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鉄の塊を見せびらかして楽しいですか?

妻が風邪で寝込んでいるため、今週は私が 2人の娘を学校へ送り迎えしていました。
娘たちが通う学校は、International School of Geneva という、世界で最初にできたと言われるインターナショナルスクールです。
この学校には、私たちのようなごく普通の家庭の子女もいますが、世界各国から expat(駐在員)として派遣されたリッチなご家庭のお子様もいらっしゃいます。

Expat の生態について書いた記事です☟

私たちは、学校までトラムで 2駅のエリアに住んでいて、娘らはトラム通学しています。11歳の長女は一人でトラムに乗れる年齢ですが、6歳の次女はまだ無理なので、妻か私が送り迎えしているわけです。

長女はすでに、父親と並んで歩くことが難しい年齢に達しています。
次女は私と手をつないで歩きます。ジュネーブのまちは、香港や東京よりははるかに安全ですが、それでもクルマや自転車がビュンビュン走っていますからね。
次女と手をつないでいるとき、私は世界一の幸せ者です。
この 105センチのツンデレっ子が、私の存在を必要としている。そして私がこの子を守るんだという使命感。仕事では到底味わえない満足感です。


朝の見送りと、午後のお迎えで、毎回苦々しい光景を目にしています。
それは、学校の入り口付近で大渋滞しているクルマの大行列です。
毎日クルマで送り迎えしている親たちがいるのです。
運転席を見ると、リッチな expat のマダムだとわかります。
ちなみに、クルマはメルセデスが 7割、ポルシェが 2割といったところ。
それ以外の雑魚ザコキャラは BMW とアウディ。

この学校の駐車場にはドイツ車しか入れないルールでもあるのだろうか。
(ジュネーブはフランス文化圏です)

こんな便利な場所にある学校にクルマで来る必要があるのですか?

もちろん私はわかっています。
彼女らにとって、クルマで子女を送り迎えすることがステイタスだということ。学校が、リッチさを見せびらかす (show off) 場になっているのです。

そういうことをしたがるのは、expat ですから当然外国人です。
ロシア人、セルビア人、ルーマニア人、ウクライナ人、その他の後進諸国の人たち。
私もここでは外国人ですが、日本人はそんなバカげたコンペティションにもセレブな社交にも興味がありません。


私たちは、2013~2019年にもこのまちに住んでいて、長女は同じ学校に通っていたわけですが、メンドクサイのがお誕生日会でした。
子のバースデイに、全クラスメイトとその親を招待して盛大なパーティーを催すのです。
もちろんプロデュースするのは親で、これも “show off” 行動の一つです。

例えば、カザフスタンから来ている expat が、6歳になるご子息のお誕生日パーティーをジュネーブで最も高級なカザフスタンレストランを借り切ってド派手に開催しました。私たちも含めすべての親が招待されました。そんな胃の痛くなるようなイベントが隔週ペースで発生するのです。


高級車に乗ることへの憧れがわからないではありません。
ただ、私にとってそのテの俗物根性は 20代かせいぜい30代前半で卒業していることです。
クルマだけでなく、高価な腕時計なども類似のアイテムです。
それらは、私が 20代だった頃に、40代のオジサンらが競って手に入れようとしたステイタスシンボルであり、今の私にはカッコ悪いものの象徴でしかありません。高級車も、高級腕時計も、昭和な価値観の産物だと思います。

ステイタスを見せびらかす行為は “卑しい” ものです。
ポルシェに乗るのはいい。しかし、それは子が通う学校で見せびらかすためではない。

人が四六時中電話機を見ている現代において、腕時計は装身具です。
装身具は、スタイルを楽しむものであって、ステイタスを誇示するものではありません。

“モノ” に執着する態度もまた、一時代前の遺伝子の残滓だと思っています。
不要な需要を喚起してくるサプライサイドにも問題があるのでしょうけど。
6歳の次女はモノを欲しがるけど、11歳の長女はモノに興味を示しません。
モノへの執着は、人の成熟度と反比例するのではないか。


このまちもクルマだらけだなぁ、とウンザリします。
私は、クルマを根絶したいとまでは思いません。多くの地域では、クルマは生活必需品だし、クルマで旅するのはいいものです。

だれが悪いのでしょうか?
都心へのクルマの侵入を許したまちの設計、そんなまちをつくってきた行政と大企業。
徒歩や公共交通機関でアクセスできる繁華街にわざわざクルマでやって来るクルマ脳な人たち。
クルマをステイタスシンボルとしてブランディングしてきた自動車産業。

私は高級車など要らない。
街中で人が歩くそばを鉄の塊で走りたいとも思わない。
次女のさとと手をつないで歩く通学路が人生最高の宝物なんですよ。

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