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【6月LDLバディ対談】木下所長著作者のリアルを行っている方〜バディ畑克敏さん〜

LDL(Locally Driven Labs)とは、継続的なオンラインコミュニティを作り、アウトプットまで持っていくことを目的にしたラボです。詳しくは下記をお読みください。

■ 畑さんってどんな人?

ご出身は兵庫県丹波市で、黒豆の産地としても有名な地域です。大学では東広島市にある近畿大学で建築学科を専攻し、大学院まで進まれました。その後、都内の建築設計事務所で6年半の勤務経験を積まれ、その後東洋大学の理工学部建築学科で3年間、助手としてご活躍されました。助手の立場である一方で、独立して設計事務所を運営されていました。

■ ではなぜ?岡崎市に?

QURUWA戦略(=乙川リバーフロント地区公民連携まちづくり基本計画)の前身である、乙川リバーフロント地区整備基本計画という、国、岡崎市が多額の予算を投じる地区整備事業がスタートする話があり、地域住民のヒアリングをするためにワークショップに縁あって、初期メンバーとして関わることになったそうです。そのまま3年くらいは、ワークショップや情報発信を行い、その流れでQURUWA戦略の素案を市と一緒に作ったりと忙しい日々を過ごしていらっしゃったそうです。
QURUWA戦略のエリア岡崎市乙川周辺にくるわという地区はなく、各拠点を「Q」の字で結び、「QURUWA」という名前になったそうです。
3年が経過して、岡崎市で民間のプレイヤーを増やしていかないと戦略自体が進まないこと、このエリアで足りない、お店を作ることで、衰退していたまちを設計の力で計画的に変えていきたいことに気付いて、メンバーの一人が純粋な岡崎出身で、他のメンバーは他の地域からの同い年4人で建築設計から運営・管理を行い、まちづくりを行うstudio36を立ち上げられたそうです。

■ え?これは木下所長の読んだ本がデジャブしてる…笑

店舗を貸してくれるオーナーさんをご紹介いただき、その建物をリノベーションして、お店をやりたい人を探すという業務内容です。ここで私は、「これは、木下所長が書いた本『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』を実践されている方」だと頭をよぎりました。本でも主人公が苦労している姿が描かれていましたが、リアルに行っている方と本を重ねながら話を聞いていました。

■ QURUWA戦略に携わって実践していること

岡崎市の事業に携わってから、公益性をずっと意識してて、民間企業であれば収益性がなければ継続できないので両立させることが課題になっています。低予算で関わってもエリアが変わって、育っていくなら、収益が低くても積極的にやっていこうという姿勢でやっているそうです。その中の実績として、山梨から移住してきた方がオーナーで設計と施工を携わった、全6室の完全個室のマイクロホテル「Okazaki Micro Hotel ANGLE(アングル)」を2019年6月にオープンされたそうです。今の観光は物見雄山的なものですが、アフターコロナ以降はエリアに訪れて、その地域の日常を自分で感じてもらえるような、観光から「感光」という造語を作り、暮らしを見て、感じてもらえる案内所というコンセプトでホテルを作られたそうです。ですので、ホテルのエントランスは宿泊施設と直接の関係が薄くなりがちな地元の人たちも入れる交流スペース(=カフェ)になっていて、ホテルの受付をはあえて奥になっているそうです。

[※photo:岡崎カメラ]

また、ANGLEの検討と同時期の2018年末に完全予約制の美容室を始めたいという相談をいただきました。美容室を手掛けると通常は1,000万ほどの費用が必要になるところをオーナーの方が新婚で、近い将来お子さんの出産も視野に入れていることを伺い、産休を見据えた現実的な稼働率から家賃と工事を逆算して、当初の想定予算の半分(約500万)まで縮めて成約となりました。

[※photo:村山写真事務所]

工事が終わって、オープンして今も資金をショートさせずに営業いただいています。普通の設計事務所だったら工事費に対する割合で設計費をもらうのですが、今回はコストを抑えるために畑さんの取り分を削りました。自分よりも町にこういう場所がずっと残ってくれる方が大事だと思って事業に携わったそうです。

■ studio36を作ったけど、実績を作るには時間がかかった

studio36のメンバー4人はずっと飲み友達だったのですが、移住した畑さんはこの地区に誰も知り合いがおらず、移住したての頃は地域の人を紹介してもらっていたそうです。足掛け5年くらいはそんな日々を送っていて、コロナ禍に入っていきました。ロックダウン中に駐車場経営をしている地元の副総代を紹介してもらい、空き家活用に向けて遊休不動産の情報整理から始めて、3年越しにエリア内の建物の利用許可をいただきました。銀行でお金を借りて投資をし、塗装など自分たちでできることをやろうと覚悟を決めて、今年8月末の供用開始に向けて拠点づくりを進められているそうです。

