見出し画像

クモによるスズメバチ亜科のスズメバチ属およびクロスズメバチ属のギルド内捕食,およびその逆(Noguchi & Ikeda, 01 May 2022)

抄録:クモだけでなく,スズメバチ属やクロスズメバチ属,ホオナスズメバチ属を含むスズメバチ類(ハチ目:スズメバチ科:スズメバチ亜科)も節足動物食物網におけるトップ捕食者群に属している.このようにして,2つの群集の間では,潜在的な競争相手同士の殺し合いや捕食し合いを意味するギルド内捕食(IGP)が起きていると考えられる.しかし,その可能性についてはこれまで十分な調査が行われていなかった.本研究では,文献調査により,クモによるスズメバチ類(スズメバチ属,クロスズメバチ属,およびホオナスズメバチ属の各属)の捕食が観察されていることを報告した.また,造網性の大型のクモであるコガネグモ属の一種Argiope spp.がオリエントスズメバチVespa orientalisを,コガネグモA. amoenaとナガコガネグモA. bruennichiがコガタスズメバチV. analisを捕食し,Phidippus audaxがクロスズメバチ属とホオナガスズメバチ属(ヨーロッパクロスズメバチVespula germanica, Dolichovespula maculateおよびD. arenaria)を,穴居性のクモPorrhothele antipodianaがヨーロッパクロスズメバチを捕食している他,コガネグモ属の一種A. aurantiaとA. floridaがクロスズメバチ属の一種Vl. squamosaを捕獲し,Phoneutria boliviensisはクロスズメバチ属の一種Vespula sp.を捕食していた.一方,確かな種名を記述した10件の文献から,スズメバチ類がクモを捕食している事例が20件見つかった.このことから,スズメバチ類とクモのIGPは対称的であることが示唆された.また,スズメバチ類による労働寄生,スズメバチ類によるクモの巣からの脱出,クモとスズメバチ類による殺し合いの観察も知られている.クモはスズメバチ類の餌であると同時に捕食者でもあるが,対称的なIGPとしての餌-捕食関係の相互作用を定量的に明らかにするためには,さらなる研究が必要である.

Noguchi, D. Ikeda, K. 2022. Intraguild predation on hornets and yellowjackets of vespine wasps by spiders, and vice versa. Serket, 18(3), 287–298.


サポートを頂けますと、うれしいです😂