見出し画像

追加投資|ROMS:Robotics as a Service

DNX Venturesは、株式会社ROMS(以下、ROMS)のシリーズBにリード投資家として出資参画させて頂きました。ROMSは主に食品小売企業向けに、お客様の注文に対する商品準備を自動化するバックエンドフルフィルメントサービスをオールインワンで提供するスタートアップです。本稿では、我々DNX VenturesがシリーズAに続いてROMSに投資した背景や理由をROMSの魅力と共にご紹介したいと思います。

ROMSとは?

ROMSはスーパーマーケットを中心とした食品小売企業に対して、ネットスーパーやEコマースの裏側のオペレーションとして必要となるバックエンドフルフィルメントソリューションを提供するスタートアップです。

日本でも今や生活インフラとしてEコマースが普及しましたが、領域別に見てみると、Amazonのような大手ECプレーヤーや大手スーパーマーケットがネットスーパーという形で参入している食品領域のEコマースは、通常の物販に比べてまだまだ普及の余地があります。直近ではコロナ禍の生活スタイルの変容により、フードデリバリーやクイックコマース(以下、Qコマース)と呼ばれる領域が台頭するなど、食品領域のEコマースはさらに需要が高まっています。一方、Eコマースは商品を配送するまでに、倉庫に商品を準備し、最終消費者のオーダーに応じてパッケージを作り、出荷する、というフルフィルメントオペレーションが必要になります。一部の大手プレーヤーは自動倉庫などを使用してオペレーションの効率化を図っていますが、スーパーマーケットやフードデリバリー事業者の多くは依然、オペレーターを採用してフルフィルメントオペレーションを回すという労働集約的な状況が実態になっています。

また、昨今は人材不足が顕著になっており、より課題が深刻化しています。そうした課題に対して自動倉庫等のフルフィルメントソリューションを提供しているのがROMSです。

ROMSで実現できること

ROMSの最大の特徴は顧客企業の制約条件に合わせて柔軟にフルフィルメントソリューションを提供した上で、ネットスーパーのアプリケーションや業務データの予測・分析機能を含めたソフトウェア部分も一気通貫で顧客に対して提供できることです。フルフィルメントのオペレーションは、倉庫搬入・出荷・商品ピッキング・受け取りor配送という流れになります。ROMSはモジュールベースでプロダクトを開発しているため、顧客の要望に合わせた柔軟な対応が可能になります。ROMSでは主に以下二種類のソリューションを提供しています。

1) Nano-Fulfillment-Center (NFC)

主にネットスーパー用のバックエンドフルフィルメントソリューションを提供するのがNFCです。NFCはハードウェアとして自動倉庫・ピッキングアームを、ソフトウェアとしてネットスーパーアプリと裏側のオペレーションシステムをオールインワンで提供しており、ユーザー企業側はネットスーパー用の商品の準備と配送業社を手配するだけでネットスーパーを展開することが可能になります。

2) Robotics Convenience Store (RCS)

一方、一部の食品小売企業ではネットスーパーではなくコンパクトな無人店舗を展開したいというニーズがあり、それらのリクエストに対応するのがRCSです。RCSはNFCの自動倉庫・ピッキングソリューションをベースに、ROMS独自の決済システムを組み合わせることで、レジ打ち用や陳列・面出しするオペレーターを雇用しなくとも無人で店舗オペレーションが完結するソリューションです。

DNXが追加投資した理由

シリーズA以降、ROMSはビジネス・プロダクト・組織の磨き込みをさらに進めた上で今回のシリーズBを迎えました。我々が伴走する中で見てきたROMSの魅力をここではお伝えしたいと思います。

1) 前野CEOを筆頭とした強い組織

ROMSはDNXが得意とするB2B SaaS企業と比較して、ハードウェア開発・インテグレーションを行う必要があることから、より難易度が高い組織作りが求められるスタートアップですが、マテハン企業、メーカー、スタートアップ、コンサルティングファームとった様々なバックグラウンドを持った多様なメンバーが、創業者である前野CEOのビジョン・ミッションに惹きつけられて集まり、強い組織カルチャーを作ってきました。

