高性能配列解読による費用効果の高いマイクロサテライトの分離とジェノタイピング(Krehenwinkel et al., 16 Sep 2019)
抄録:高性能配列解読(HTS)は,集団遺伝学や血統解析のための遺伝マーカーを迅速に単離するための貴重なツールとして登場した.RAD(Restriction-site associated DNA)シークエンシングやハイブリッドキャプチャーなどのHTSベースのSNP(single nucleotide polymorphism)ジェノタイピング〔ある個体のDNA配列をDNAシークエンス解析などによって識別し,他の個体のDNA配列や基準となるDNA配列と比較することによって,遺伝子型の違いを検出する方法〕・プロトコルでは,あらゆる非モデル生物から数千のマーカーを単離することが可能である.しかし,これらのプロトコルは比較的手間と費用がかかり,結果として高いマーカー密度が常に必要というわけではない.HTS技術はマイクロサテライト〔細胞核やオルガネラのゲノム上に存在する反復配列で,とくに数塩基の単位配列の繰り返しからなるもの〕マーカーの単離とジェノタイピングのプロセスも大幅に簡略化したため,我々はSNPジェノタイピングに代わるコスト効率の良いシンプルな方法としてマイクロサテライト・マーカーを開発する.我々は,遠縁の7種のクモ(ナガコガネグモArgiope bruennichi (Scopoli, 1772),Larinia jeskovi Marusik, 1987,Oedothorax retus (Westring, 1851),Pisaura mirabilis (Clerck, 1757),Australomisidia ergandros (Evans, 1995),Cheiracanthium punctorium (Villers, 1789),Theridion grallator (Simon,1900))の低カバレッジ・ゲノム配列データを紹介し,マイクロサテライト分離におけるHTSの有用性を示す.また,ハワイのニコヤカヒメグモT. grallatorのマルチプレックスPCRアンプリコンからマイクロサテライトをジェノタイピングするための簡単なイルミナ・アンプリコン・シーケンス解析のプロトコルを紹介する.我々は,様々な研究課題に対するマイクロサテライトの使用の利点と欠点について議論し,ニコヤカヒメグモのリピート座の予想外の速い減衰と獲得に注目した.
Krehenwinkel, H., Meese, S., Mayer, C., Ruch, J., Schneider, J., Bilde, T., Künzel, S., Henderson, J. B., Russack, J., Simison, W. B., Gillespie, R., Uhl, G. Cost effective microsatellite isolation and genotyping by high throughput sequencing. The Journal of Arachnology, 47(2), 190–201.
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