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弁当男子になりたかった

〜系男子、〜系女子という言葉はいつ頃から出てきたものなのだろうか。詳しくは知らないが肉食や草食がどういう意味なのか背景事情を深く理解していない年頃でも聞こえてきた気がするので15年前くらいになるのだろうか。わざわざ調べなくてもどうせ流行語大賞ノミネートのwikipediaページを軽くスクロールしてくれば出てくるだろうから、気になった方はそちらでご確認ください。そのくらい興味がなくて、そもそも人を〜系とカテゴライズしてその上で性別でどうだのこうだのいうのはなんとなく好かんし、それが倫理的にイカれている気もしないので訳を深く考える気もしないし、その辺りが興味のなさにつながるのだが、これらに類する言葉として、弁当男子という言葉を新入社員のころに聞いたのを覚えている。

当時は間違いなく今よりプライベートに割く時間が多く、ほとんどが冷凍食品とはいえ弁当を用意していた。保温の容器にご飯を入れ、ほうれん草の胡麻和えなどを土日の間に作っておき、前の日の晩飯のタイミングで詰めておいて冷蔵庫で冷やしておくのだ。卵焼きなんかは朝ごはんと一緒に拵えてもよいが、昨日書いたように冬場の朝はだいたいお粥か通勤経路にある立ち食いそばだったので、そんなに作ったことはなかったと思う。いつからか家の真下に料理屋が入り、そこのおばんざいを買うようになってから、それを詰めて済ますようになった。

いつからかこれすら面倒くさくなってくる。白ごはんだけのタッパを家から持ってきて、コンビニで出来合いの惣菜を買って、これをおかずに食べるのである。これはこれでなかなかよかった。大きめの唐揚げだけを売ってる店が近所にあって、それをよく買ってきた覚えがある。もはやこれは弁当であるか怪しいが、タッパを毎日持ち帰り、毎朝ご飯を詰めていたら弁当と呼んでもいいのではないだろうか。しかしながらめんどうくさがりは年を追うごとに加速していく。Amazonでレトルトパウチのアルファ化米(商品名でいうとサトウのご飯)を大量に購入し、会社宛に送付してそれを延々と食べていくことにした。ちょうどそのころ会社の倉庫の管理を任されたのも大きい。つまるところある意味の業務上横領で、札幌の街中の一等地にパントリーを置かせてもらっていたようなものだが、上司も社長も倉庫の管理はまかせたから、と黙認してくれた。思い返すと懐かしい。

振り返ると新入社員の頃もずいぶん向こうのほうに見えるが、気持ちは今とそんなに変わっていない。仕事の中身は随分変わったし、変えてきたし、やりたいことがわからないから出来ることをやってきて、出来ることを増やしてきた。ようやくこういうことがやりたいのかなというのが見えてきたような気がするから、前言撤回、気持ちも変わってきたのかもしれない。それでもただ一つだけ明確に変わらない気持ちがあり、ぼくは結局弁当を毎日用意することが出来なかったという少しの悔しさである。

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