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性的共食いをするクモであるArgiope bruennichiの血縁認識の手がかりとなる家系固有の化学物質プロファイル(Weiss & Schneider, 04 Aug 2021)

抄録:血縁者を認識する能力は,協力や利他主義,さらには近親交配の回避に重要である.脊椎動物や昆虫では血縁認識機構に関する多くの研究が行われているが,他の節足動物ではほとんど知られていない.クモでは,社会性種と単独性種でネポティズム〔訳注:血縁びいき(nepotism)〕が報告されている.しかし,交接の場面で血縁者を識別した例はほとんどなく,1つが造網性クモであるナガコガネグモ(Argiope bruennichi)のものである.ナガコガネグモの両性は,効果的な交接栓および高い性共食い率によって,最大2回の交接に制限されている.最初の交接で生き残ったオスは,同じメスと再び交接するか(父性を独占する),あるいは去って別のメスを探すことができる.交接実験では,オスは姉妹とは容易に交尾するが,血縁関係のないメスと比べて1回の短い交接で退散し,別の交接相手を探すことができることが示されている.ここでは,この行動が化学的な手がかり(キュー)に基づいているかどうかを調べた.その結果,血縁認識の手がかりとなる家系固有のクチクラ・プロファイルが検出された.さらに,検出されたいくつかの物質の相対量が家系内の雌雄間で相関していることから,血縁認識はクチクラ物質の全体像ではなく,サブセット〔全体に対する一部分のこと〕に基づいて行われていると考えられる.

Weiss, K., Schneider, J. M. 2021. Family-specific chemical profiles provide potential kin recognition cues in the sexually cannibalistic spider Argiope bruennichi. Biology Letters, 17(8), 20210260.




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