■ 実績が出来ると相談も増えていき、大きな案件に繋がった

その後、鍼灸院を開業したいという相談を受けて、このエリアの空店舗を探すところから設計に携わったそうです。年に2〜3件の案件に携わる状況になって、まちにお店が増えていく好循環を生んでいる中、昨年の夏にとある大企業のビルの空いているフロアーの活用に声がかかりました。
フロアーが400平米と広く、大企業のビルということもありプロジェクトに携わるメンバーが多くなってしまうので、こちらにお任せいただくことをお願いし、プロジェクトマネージャー的な役割を担いました。
当初はベーカリーカフェが入る予定でしたが、それだけでは空きスペースが生まれてしまうので、クラフトビールを開業したいという方がいると情報を得て、話を進めることが出来ました。美味しいパンとビールを楽しみながら社内打ち合わせをしたいけど、子供がいたらゆっくり打ち合わせできないと思い、託児所が入ることで解決のではないかと考えて、近くの託児所に声かけて、入っていただくことに合意しました。

[※photo:Asuto Noda]

■ まちづくりは時間もかかるし、実際は泥臭い

まちの空き家が店舗に変わってくお話は、一見スムーズに見えますが、この背景には畑さんをはじめとするメンバーの泥臭い活動があってこそ、まちの人たちとの信頼関係を築き上げているのです。例として話されていたのは、エリアに住んで6年目に自治会主催の夏祭りで提灯が足りない相談を受けて、協賛金を集めるためにエリアを巡って、足りない部分は持ち出しまでしてなんとかミッションクリアされたそうです(※2年目から黒字)。提灯の問題を解決することでようやく町内会長さんに自分の存在を認識してもらって、頑張っていると認めてもらえるようになったそうです。

■ 元々目的地になるお店はあった

元々このエリアには、QURUWA戦略以前からカジュアルなフランス料理屋さんとかビーガン料理屋さんといったお店があって、それを目指してお越しになるお客様がいるそうです。こういった人たちに引き寄せられるように飲食店を開業したいという相談が来るようになってはいたのですが、空き店舗ではあるものの上階に住人が住んでいるので、貸すのは抵抗があるといったことが多く、困っていたそうです。

■ まちづくりの課題解決に江戸時代から存在した組織?会社名に込めた想い

そんなこともあり、今年4月に地元副総代の筒井さんとまちづくり会社「株式会社南康生家守舎」を作りました。

かつて江戸時代では町の地主は地域に対して責任を負うシステムで、地主自身がタウンマネジメントの役割も担っていたそうです。江戸の町は不在地主が多く、その代理人として家守(やもり)に長屋の管理委託をしていたそうです。側溝の整備などインフラも行っていたそうです。店子に関しても、どんな人が入っても良いという訳ではなく、この家守が審査を行い、入ってもらっていたそうです。つまりはエリアの責任を負っていた存在だったのです。さらに新たな地域に来た店子からのあらゆる面倒ごとの相談に乗っていたのです。
地主から支払われる管理料などで家計を立てながら、公共的なサービスを行い、まちを治めていたのだそうです。現代ですと行政が担っていますが、ここまで細やかで人情溢れる感じはないように感じました。
家守会社を立ち上げたことで、活用できる空き家が出たらマスターリースをされるそうです。店子をつけてリーシングを行う。地元の総代会との集まりで町内会の会長さんたちに会社立ち上げの説明を行ったそうです。

■ 再開発などの際に、相手にエリアの想いを伝えられるようになった

エリアの再開発が入ってきて、タワーマンションが2棟建つなど計画されていて、こういったプロジェクトに対抗するには、1個人だけでも地元だけでもダメなので、まちづくり会社、株式会社南康生家守舎から1階のグランドレベルは街に還元して欲しい、大型のドラッグストアなどを入れられたら困る、リーシングの責任もこちらで取るので、10坪ずつくらい小分けにして店舗を出店できるようにして欲しいという要望を出されているそうです。それでエリアの再開発を行うデベロッパーと意見交換をしながら、デベロッパーとは別で再開発の話もあるので、この会社でマスタープランを作っていて、それを一つ一つ具現化していく予定だそうです。
結果的に畑さんはこの地区の副総代(副会長)さんや総代(会長)さんと会う機会をいただき、相談いただくようになりました。そうしたことからいろいろな空き情報やこれから空くかもしれない情報が入ってくるようになり、エリアに受け入れられるようになったそうです。地区の中のある区域は建物が空き家かどうか、またその空き家の活用が進まない理由が分かっているそうです。資産相続を受けた方のご家族の意見が活用するしないで別れていたりしていることまでも把握されているそうです。
また、空き家・空き店舗に隣接する公共空間(=中央緑道、籠田公園)を会場にイベント(=「丘の途中のマーケット」)を行って、「こんな過ごし方ができますよ」ということをアピールして、エリアの期待値を上げる活動を継続されているそうです。本当に泥臭いと思いました。

■ まとめ

今回、畑さんのお話を伺って、自分の地元なら親や知人にお願いすれば、早くキーマンにたどり着いて、やりたいことや事業を開始できるものだと思っていましたが、畑さんがこの愛知県岡崎市のこのエリアに魅力を感じているからこそ、5年以上かかって地区の人たちとの信頼関係を作り、まちづくり会社を作り、ようやくエリアに年に約3軒ずつお店作りが進んでいることは、畑さんやその周囲の仲間の存在で泥臭くても前に進んでいる姿こそ、大変ではあるけれど、心から好きになったまちに暮らし、事業に携わっているんだと思いました。

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