見出し画像

新規投資|コミューン:現代の勝つ企業に必要な「コミュニティ」の力

DNX Venturesは、コミューン株式会社(以下、コミューン)にシリーズAラウンドのリード投資家として、UB Venturesと共に出資させて頂きました。コミューンは、企業と顧客、顧客と顧客をつなぐ熱量の高いコミュニティのノーコードでの作成、運営を支援するSaaSツールを提供しています。

本稿では、なぜ我々DNX Venturesが彼らの描く「コミュニティによる企業の顧客接点改革」のビジョンに共感し、いかに今回の投資に至ったか、についてお話したいと思います。

いま注目される「コミュニティ」の力

全ての企業にとって、製品・サービスの熱狂的なファンがいることは理想の状態だと言えます。1990年代後半のコンシューマ・インターネットの出現以降、消費者がメディア発信や口コミを集めるなど、「情報」の力 を獲得したため、その重要性は増してきました。2018年の消費者庁の調査によると、ソーシャル・メディアなどの情報を重視する消費者は全体の8割を超え、よりパーソナライズされた製品・サービス、そして購買体験自体を重視するようになりました。米国トップVCのAndreessen Horowitzは、この変化をPassion Economy-熱狂の経済-と表現しています。この経済全体の変化により、「顧客の変化を迅速に捕らえ、適応する力」が、現代の勝つ企業の要件として求められるようになりました。

この変化に企業が適応するために注目されている手法が、「コミュニティ」です。コミュニティは、企業の製品・サービスに共通の関心を持つ顧客同士を結び付け、顧客のロイヤリティを高めることを目的に運営されますが、その効果は多岐に渡ります。マーケティング目的の口コミなどの需要喚起のみならず、顧客同士による課題解決を促進するカスタマーサクセス(CS)、顧客の声の製品・サービス開発への素早い反映の実現などがあります。つまり、コミュニティは、サイロ化させた企業内の組織を、顧客を起点で結びつけ、顧客エンゲージメントを高めるプラットフォームとも言えます。

例えば、アウトドア用品大手のSnow Peak社は、年20回ほど、経営陣・社員がSnow Peakユーザーと一緒にキャンプをする「Snow Peak Way」というイベント等を行い、年間1万5000人が参加しています。ソーシャルメディアのフォロワー数は42万人を超え、2017年までに10年間で売上10倍という驚異的な成長を遂げました。

画像1

Snow Peak社HP「Snow Peak Way 2020」より抜粋

また、コミュニティは、B2C(一般消費者向け)のみならず、B2B(企業向け)においても威力を発揮します。クラウドCRM大手のSalesforce.com社が1つの好例です。Salesforce.comは、時価総額は24兆円、売上成長率約30%と破竹の成長を続ける巨大企業です。この成長を支えるのが、世界200万人にも及ぶコミュニティの存在です。コミュニティのメンバーは、お互いの課題解決を促し、イベントを実施し、コンテンツを産み出すことで、同社の有機的な成長をサポートしています。

画像3

Salesforce.com社HP「Dreamforce 2018」より抜粋

このようにコミュニティは、現代の企業の成長エンジンとして、注目が高まっています。特に人口減により市場が縮小する日本では、既存顧客との関係を強化し、LTVを最大化させるコミュニティはより重要性を増しています

コミュニティの第2の波

企業のコミュニティ活用が一般化する中で、最初に広がったのが、Facebook、Instagramなどのソーシャルメディア上のコミュニティ運営でした。ソーシャルメディアは、潜在顧客層を含め、世界中の人々にリーチできる点で優れていました。しかし、関心の薄い層も多く、カスタマイズ性の低いソーシャルメディア上で熱量の高いコミュニティ創りをすることは、企業にとって非常にハードルが高いのが実態です。また、ただでさえリソース不足のマーケティング部門やCS部門にとって、多チャネルを運営・管理するコストの膨大さも課題になっています。

その中で、コミュニティの「第2の波」として近年急拡大しつつあるのが、コミューンが提供しているような、SaaSベースで構築された自社コミュニティサイトでの運営です。企業はノーコードで簡単にUI/UXをカスタマイズでき、従来分断されていたユーザー会の開催、メルマガなどの顧客への情報提供、CSによる活用支援などの既存顧客向けの施策をワンプラットフォーム上で可能にし、より熱量の高いコミュニティ創りを可能にします。また、マーケティング部門やCS 部門は、顧客エンゲージメントの中枢システムとして、コミュニティ運営のROIを最大化することができます。実際に、我々も投資検討の中で、コミューンの顧客企業の方々と対話を繰り返す中で、顧客企業がコミューンの掲げるビジョンに強く共感し、コミューンの伴走 支援の下、熱量の高いコミュニティ創りを実現できているのを目の当たりにしました。

画像2

コミューンHPより抜粋

このコミュニティにおける第1の波から第2の波へのシフトは、EC領域におけるECプラットフォーマー(例.Amazon)から、ノーコード型ECサイト構築SaaS(例.Shopify)へのシフトとも非常に似たトレンドです。

今回の投資によせて

画像4

コミューンとDNX Venturesの出会いは、コミューン創業前に遡ります。倉林は橋本COOがGoogle在籍時代に知り合い、日本におけるスタートアップ支援のあるべき姿について議論をしていました。その後、コミューン創業後には第一回SaaS部に高田CEOと共にご参加頂き、今回のSeries Aラウンドに向けて継続的に情報交換を行っていました。そして、シリーズAラウンドの調達の際は、高田CEOのBCG時代の同僚で、コミューンと親交の深かった湊も参画しており、投資検討時は緊密にコミューンの未来について熱く議論をさせて頂きました。

ここでひとつ、コミューンの徹底したカスタマーサクセスへの姿勢がわかる、印象深いエピソードを紹介させてください。我々がコミューンのお客様にお話を伺った際、彼らの多くは、コミューン導入前、あるべきコミュニティの姿やそのインパクト設定に悩みを抱えていました。それに対し、コミューンはお客様の課題や置かれる状況を考慮し、類似企業の成功事例に基づく提案を行ったり、お客様と侃々諤々議論し、時にはお客様の社内の稟議書作りまでお手伝いしたケースもありました。また、導入後においても、お客様がコミュニティ運営で課題を感じた際に、「すぐに相談できる信頼できるパートナーであり、プロダクトの改善要望に対しても真摯に対応してくれる」というご評価も頂いていました。「同じ課題を抱える企業がいたら、コミューンを紹介したいですか?」とお伺いした際に、ヒアリングをさせて頂いた全てのお客様が即答で、「必ず紹介したい」とおっしゃっていたことが非常に印象的でした。また、「高田CEOを始め、コミューンを応援したい。」と仰る声も複数あり、コミューン自体がお客様を”ファン”にできていたことに、我々も深く感銘を受けました。

そして、一連の投資検討プロセスを通して、DNX Ventures一同も、コミューンのチームの素晴らしさ、そしてコミューンの描くビジョンに深く共感し、今回支援をさせて頂くことになりました。

コミューンが起こしている「企業の顧客接点改革」のムーブメントはまだ始まったばかりですが、コミューンが日本の企業と顧客の在り方を革新させ、彼らの描くビジョンが社会に浸透していく未来に期待しています。そして、我々DNX Venturesとしても、コミューンの今後の成長を強く支援していきたいと思います。

(文:倉林 陽、湊 雅之)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?