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ふふふ、春。

春のにおいがする。
生ぬるくて、雨に濡れた地面とか緑色した草みたいな、もんやりとしたにおい。
なぜか妙に呼吸がしやすくなるにおいだと思う。

そろそろ本格的に春が顔を出し始めたらしい。
でも気紛れで、ひょっこり顔を出したと思ったら、にこにこ笑いながらまた隠れてしまう。
今回もまた少し寒くなるんだろう。そうしてだんだん、ちゃんと春になっていく。


ここ最近、春にいい思い出が無い。ほんっとうに無い。3〜4年分、記憶が飛んでるんじゃないかってくらい無い。
春にわたしと会って楽しい思い出作ったよって人がいたら、ドーナツくらい奢るから全て教え込んでほしい。
早くちゃんと春になってくれないかなあ、なんて他力本願なことを考える。


春のにおいって何なんだろうか。
なぜかよく覚えているのは、中学校に行く朝の記憶だ。
マンションの4階に住んでいたので、玄関を出るとそこそこ高い位置の風が吹いてくる。
ふわ、と髪を撫でていく風が生ぬるくて、自然と息を吸い込む。
あ、もんやり。呼吸がしやすい、春だ、ふふふ。そう思ったことを覚えている。
春のにおいは、少し嬉しくなってしまう。


今でも春のにおいを感じると、ついつい、ふふふと嬉しくなってしまう。
わたしは(意外に)こういう小さいところで、嬉しさや楽しさを感じるタイプだ。
青空がきれい。今日は星がよく見える。ご飯が美味しくつくれた。近所の幼稚園児のお散歩がとにかくかわいい。
ちょっとずつ「ふふふポイント」を貯めている感じだ。
すごく地味で根暗な趣味に見えるかもしれないが、案外楽しい。

「ふふふ」の基準が割と低い方なのだと思う。
散財して高いもの買って高級な食事をするのが、この基準の最低ラインになっている人もいるのだろう。
もちろんそれも楽しいと思うけれど、それだけ基準が高いと疲れそうだな、と感じてしまう。
単にそれだけ豪遊できるお金が無いな、というのも、もちろんあるのだが。


悲劇のヒロインぶるつもりは無いし、朝ドラヒロインみたいに「わたし、へこたれへん!」なんて言うつもりも無い。
マイナスの感情はなるべく活力にするし、でもへこたれる時はへこたれる。

ただ、春のにおいみたいな「ふふふポイント」を、もっといっぱい見つけたい。
地味で根暗だとしても、それが一番持続していく幸せなのかもな、と思った。

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