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新規投資|Shippio:国際物流に変革を

DNX Venturesは、株式会社Shippio(以下、Shippio)のシリーズBにリード投資家として出資参画させて頂きました。Shippioはメーカーや商社向けに、顧客(荷主)に代わり、貨物の輸出入に伴う、さまざまな貿易関連業務を担う、フォワーディングと呼ばれる国際輸送サービスを提供すると同時に、ソフトウェアによる業務効率化サービスも提供するデジタルフォワーダー(Shippioが商標登録) です。本稿では、我々DNX VenturesがShippioに投資した背景や理由をShippioの魅力と共にご紹介したいと思います。

Shippioとは?

Shippioは主にメーカーや商社を対象に、フォワーディング業務と国際輸送の業務効率化ソフトウェアを同時に提供するスタートアップです。フォワーダーという単語はあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、貨物を輸出入したい荷主と、実際にそれらの荷物を運送する事業者の間に立ち、複雑な業者手配や調整業務を引き受ける事業者のことを指します。

Shippioは主に国際物流、特に現在は海運を対象としてフォワーダーサービスを提供しています。周りを海に囲まれ物品の輸出入が必要不可欠である日本ではフォワーダーの果たす機能は大きく、既に日本では大手のフォワーダー事業者も一定数存在しておりますが、Shippioはソフトウェアにより荷主側の業務効率化も行うことで付加価値を提供する、デジタルフォワーダーと呼ばれる新しいプレーヤーです。

国際物流では荷主だけではなく、乙仲、倉庫業者、通関業者、運送業者、国内配送業者など様々なプレーヤーが業務フローに登場するので、荷主側でも大量の事務書類をメールやFAXでやり取りする等非常に非効率的な業務フローとなっており、関係者が多いが故にコミュニケーション上もブラックボックスが多く発生しています。

このような業務上のペインポイントに対してソフトウェアで課題解決を図りつつ、従来のフォワーディングサービスを提供しているのがデジタルフォワーダーと呼ばれるプレーヤーであり、米国では既にFlexportというスタートアップが時価総額$8 Billionと巨大な企業規模になっていることからも、日本でもデジタルフォワーダーは成長が期待できる領域だと考えています。


Shippioで実現できること

それでは具体的にShippioのサービス概要を見ていきましょう。従来のフォワーダーサービスに加えて、Shippioで解決できる課題は以下の通りです。

1) 本船動静の自動更新を含むスケジュールの一括管理

これまでは貨物ごとに、担当者が輸送状況を各所に電話やメール、船会社のHPなどで確認する必要がありました。コロナ禍や国際情勢の変化を受け、国際貨物の輸送遅延が頻発するようになり、スケジュール確認は担当者の大きな負担となっていました。Shippioのプラットフォームを活用すれば、本船動静を自動更新、案件ごとの必要情報一覧化が可能となり、一覧で輸送貨物全体の状況を把握・確認することができます。

2) クラウドサービス上での見積もり依頼

従来行っていた面倒なメールでの見積もり依頼はShippioのプラットフォームを活用すれば不要に。定型フォーマットから選択式で見積もり依頼ができます。見積もりにあたっては、数量・サイズ・重量に応じたコストシュミレーションもクラウド上で簡単に可能。費用項目などに質問があるときはチャット機能ですぐに確認することができます。

3) ドキュメント管理

国際貿易業務は関係者も多いことから業務を進めるにあたって多くの書類が必要となります。従来の業務ではメールやFAXなど様々な通信手段を用いて書類をやり取りし、企業によっては書類をハードで保管している場合もあります。Shippioのサービスでは業務上必要となる書類をクラウド上で保管・管理し、雑然と管理されていた書類管理業務も効率化することが可能になります。

