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団地の街の買い物事情

幼い頃から海のそばの街で育ってきたために漠然と肉は高級品で魚は安く手に入るという固定観念を持っていたが、近年は事情が異なり海産物の値段が高騰している印象を受ける。スーパーには日頃から足を運び市価のチェックに余念はないが、そもそもよく行くのが東京郊外の住宅地の中にある利便性を売りにした店であるため、比較的高めの価格になりがちなのは否めないし、海産物においても原産地や市場から距離があり品揃えもイマイチといえる。

かつては夕飯前の買い物には駅前の商店街にある魚屋へ行けばその日その日に獲られたものが売られていて、懐事情に合わせて買っていくのが当たり前だったことだろう。日中に買い物に行くこともおぼつかないとなると先述したように生協の共同購入や宅配を使うのが当たり前となり、次第に調理すら煩雑となって冷凍宅配食に行き着く。それでも新鮮な魚を求めるとやはり魚屋に行きたくなるけれど、そもそも東京郊外において魚屋自体があまりない。

幸いなことながらわたしが暮らしている高島平は団地の街であり、急速に高齢化が進む土地ながらも魚屋がある。肉屋もある。八百屋もある。農協の産直もある。スーパーも団地の中に2軒ある。これはあまりにも団地が巨大であるためにこのエリアで他に大きな商業施設が立地しにくい事情もある。なんせ1万世帯3万人がほとんど一つの駅の徒歩圏内に暮らすのは他にはなかなかない。集客にしても団地で暮らす人が一定数来店するだろうし、他の住宅街と比べて小規模な商売であってもやりやすいのではないかと思う。

他に団地独特な買い物の方法としては移動販売車が週に一度やってくることだ。他の地区にあるのかわからないがわたしが暮らす部屋のすぐ近くまで魚屋の移動販売車が土曜日の午後になるとやってくる。一般的な魚屋同様の品揃えで、土曜日には必ずいるところも非常に重宝する。団地など高齢化ばかりで古くて住みにくいように思っていたが、ここは規模が規模だけに少々事情が異なるように思う。

高度経済成長期に開発された住宅地で起こりうる高齢化と買い物難民という社会課題において高島平団地は無縁であると述べてきたが、つまるところ高島平団地のほどの規模でない限り同じような問題は至る所で起こりうると考えられる。どの程度の規模であれば一定の商売が成立するのか、どこかの統計を見れば分かるのだろうが、今のところわたしはそれを知らない。しかしながら高島平団地を設計するにあたって設けられた商業区画においては団地住民が不便なく生活してなおかつ商売が成立するような規模のテナントを計算して作られたとあり、公団の設計チームにはある程度の算段の前提になるデータがあったはずだと思われる。

他に団地内に計画的な商業施設が置かれているものはしばしばあり、近隣でいくと練馬区の光が丘の中心地区、赤塚地区もうまく回っているように見える。もっとも光が丘においてはURの部屋のグレードも高めで部屋の賃料も上がるため平均所得が高めで高齢化もさほど進んでいない新しい住宅街なのだと考えられる。

以前暮らしていた下北沢駅徒歩10分の環七沿いアパートでは近隣にコンビニこそあるものの最寄りのスーパーは下北沢駅近辺ないし梅ヶ丘駅近辺となり、少々不便であった。そして肉屋こそ近かったが、魚屋、八百屋もなかったように思う。最寄りの魚屋はどこだったかと考えると下高井戸の長屋の市場の中にあったか、笹塚の甲州街道を渡った中野側にあったような気がするだけで、明確に覚えてすらいない。そもそも諦めていたというほうが正しい。

もし東京都内で働く人たちの中で、ほどほどに職場から便利で魚も買えるような買い物に困らない場所に住みたい人には、高島平団地をおすすめしたい。少なくともわたしは気に入って暮らしており、心の底からおすすめする。

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