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ナガコガネグモArgiope bruennichiの組織・個体レベルのマイクロバイオーム解析で,新規の優勢な細菌共生体を発見(Sheffer et al., 19 Dec 2019)

抄録:動物の生態学的および進化的プロセスの多くは,微生物の共生に依存している.クモでは,これらのプロセスにおけるマイクロバイオームの役割はほとんど知られていない.本研究では,16S rRNA遺伝子配列解析を用いて,生息域を拡大するクモの集団,個体,組織タイプ間のマイクロバイオームを比較した.本研究は,クモの既知の内共生生物を対象とするだけでなく,異なるボディコンパートメント(脚,触肢,血リンパ,本肺,卵巣,糸腺,中腸,糞尿)全体のマイクロバイオームを特徴づける最初の研究の一つである.全体として,マイクロバイオームは集団や個体間で有意に異なっていたが,組織タイプ間では異なっていなかった.ナガコガネグモ(Argiope bruennichi)のマイクロバイオームは,新規の優性細菌共生体を特徴としており,地理的に異なる集団のクモのすべての組織型に豊富に存在し,子孫にも存在することがわかった.この新規共生細菌はテネリクテス門に属するが,これまでに命名されたすべての分類群との配列同一性が低い(85%未満)ことから,この新規共生細菌は新しい細菌クレードを形成していることが示唆された.また,子孫に共生していることから,垂直方向に伝播していると考えられる.今回の結果は,本種のマイクロバイオームの分化を形成するプロセスに光を当て,新規の優勢な細菌共生体が宿主の生物学や進化に与える影響について,いくつかの疑問を投げかけている.

Sheffer, M. M., Uhl, G., Prost, S., Lueders, T., Urich, T., Bengtsson, M. M. 2020. Tissue- and Population-Level Microbiome Analysis of the Wasp Spider Argiope bruennichi Identified a Novel Dominant Bacterial Symbiont. Microorganisms, 8(1), 8(1–15).


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