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男たちよ。艶っぽく生きようぞ

女たちの本音

女性の本音を聞くのが好きです。
例えば、どんな男が好きか、どんな男に色気を感じるかなどを率直に話してくれる女性との会話は楽しいものです。
私は、今までお付き合いした女性から、このテの本音を聞くたびに、何度も驚かされてきました。

私が 20代のときに結婚していた女性(当時27歳)は、ある高名な作家の愛読者でした。彼女は、この人に抱かれてみたい、と言いました。
その作家は、当時すでに故人で、彼女の愛読するシリーズを書いていたときは 40~50代でした。時代小説だけでなくエッセイなども書いた、昭和の粋を体現しているような男で、彼女の言うことがわからなくはなかったけれど、にしても渋すぎるだろ、と思っていました。

30代のときに交際していた女性は、ある歌舞伎役者について言いました。
その役者はチャラい系で、いくつもの浮名を流していましたが、私にはどこがいいのかよくわかりませんでした。
彼はモテるでしょう、と彼女は言いました。
え? 全然美男じゃないし、ヤンチャそうでイラっとするし、歌舞伎役者ってだけだろ、と言うと、彼女は言いました。
「ああ見えて、不器用で一途いちずでやさしそう。何があっても絶対守ってくれそうな気がする」

会ったこともない男にそこまで言い切るか?と思いつつ、女が男を見る目は、私ら男どもには計り知れない「なにか」がある、と感じていました。

三船敏郎と織田裕二

『椿三十郎』のリメイクを織田裕二が演る。

当時それを聞いたときの私の半笑いをどう表現したらいいだろう。
こんなセリフが脳裏をかすめました。

月影2

きっと私はこう言いたかったのでしょう。
「お演めなさい、裕二」

その頃、息を吸うように出張ばかりしていた私は、機内で観る映画が底をついたため、ついそれを観てしまったのでした。

織田裕二の努力に驚きました。
三船の椿三十郎を研究し尽くしておるよ。
オリジナルの『椿三十郎』を 100回くらい観たんじゃないだろうか。
三船敏郎のそれと寸分違わぬ動き、口調、間。

でもね。
私の評価は 0点なんです。
だって全然椿三十郎じゃないんだもん。
どれだけ研究したって、そっくりマネたって、三船のミの字も感じられぬ。

体のつくりが違う。
重心の位置が違う。
着物の着方が違う。
シルエットが違う。

三船の椿三十郎が放出していた獣のオーラがない。
体じゅうからむせ返るように匂い発つ色気がない。
刀身が鞘に納まっている織田。いつでも「抜き身」の三船。

ある意味で完璧に演じているだけに、痛々しかった。
織田裕二が悪いんじゃない。
でも、ムリなもんはムリなのよ。

椿三十郎は「もうすぐ 40」という設定でした。
三船敏郎が演ったのは 42歳。
織田裕二が演ったのは 40歳。
演じた年齢はほとんど変わりませんね。
現実世界でも、男の 40と言えば、まだオスとしての機能もヤル気も衰えていないものです。
フシギですが、まだまだあっちのほうが現役っぽい織田裕二に色気がなく、そんなものからとっくに引退してるっぽい三船の椿三十郎に色気がムンムンしているのです。

情事をやめても男はやめるな

昔、カルーセル麻紀という人が、こんなことを言いました。
「男は生涯ハンターだと思うわけ。それやめちゃったら魅力ないわ」

まだハンターにすらなっていなかった 10代の私は、彼女(彼?)の言葉に、ざわざわしました。
いい女(男?)だな、と思ったのです。

ハンター? 狩人?

