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カナリア諸島固有のクモDysdera silvatica(クモ綱:クモ目)の染色体アセンブリは,鋏角類における化学受容体遺伝子ファミリーの起源とゲノム構造に光を当てるものである(Escuer et al., 16 Jul 2021)

抄録:本論文では,カナリア諸島に生息する夜行性地表徘徊性クモDysdera silvatica Schmidt, 1981の染色体レベルのゲノム・アセンブリを紹介する.イノシシグモ属はカナリア諸島で顕著な多様化を遂げ,その多くは栄養特化レベルのシフトに関連しており,適応放散のゲノム・ドライバーを研究するための優れたモデルとなっている.このたび,染色体コンフォメーションキャプチャー技術を用いた新しいアセンブリ(1.37 Gb; scaffold N50: 174.2 Mb)が完成し,旧バージョンと比較して4500倍以上の連続性の向上が認められた.この7つの大きなスカフォールドは,全体の87%を占め,おそらくこの種の核型の7つの染色体(特徴的な大きなX染色体を含む)に対応するものである.この新しい資源の価値を説明するために,我々は2つの主要な節足動物〔ナガコガネグモA. bruennichiを含む〕の化学受容体遺伝子ファミリー(すなわち,味覚受容体と電位受容体)の包括的な解析を実施した.その結果,545の化学受容体配列がすべての偽染色体に分布し,X染色体には顕著な偏在があることがわかった.これらのうち少なくとも54%は,ファミリーの平均よりも進化的距離が著しく低い83のゲノムクラスターに局在しており,それらの多くは最近生まれたことが示唆された.この染色体レベルのアセンブリは,合一精子群Synspermiataクレードでは初めての高品質なゲノムであり,クモ類では3番目である.構造的変異,反復要素,大規模遺伝子ファミリーがクモ類の並外れた生態に果たした役割など,鋏角類のゲノムの構造と構成について洞察を得るための新しい貴重な資源となる.

Escuer, P., Pisarenco, V. A., Fernández-Ruiz, A. A., Vizueta, J., Sánchez-Herrero, J. F., Arnedo, M. A., Sánchez-Gracia, A., Rozas, J. 2022. The chromosome-scale assembly of the Canary Islands endemic spider Dysdera silvatica (Arachnida, Araneae) sheds light on the origin and genome structure of chemoreceptor gene families in chelicerates. Molecular Ecology Resources, 22(1), 375– 390.

https://doi.org/10.1111/1755-0998.13471


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