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吉本新喜劇と粉もん

関西人ならだいたいそのステレオタイプに大なり小なり影響されているものがあると思うが、コテコテの大阪の人間でもない限り、ステレオタイプ通りの生き方なんてそうそう巡り会うことはない。ただし不思議なことに私の母方はだいたいステレオタイプな大阪を地で行っていたのではないかと思う。ラジオは基本朝日放送、阪神タイガースは別に応援しないが知り合いが球団職員だったので近鉄バファローズを応援し、同業者との挨拶は冗談半分に「もうかりまっか」。思い出すと少し懐かしくなってきたな。

食に関しても同じことが言え、一部は私にも受け継がれている。新世界には馴染みのどて焼き屋があり、目玉焼きには間違いなくウスターソースをかけるが、カレーライスは別に混ぜたりしない。それでも粉もんをおかずに白飯を食うのは間違いない。そしてたこ焼きなりお好み焼きなり焼きそばといった粉もんをよく食べた。私の頭の中にある土曜日の昼食は、先ほどあげた3つのどれかをTVの吉本新喜劇を眺めながら食べている風景だ。実を言うと実際に劇場に足を運んでみたことはない。

関西人の食卓には必ずたこ焼き器があると言われているが、おそらくこれは実際にそうである。なぜならたこ焼きは回転が良くて作りながら食べることができるので、大勢で卓を囲むのにちょうど良いからである。油をしいて、生地を流して、たこを入れて、天かすや刻みネギやお好みのものを入れていく。この順序は家々によって異なるので、お呼ばれしたときは一度主催にお伺いを立てると良いだろう。下手をすると細やかな悔恨を残すことになる。そしてこのたこ焼き器は飲み会が好きな大学生の家にも必ずといって良いほどあって、アムウェイの勧誘も「タコパしようぜ」から始まることが多いので、良い子のみんなは気をつけるように。

お好み焼きの作り方には少しこだわりがあってそれだけで1,000字程度になりそうなのでスキップして、焼きそばもよく土曜の昼食に供されていた。刻んだ野菜と豚バラ肉を炒めて、市販の麺を加えて、付属の粉末ソースで味付けをするだけだから工程はシンプルだ。なおかつ作り置きして冷めたものでも食えなくはないところもいい。付属の粉末で味が物足りなく感じるときは冷蔵庫に常備されているオタフクの焼そばソースを足している。実家では常に切らさずにあったので、世の中案外そうでもないと知ったときは少し驚いた。みなさんもそういう場面、これまででありませんでしたか。もしあれば教えてください。ちょっと調べまして話のネタにさせてください。

記憶もずいぶん曖昧なので実際に吉本新喜劇を見ながら粉もんを食べていたのはさほど多くなかっただろうけど、前枠にあった土曜午前の情報番組を眺めていたのは吉本新喜劇より鮮明に覚えていて、途中でチラチラ切り替わる王様のブランチという東京の店やらを紹介する番組が印象に残っていたからだ。後々東京で暮らすようになって「ああこれ見たことあるぞ」と種明かしのように気づいたこともあった。いまは東京のことをテレビで見てわざわざ知ろうと思わないけど、もしこちらでもやっているなら、久々に吉本新喜劇を眺めながら粉もんをつつきたい気持ちである。

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