見出し画像

コガネグモ属の複数の種Audouin, 1826(鋏角亜門:クモ目:コガネグモ科)の化学感覚足根端孔の超微細構造体(Müller et al., 07 Oct 2020)

抄録:化学的コミュニケーションは脊椎動物や昆虫で集中的に研究されているが,クモの感覚世界については,このグループの自然選択や性選択において化学的キューが重要な役割を担っているにもかかわらず,比較的知られていない.昆虫では,嗅覚は壁孔,味覚は先端孔の感覚子で行われる.クモは先端孔の感覚子しか持たないため,どのようにして嗅覚を果たしているかは不明である.我々は,オスがメスの性フェロモンで誘引されることが知られている,旧北区の普通種であるナガコガネグモArgiope bruennichiの毛状先端孔感覚子の超微細構造を精査した.また,その近縁種であるArgiope blandaについても調査した.本研究では,先端孔の感覚子が雌雄によって異なるかどうか,また,遠位部のみが基質に接触する歩行脚の足根にどのような依存するかについて検討した.我々は、まだ発見されていない、味覚と嗅覚の機能を示唆する超微細構造の差異を仮定した。その結果,両種のすべての足根先端孔感覚子は、接触型化学受容器の典型的な特徴である (a) 感覚子の先端に先端孔があり,(b) 細長く枝分かれしていない樹状突起を持つ2-22個の単方向化学受容細胞が先端孔まで達しており,(c) 2つの統合された機械的受容細胞で,短い樹状突起と大きな管状体が感覚軸の基部に付着し,および (d) 感応軸を柔軟にする宙ぶらりん(サスペンション)繊維を備えたソケット構造体を示す.新たに発見された3番目の機械的受容細胞は,小さな管状体で樹状突起周囲軸円柱の近位端に付着しており,これまでの研究では見落とされていた可能性が高い.足根の先端孔知覚細胞の構成は,足根の位置による違いも,雌雄の違いもなかった.また,壁孔感覚子は検出されなかったことから,クモの味覚と嗅覚は1種類の感覚子で行われている可能性について議論した.

Müller, C. H. G., Ganske, A.-S., Uhl, G. 2020. Ultrastructure of chemosensory tarsal tip-pore sensilla of Argiope spp. Audouin, 1826 (Chelicerata: Araneae: Araneidae). Journal of Morphology, 281(12): 1634–1659.

https://doi.org/10.1002/jmor.21276


この記事が参加している募集

#学問への愛を語ろう

6,256件

#生物がすき

1,415件

サポートを頂けますと、うれしいです😂