あずさ2号

17歳に見えねぇ・・・。

そんな大昔のカルーセル麻紀氏の言葉を、今の私が解釈するとですね、女も男も色気を失ってはいけないってことなのかな、と。

男の色気ってなんでしょうか。
女性から聞くのが一番なのでしょうが、じつはそういう態度がよろしくないんじゃないかと思いましてね。

男には、女たちの視線ばかり意識して生きている時期がありますよね。
独身のときはたいていそうだし、妻帯者となってからも、やっぱりモテたいし、あわよくばと秘かに妄想するのが男という生き物です。
だから、身だしなみや服装にも気を遣うし、女性を前にすると緊張したりします。

あるときを境に、そういったことをやめてしまう時期が来ますよね。
年齢やきっかけは人それぞれでしょう。
カルーセル麻紀さんの言葉を借りるなら、「ハンターをやめる」
そりゃね、「生涯ハンターでいなさい」てのはこの人だから言えるんであって、普通の男にはムリですよ。
でもね、“男” であることをやめてはいけない、と思うんです。

カルーセル麻紀2

意味が違います。

女にモテるためにかっこつける時代を卒業したら、女に関係なくかっこよく生きる時代へ移行するべきです。
冒頭に挙げた作家や歌舞伎役者も、三船が演じた椿三十郎も、女にモテようとしていないんですね。女たちの視線を感じることなく、色っぽく生きている。男の色気とは何かなど、女性たちに教えてもらうことではないのです。

女にモテるためではない。
なら、何のためにかっこよく生きるのか。
自分の中でつくられてきた美学を貫くため、とでも申しましょうか。
例の 3人の生き方をイメージすると、
1) 好きなことをして自由に生きている(作家)
2) 天職にストイックに打ち込んでいる(役者)
3) 慧眼と義侠。気まぐれで人助けする(浪人)

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こんな男たちからは色気があふれ出てしまうのでしょう。

揺るぎない真善美こそあなたそのもの

私が見てきた、色っぽくて、つやっぽい男たちです。

大川3

高橋2

山崎2

時代劇ばっかじゃねーか!

昭和の大スターがかっこいいのは当たり前なんですけどね、シビれるのは、役の中での男振りです。
彼らが演じた男たちの特徴を抽出してみました。

✅ 人の機微を敏感に察知する
✅ しかし、それをオモテに出さない
✅ 女子供にさりげなくやさしい
✅ しかし、妻以外の女に興味を示さない
✅ 窮地で出てくるユーモアと大胆さ
✅ じつは、シャイでお茶目
✅ 生涯を捧げる使命を持っている

チャンバラの世界だけの話ではないようで。
現実の世界にもいますよね。つやのある男性。
髪とか肌とか唇とかの話ではなく。
生き様、立ち居振る舞い、表情、目、声、そして言葉。
ありゃいったい何なんでしょう。

生き方を変えよう、みたいな話をしたいのではありません。
数十年生きてきた人には、必ず何らかの審美眼があるはずです。
あなたらしい、あなたならではの、人の性質や行動に関する美学です。
何が真で、何が善で、何が美か。
それは揺るぎないものですよ。それを正と信じて、あなたの個性として認定してあげましょうよ。
自信をもって、あなたの中で培われてきた真善美に従って生きていけばいいんじゃないかな。

何がかっこよくて、何がかっこ悪くて、どんな人間が好きで、どんな人間が嫌いで、何が大切で、何が許せなくて、何が自分らしくて、なぜ自分は生きていくのか。
一つの解などない。あなたがすでに装備しているものがあなたの正解なんだと思います。

男の敵はたいてい男たちですよね。
近頃は、オアシスだった女たちまで敵性を帯びてきて、男の周りは敵だらけ。それで去勢されたようにしおれてしまう人もいるでしょう。
でも。思い出してほしい。
そもそも、周囲敵だらけの中で生きていくのが男だったんじゃないの?
「生涯ハンター」ってそういう意味もあったんじゃないかな。
そこまで思い至ると、本稿で列挙してきた男たちの艶っぽい佇まいがストンと腑に落ちるのです。
彼らはなぜ艶っぽいのか。
迷いがないからです。
敵に囲まれてもビクともしない。
どんな苦境に立たされても切り抜けられると思っているから。

女たちが輝いてきた今こそ、我々男たちはつやっぽく生きたいものです。


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