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兵庫県豊岡市長選に見るまちづくりのテーマ性について

地方創生において町を挙げてのまちづくりはよく目にしますよね。日本全国の都市や田舎の風景は変わらない、だからこそ、全国の中から抜け出すような独自性を見つけようと苦労しているのはとても分かります。

日本をテーマパークに見立てて、各地のコンテンツがアトラクションだとすれば、それを作ろうと各地域にて躍起になっています。個人的にその考えは間違っていないと思っています。

昨年観光庁で「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」実証実験という事業が公募されました。総額は2,000億円ととても大きな事業でした。

採択された事業を見てみると、一過性で終わると思ってしまうんじゃないかと推測出来てしまう事業が目につきます。観光庁にすれば、国費を投入してでもアトラクションとして滞在コンテンツを作ってくださいという強いメッセージを感じます。そのくらい国は観光立国として取り組んで行こうという方針なんでしょう。

そんな中、4月末に兵庫県豊岡市において、演劇のまちを掲げる現職の市長が落選するということが起きました。経緯を拝見してなぜこうなってしまったのかが非常に興味深かったので取り上げさせてもらいました。

兵庫県豊岡市では2021年春に芸術文化観光専門職大学が出来たばかり、まさに芸術のまちを作るために人材育成を行う学校を開校させたばかりでした。

2019年には劇作家平田オリザさんが移住し、主宰する劇団「青年団」も市内に拠点を移した。

本文に大学の学長にもなった平田オリザさんが移住してきたことにも触れられています。演劇のまちをつくる流れとしては素晴らしいものがあると思いました。しかし、なぜ推進派が受け入れられなくなってしまうという結果になってしまったのでしょうか?

■どこまで合意形成が必要?強行してでも行うべきか?

今回の件で非常に感じることは、地域の人たちは演劇自体を否定しているわ訳ではないと思うのです。しかし、2019年から2年程でまちの代名詞になるまでになっているのか?つまりは実績が積み上げられているのかどうかです。もしかしたら、昔から生活する地域の人たちにとってはあまりにも唐突な宣言にだったのかもしれません。

神戸新聞社が実施した出口調査(1494人回答)では、演劇のまちづくりを「評価する」人は32.6%。これに対し「評価しない」(29.6%)と「よく分からない」(36.5%)が計66.1%に上り、国内外から注目される目玉施策でありながら、足元の市民の理解を得られていなかった。「置いてけぼりの気分だった」とこぼす市民もいた。
(引用)2021/4/27 神戸新聞NEXT「「演劇のまち」向かい風 推進派の現職市長が落選 豊岡」より

記事にもあるように「よく分からない」という答えが一番多いというのが唐突だったことの答えに繫がっていると思うのです。

トップダウンでこうだと言えば、住民がついていく形にはならなかった例だと思います。市議会議員が急遽出馬することになって、逆転してしまったのは、この「よく分からない」という状況に異を唱えた住民の皆様が勝ったんだと思います。

■じゃあどうすればいいのか?

もし、なにかしらテーマ性を持って、地域を盛り上げていきたいのであれば、自ら積極的な活動を行い地域に認めてもらうことが必要なのではないかと思うわけです。それがボトムアップになり、地域事業者の人たちも活用するようになる。トップダウンではやはりなかなか難しいのではないかと思います。だからこそ地域での活動も重要になるのです。たくさんのお客様に来てもらうことが目的になると、どうしても外への活動に向きがちですが、地域で何をすべきか?どうしたら地域の人たちが興味を持ってもらえるのか?外からお客様が来るようにならなければ、地域の人たちは興味を持たないし、取り組もうとも思わないし、両面を実施していかないといけないという高度な感じがしますが、取り組むのであれば必要なことだと感じています。

この辺の話は、下記記事のワールド・ビジネス・アソシエイツの丸山芳子さんのお話しが非常に分かりやすいです。アドボカシー活動が必要になるのです。

アドボカシーとは、観光地域づくりの文脈では、地域住民や行政、事業者などのステークホルダー(利害関係者)への説明、合意形成、メディアへの働きかけなどを指す概念。辞書に載っている「擁護」や「支持」からさらに広い意味合いを含んでいます。

丸山さんが事例で米国ケンタッキー州ルイビルのDMOを挙げていますが、私自身講演会でお聞きして、こういったことなのかと非常に腹落ちしました。しかし、これを実践するためには多くの共感者、協力者が必要だと感じます。ケンタッキー州のサイトを見ましたが、行きたくなります。温故知新で過去の経緯からストーリーを紡いでいる、それをコンテンツに落とし込んでいるところも非常に素晴らしいなと思いました。

地域におけるテーマ性は必要なことだと思います。しかし、さまざまなコンテンツに想いのあるプレイヤーやステイクホルダーがいて、突然この地域はこれで行きます!と高らかに宣言しても馴染みがなければやはり拒否反応をせざるを得なくなってしまうのです。実績を積み、認めてもらうためには時間がかかることなんだと思いました。まさに「ローマは一日にして成らず」という言葉が身に染みると感じたのでした。

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