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夫婦同姓論者は何を守りたいのですか?

日本を長いこと離れていると、様々な話題に疎くなっていることがあります。
「夫婦別姓」というワードは聞いたことがありましたが、私はその本質的な意味を理解していませんでした。
先日、とある日本のネット番組を観て、いろいろと衝撃を受けました。

無知のそしりを免れないことを覚悟のうえで、正直に書きます。

「選択的」すら認めない思想がコワすぎる

そもそも婚姻時の改姓にあまり関心のなかった私は、夫婦同姓が民法で義務づけられていることを知りませんでした。

日本の夫婦別姓問題は、正確には「選択的夫婦別姓」と言うべきで、婚姻時に夫または妻が改姓するかしないかを自由に選択できる、というもの。
それが現状でしょ、と私は思い込んでいたわけです。
この問題をまったくわかっていなかったことがバレバレですね。

つまり選択的夫婦別姓に反対する人というのは、その選択の自由を認めない、とおっしゃっているんですね。
もうね、それを知った時点で私の頭はパニックしましたよ。
だってそれ、自分ではなく、他人の問題じゃないですか。

このフリップをご覧ください。

調査結果2

青いバーが、選択的夫婦別姓を認めないとする、夫婦同姓の原理主義者。
緑のバーは、「旧姓を通称として使うのは可」と言ってはいますが、「夫婦は必ず同じ姓を名乗るべき」という立場なので、青とさほど変わりません。

青と緑を足すと、なんと 50%以上の国民が夫婦同姓論者ですって?

いやいやおかしいですから!

「出典:法務省」なので、統計のウソやマジックがあるのかもしれませんが。
年齢別・男女別のデータも知りたいところですが、想像するに、中高年以上に夫婦同姓論者が多いんじゃないかな。

中高年男性の言い分(想像)
一家を構成するメンバーは全員同じ姓でなければならない。でないと、家長としての父親の権威が保てない。
中高年女性の言い分(想像)
自分もかつて結婚して姓を変えたとき、面倒な手続きで苦労した。これから結婚する人たちも同じ苦労を味わうべきだ。

やっぱり日本だけの制度だった

重要な点なので強調しておきます。
“選択的” 夫婦別姓ですから、それが導入されたとしても、自分は夫婦同姓を選択してもいいわけです。選択的夫婦別姓すら認めない 50%以上の国民は、自分以外の他人が夫婦別姓を選択することに “No” と言っているのです。

これは、ベジタリアンの人が日本国民全員に「肉を食うな」と言ってるようなものです。
(すみません、脳が混乱しすぎて、良いたとえが思いつきません)

他の国の状況を見てみましょう。

国際比較2

まず、文化・歴史的に日本に近いと思われる中国・韓国・台湾が夫婦別姓、というのが意外です。
フランスが夫婦別姓なのは、さもありなん、という気がします。
それ以外の欧米諸国は、選択的夫婦別姓です。
ヨーロッパの中でもとくに民度が高いと思われるオーストリアとスイスが、選択的夫婦別姓を導入したのはわりと最近、というのがやや意外でした。
王族がいて仏教国、日本と親和性の高そうなタイのが先に導入しています。

これを見て、夫婦同姓論者の新たなプロファイルが加わりました。

ナショナリストの言い分(想像)
夫婦同姓は世界で日本だけが持つ特別・固有の文化。他国が選択的夫婦別姓を導入しているからといって、軽々しく追従すべきではない。

苗字の歴史はたったの 150年しかない

姓=苗字=氏ってなんだろう。
日本人の姓は、いつどのようにして生まれたのでしょうか。
日本人の苗字の歴史を見てみましょう。

苗字の歴史2

1870年、明治維新政府が苗字を自由化したのが姓の始まり。
ご存じだった方も多いと思いますが、江戸時代までは平民に苗字はなかったんですね。

次に重要なポイントは 1875年。
苗字を持つことが義務化され、原則として変更不可となります。
徴兵を行うのに都合が良かったから、だそうです。

おもしろいことに、翌 1876年には、夫婦別姓を原則としたようです。
その 20年後の 1896年、明治民法が制定され、夫婦同姓が原則となりました。
明治維新の 28年後、今(2022年)から 126年前のことです。
私の感覚では、祖父が生まれた頃、ということになります。

さて、当時の民法が夫婦同姓を原則化した目的は不明ですが、「家」制度とかいうのがキーワードだったことが薄っすらと推察されます。

そこまで考えて、ようやく見えてきました。
夫婦同姓論者は、「家」という制度、「家」という概念を守りたいのかな。
自分の家だけでなく、日本国じゅうのすべての「家」を守りたい。
何のために?
そうか・・・「国家」か。
国に家と書いて「国家」。つくづく、おかしな日本語だと思っていたけれど。
日本という国は、皇家を頂点とする大きな「家」なのかもしれません。
夫婦別姓を認めてしまうと、「国家」の基礎単位たる「家」というシステムが揺らぐ、と考えているのでしょうか。

だとしたら、もう遅いでしょーが。
現在の日本で、「家」なんて概念、とっくに崩壊してるじゃないですか。
東京などの大都市に人口を一極集中させ、地域社会をぶっ壊し、会社員を働かせまくり転勤させまくり、様々な格差・貧困・少子化を放置してきた。
そういう社会を作ってきたのは誰ですか。

大切なことなので、何度でも言います。
選択的夫婦別姓に反対することは、他人の人生に対する干渉であり、自由権の侵害です。
これから結婚する人たちには、もう好きにさせてあげませんか?

ついでに申し上げると、戸籍なんてやつも全くの不要物だと思います。
再婚するたびに戸籍ロンダリングしている私が言うのはおかしいでしょうか。
いいえ、転籍が簡単にできると知っている私だからそう思うのです。
日本の戸籍制度は、外国人を差別するツール以外の何物でもありません。
いまだに戸籍制度を残している国は、日本と中国くらいです。

あなたは、アカの他人が結婚して改姓するかしないか問題に干渉したいですか?
そこに干渉する人をどう思いますか?
国民の半数以上が干渉したいと言っている(らしい)現状をどう考えますか?