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新規投資|エンペイ:社会を変えるSaaS×フィンテックの可能性

この度我々DNX Venturesは、4月1日にプレスリリースが配信されました通り、株式会社エンペイ(以下エンペイ)のシリーズAラウンドのリード投資家として、ちゅうぎんインフィニティファンド様と共に出資させて頂きました。エンペイは、学校や学童などの教育市場を皮切りに、アナログな現金集金作業を、PCやスマホを活用して請求から支払いまでを可能にする集金業務支援を行うSaaS×Fintechプラットフォームを運営するスタートアップです。

ここでは、エンペイが解決しようとする課題とインダストリーSaaS×Fintechの可能性、そして我々DNXが投資に至った理由をご紹介させて頂きたいと思います。

現金大国ニッポンと教育現場の課題

日本は、言わずと知れた現金大国です。経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン」によると、2015年の日本のキャッシュレス決済比率(以下)は、たった18%。これは、隣国の韓国(89%)や中国(60%)のみならず、アメリカ(45%)などの欧米諸国と比べ、圧倒的にキャッシュレス化が遅れています。直近2019年では約27%と徐々にキャッシュレス化が浸透してきていますが、まだ民間消費全体の3/4は現金に依存しているのが実態です。

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コロナによるキャッシュレス化の波

この日本の現金主義は、昨年の新型コロナウィルス感染症拡大が契機となり、キャッシュレスへ大きくシフトしました。なぜなら、現金のやり取りによる感染リスクから、衛生的なキャッシュレスへの消費者マインドがシフトしたからです。電通が、昨年2020年12月に行った「コロナ禍における生活者のキャッシュレス意識調査」によると、消費者の約50%が『キャッシュレス比率が高まった』と回答していることからも、おわかり頂けると思います。

教育現場の現金集金作業の苦しみ

コロナにより消費者のキャッシュレスマインドが広がる一方、緊急事態宣言下でも運営を続けてきた公教育機関、特に保育施設は、深刻な課題に直面するようになりました。コロナ禍以前から、共働き世帯の増加に伴う保育ニーズの高まりの中で、人材不足の保育の現場は、現金・封筒による集金作業の負荷が課題になっていました。それに加え、コロナによる消費者と教育現場の衛生意識の高まりが、追い打ちをかけるようになりました。しかし、公教育機関はデジタル化の恩恵を受けられておらず、エンペイは"現場の救世主"として、この課題を解決し、コロナ禍においても急成長を続けています。

現在では、保育施設のみならず、小中高の学校、学童、塾など同じく現金集金のペインが高まる中、エンペイへの引き合いは強くなっています。

インダストリーSaaS×Fintechの可能性

エンペイは、教育市場をターゲットとした請求・集金管理の"バーティカルSaaS"とキャッシュレス決済の”Fintech”を組み合わせたサービスです。この「バーティカルSaaS×Fintech」は、ソフトウェア先進国のアメリカで、注目を集めているビジネスモデルです。

米トップティアVCの1つであるAndreessen Horowitzは、「Fintech Scales Vertical SaaS (フィンテックがバーティカルSaaSを拡大させる)」で下図の通り、バーティカルSaaS×Fintechがソフトウェア市場を大きく拡大し、新たな潮流となっていると解説しています。理由としては、1)Fintechを組み合わせることで、ユーザー1人当りの売上は、通常のSaaSに比べ、2-5倍拡大し、2) SaaS単体では市場規模(TAM)が小さすぎたり、顧客獲得コスト(CAC)が高すぎた産業分野にまでSaaSの染み出す余地を広げたからです。

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その他に、ソフトウェア分野に強い米トップティアVCであるBattery Venturesも、最新のソフトウェア市場レポート「Software 2021」で、急成長を遂げる上場企業のShopifyや上場間近のService TitanやToastといった、アメリカを代表するバーティカルSaaS企業による、SaaSとシームレスにつながった決済や融資などのFintech(下図)を注目トレンドの1つに挙げています。

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またこのトレンドの面白い点は、従来米国のソフトウェアトレンドは10年前後遅れている来ると言われる中、コロナを契機として、日本も含めて世界同時多発的に起こっている点です。今後、日本でもエンペイのような、"バーティカルSaaS×Fintech"スタートアップの数が増加し、躍進が期待されます。

なぜDNXは投資したのか?