2) 難易度が高いが大きな可能性のある産業への挑戦

DNXでは多くのインダストリーSaaSスタートアップに投資していますが、ROMSが取り組む食品小売業界はまだまだテクノロジーの活用余地が多くある領域です。USを見るとソフトウェアとハードウェアをセットで提供することで顧客企業に価値提供するRobotics as a Service (RaaS)モデルは一つのビジネスモデルとして成立しつつあります。食品小売業界が持つEコマース領域の課題に対してはRaaSモデルが最適解ではないかとの投資仮説を立てた上で、改めて今回の投資判断を行いました。DNXではUSチームが同様のビジネスモデルで医療機関に対してサービス提供を行うスタートアップDiligent Roboticsに既に投資しており、USチームの知見も活用し、今後さらにROMSを支援していきたいと思います。

3) トラクションに裏打ちされた提供価値

ROMSはシード期から様々なお客様からフィードバックを頂き、試行錯誤を重ねてプロダクトを磨き込んできました。その努力が結実し、RCS/NFC双方において、顧客獲得実績も作ることができました。今後、事業開発を加速させる前提となる、ソリューションの提供価値が実証されたことは大きなマイルストーンの達成であると判断し、今回の大型投資に踏み切りました。

代表取締役前野さんからのコメント

今回、DNXにシリーズBラウンドをリードしてもらいましたが、率直にDNXとご一緒出来て嬉しいです。創業直後の2019年末ころからDNXのManaging Partner/Head of Japanの倉林さんや投資担当の小澤さん、稲田さん、大久保さん、上野さん、USチームのQやRickie等、多くのDNXの方々にこれまでサポートして頂き、今回の資金調達に至りました。
ROMSは、正直、非常に難しい、厳しい領域で事業展開をしていますが、一見するとロボット・ハードウエア色が強くて、SaaSやウエブサービスとは縁遠い様に感じられる方々も多いのは事実です。一方で、ROMSがやろうとしているのは、そんなロボット・ハードウエアとSaaSやウエブサービスを融合させて、如何にロボット・ハードウエアを違う次元で展開出来るようにするか、時としては思い切ってロボット・ハードウエアを使わずに、SaaSやウエブサービスだけで完結させることも志向しています。そうすると自ずと手掛ける領域も広くなることから、一般論だと、Focusしていない、カバー領域が広過ぎて、make senseしないと言われることも多々ありますし、時間もかかります。
そんなROMSを常にまずは理解しようとしてくれ、何よりも全面的にサポートをしてくれるのがDNXで、非常に難しい、厳しい領域だからこそ、SaaSの様なPricing Model含めて他領域のやり方とかが移植出来ないかを、一緒に頭を悩ませながら考えてくれるのもDNXでした。また、USと日本の違いも踏まえつつ、USの類似企業だとこういう難しさもある、といったアドバイスも、目の前の日本の業界構造だけを見がちな我々の目を覚ましてくれます。そういった背景もあり、私は、今回のラウンドはDNXによるリードが絶対条件だと勝手に考えていましたし、DNXもそのつもりでいてくれたと思います。
今回の資金調達を踏まえ、事業展開を更に加速し、DNX及びその他投資家の方々と共に、ROMSの携わる領域、そして業界の健全な発展に貢献していきます。
—— 株式会社ROMS代表取締役 前野 洋介

ROMSには、2020年のシリーズAラウンドに続いて、今回2回目の出資をさせて頂きました。ROMSは前野CEOの強力なリーダーシップの下にシリーズAから着実にプロダクトおよび組織の開発に取り組んできており、魅力的なメンバーがROMSに参画しています。また、ユーザー企業への本格導入も始まり、事業拡大の素地が整ってきました。今後ROMSは調達した資金を活用し、メンバーの増員やプロダクト開発、そして顧客獲得・事業開発を進める予定です。我々DNX Venturesも、ROMSのビジョンの実現に向けて引き続き支援を継続していきたいと思います。

(文:小澤 祐介)


本日、合わせてROMS前野さん、UTEC林さんとDNX倉林の対談記事も公開となります。ぜひご覧ください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?