多くの書類もクラウド上で、シップメントごとに一元管理が可能

4) コミュニケーションコストの低減

従来の業務フローでは、見積取得から発注後の納期確認など様々なポイントで荷主が何度も電話やメールでフォワーダーとやり取りしなければならないことから、膨大なコミュニケーションコストが発生しています。Shippioのプラットフォーム上では荷主とShippioがいつでもコミュニケーションを取ることができるほか、荷主が必要な情報にすぐにアクセスできるため、少ないコミュニケーションコストで業務を進めることが可能です。

「Shippio」では、国際輸送業務についての細かなやりとりをチャット上で行える

DNXが投資した理由

今回シリーズBで出資させて頂くにあたり、佐藤CEOを含むShippioのチームとは何度も議論を重ねて参りました。ここでは議論を通じて我々が感じたShippioの魅力をお伝えしたいと思います。

1) 国際物流という大きな可能性のある産業への挑戦

Shippioが向き合う国際物流という領域は、日本だけではなく世界中の国が避けては通れない領域です。日本だけを見ても非常に大きな市場ポテンシャルがありますが、テクノロジーの普及という観点ではまだまだソフトウェアによる業務効率化の余地が多く存在します。米国や欧州でデジタルフォワーダーとして既にユニコーン企業が出ていることも市場ポテンシャルの証左だと考えている一方、国際物流業務は一定程度地域性が高い業務でもあるので欧米スタートアップにとって日本市場への参入障壁は高く、日本市場でデジタルフォワーダーとしてのリーディングポジションを築いているShippioの可能性は相応に大きいと期待しています。

2) 佐藤CEO含めた強靭な組織

Shippioは多様性に富みながらも強靭なカルチャーを持つ組織です。ビジネスサイドではスタートアップ、商社、フォーワーダー、メーカーなど様々なバックグラウンドを持ったメンバーが集まっているほか、テック企業としてエンジニアメンバーの採用も進めています。どのような組織やカルチャーが作られているかは出資にあたっての一つのポイントでしたが、実際に佐藤CEOの強烈なビジョンに惹かれて素晴らしいメンバーがShippioに集まっているのを目の当たりにし、スケールできる強い組織であることを改めて感じました。

3) これまでのトラクション

Shippioの佐藤CEOとは三井物産のアルムナイネットワークの縁でシード期から出資のご相談は受けておりましたが、改めて今回出資のご相談を受ける中で着実にトラクションを伸ばしてきていることが非常に印象的でした。創業当初からのビジョンをぶらさず、着実に組織と事業の開発を進めてきた佐藤CEOの経営手腕があれば、更なる成長をドライブしてくれるものと期待しております。


佐藤CEOからのコメント

DNX Ventures Managing Partnerである倉林さんとお会いしたのは企業直後の2016年6月頃でした。当時はまだ構想しかなく、その後も色々な場面で相談を続けてきました。そんな中で、今回シリーズBでリード投資家としてご参画頂けるということになり、これまでの経緯もよく知って頂いているDNXチームと一緒に事業開発に取り組んでいけることが大変嬉しく、また心強いと感じています。今後は、これまでデジタルフォワーディングで積み上げてきた顧客の皆様が更に生産性をあげていけるような サービスの展開も視野にいれており、DNX VenturesがSaaS領域で培ってきた知見もフルに活かしながら、日本の国際物流の未来を作っていきたい、それを通じて社会に貢献していきたいと考えております。
—— 株式会社Shippio代表取締役 佐藤 孝徳

Shippioが対峙している国際物流領域はテクノロジーの活用という観点ではまだまだ黎明期であり、これからShippioが更なる成長を進めるにあたっても様々な困難が待ち受けていると思います。佐藤さんの国際物流領域をアップデートする意志の強さやチャレンジャーマインドは、まさにDNXが起業家に求めるものと合致すると強く感じて今回出資をさせて頂きました。今回調達した資金を活用してさらに組織及びサービスに磨き込みをかけていくShippioを、我々DNX Venturesも応援していきたいと思います。

(文:小澤 祐介)


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