ここまで、国内外のトレンドや顧客業界の課題について解説してきました。確かにDNXの投資を決めた背景には、コロナを契機としたキャッシュレス化の追い風や、それに伴うエンペイの目覚しい事業成長もあります。しかし、実際には、そこがメインの理由ではありません。これらの点以上に、我々がエンペイを評価した3つの理由について、解説させて頂きたいと思います。

理由① 市場を知り尽くした最強チーム

まず1つ目の理由は、SaaSとFintech、教育市場を知り尽くした最強チームの魅力です。創業者の1人の森脇CEOは、前職のリクルートマーケティングパートナーズで、保育業界特化SaaS事業「キッズリー」のファウンダー兼事業責任者として、エンペイ共同創業者の田野CTOと共に、2019年の売却まで同事業をリードしてきた、いわば「保育業界とSaaSを知り尽くした」創業チームです。また、森脇CEOはリクルート時代の同僚や上司の方々にお話を伺い、その人柄の温かさに加え、事業や顧客に対する圧倒的な思いや仕事ぶりから、周りから一目を置かれた方でした。私も初めてお会いした時、森脇CEOの人柄の素晴らしさ、顧客や社会への熱い熱量と事業への確固たる自信に、一瞬で魅了されました。

創業者二人の魅力から、エンペイは、前職リクルートの元同僚の方々を中心に、Edtech、Fintech、SaaSに精通した超精鋭チームができていました。これが、我々がエンペイに惚れ込んだ最初の理由です。

理由②お客様のプロダクトへの愛とチームへの信頼 

2つ目の理由は、お客様からのプロダクトへの愛情と、エンペイへの高い信頼です。投資検討の中で、10名ほどのお客様/パートナー企業の方にお話を伺いました。その中で、印象的だった話を2つほど紹介させて頂きます。

1つ目は、「今までのICTサービスの中で現場の抵抗が全くないサービスは初めてだった」、「エンペイは無くてはならないサービス」と言った声など、すべてのお客様から、プロダクトへの強い愛情を感じられたことです。またその結果、複数のお客様から、他のお客様への口コミでの紹介(リファーラル)も起こっていました。このプロダクトの素晴らしさは、ローンチ以降、”チャーンゼロ”、"アクティブ率100%"という驚異的な数値からも裏打ちされています。これも一重に、現場を知り尽くし、徹底したお客様視点を持ったエンペイだからこそ成し得ることだと思います。

2つ目は、森脇CEOへのお客様からの絶対的な信頼です。お客様からお話を伺った際に、お客様から「森脇さんのためなら喜んで協力させて頂きたい」、「キッズリー時代から、この旧態依然とした業界を変革してくれて、森脇さんには本当に感謝している」と言った声が複数ありました。このことからも、森脇CEOを筆頭に、エンペイの皆様がお客様に真摯に向き合ってきたことが、非常に印象深かったです。

理由③「ビジネス=社会に貢献する存在」

最後の理由は、"お金の流れを円滑にし、幸せな社会を創造する"という強いビジョンを実現するために、シード期から社会貢献活動を会社として積極的に行っていたことです。森脇CEOは「社会の公器として、エンペイは社会に貢献する存在でありたい。我々のような小さな会社でも、できることはあるのではないか。」と考え、エンペイの決済流通額の一定割合の金額を、子育て支援NPO大手フローレンスに寄付する取り組みを行っています。

"エンペイが成長すれば、同時に社会貢献になる"

この取り組みの素晴らしさも然ることながら、エンペイ経営陣のビジョンへ真摯に向き合う姿勢も、DNXが投資を決めた大きな理由です。

エンペイ創業者兼CEO 森脇氏のコメント:

シリーズAのリード投資家として、DNXさんにご出資頂いたこと大変光栄に思います。
弊社ビジョンへの強い共感、事業や経営に対する深い造詣、起業家に対するリスペクト、紳士で丁寧なコミュニケーション、DNXさん全てのメンバーのお人柄、投資先の支援など、心から信頼と尊敬に足る方々に巡り会えたと感じています。素晴らしいご縁と機会に心から感謝しております。
キャッシュレス、DXは社会からの要請で不可逆です。DNXさんからグローバルでのケーススタディやBtoBSaaSのケイパビリティなどを学ばせて頂きながら、一緒に社会に大きな価値を届けて参りたいと思います。

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メディア掲載

4月1日には、日本経済新聞電子版、DIAMOND SIGNAL、The BRIDGE、TechCrunchなどのオンラインメディアにて、本資金調達のニュースを取り上げていただきました。ぜひ合わせてご覧ください。

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エンペイの社会を変える壮大な挑戦は、まだ始まったばかりです。我々DNX Venturesとしても、エンペイの皆様の思いを実現すべく、全力で支援していきたいと思います。

エンペイとの事業提携や採用、出資にご興味がある方は、ぜひお気軽にDNXまでお問い合わせください。

(文:湊 雅之)


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