいいかを知っているかどうかということが挙げられます。そういった社内の人材マップのようなものが提供できると、新しい人が入った時の立ち上がりが格段に違うなと、いろいろな会社のイネーブルメントを見てきて感じています。

宮﨑さん:まさに福田さんがおっしゃった通り、誰に何を聞けばいいのかがすぐ頭に浮かばない状況は成績や離職率に大きく影響します。セールスフォースでは、その月に入ったメンバーに対してベテランの営業がバックオフィスやSEといった他のセクションのキーマンを紹介するカジュアルな会を開くようにしていました。

倉林:情報共有を効率化すると同時に、それだけだと分からないことをカジュアルな雰囲気で伺えるというわけですね。

========
いかがでしたでしょうか。少しでも皆さんのビジネスのヒントにしていただけると幸いです。
後半についても近日中に公開しますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

(文 / 編集・池袋奈緒子 監修・倉林陽 / 上野なつみ)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?