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正月ジャンボ宝くじ的話 (金融リテラシーを身につけてよかった話)

何年か前の正月の話。
家族を連れて実家に帰り、お節と近所の美味しいお寿司屋さんの料理を食べながら、ビールやら日本酒やらとりあえず実家にある酒という酒をちゃんぽん。気持ち良くなって寝落ち一歩手前のところ。

母: 「そういえば、年末にお隣のおばあちゃんが突然訪ねてきて、うちを買ってくれませんか?って。藪から棒だし、突然の訪問でそんなこと言われても、何だか良くわからないから断っちゃったけど」

私(フル覚醒): 「今すぐ詳細聞かせて。ちょっとお隣挨拶してくるわ」 

元旦特有の「外に出てみたら地球上に存在している人間は自分しかいないのでは?」という不安と、飲みすぎた酒にまともな話ができるかしらという不安を抱えつつピンポン。
新年の挨拶もそこそこに、先日母宛に頂いたお話に興味がある旨を伝えると、甥が大手の不動産会社で働いているから、詳しいことは彼から連絡しますとのこと。

何でこの話に興味を持ったかというと、お隣のおうちの土地の形状が「旗竿地」だったから。

旗竿地とは、道路に接している出入り口部分が細長くなっていて、その奥にまとまった敷地がある土地のこと。また、周りが建物に囲まれる環境となるため、近隣の建物からのプライバシーを守りながら風通しや採光をどう確保するかなど、土地の利用の仕方や建物の設計には工夫が必要です。

そのような考慮が必要となるため、旗竿地の価格設定は周辺の土地相場と比べると安くなり、人気エリアでも取得しやすい価格になっている可能性があります。ただし、将来売却を考えている場合には、周辺相場よりも低い価格での売却となったり、買い手がつかなかったり、ということになる場合もあります。

不動産関連サイトより抜粋

ポイントは、この土地に立っている建物は建築された時点の法令上は問題なかったんですが、現行の建築基準法上は許可されていない建物(既存不適格)であり、今の家(築60年弱)の建物を取り壊してしまうと、新しい建物が建てられない、使い道が限定された著しく価値が低い(&流動性が低い)土地になっているわけです。

建築基準法第43条(抜粋)
建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならない

建築基準法

(余談ですが、間口2m以上の土地に建てなければならないという規制を設けたのは、火災や地震などの災害が起きたときの避難経路や消防車や救急車などの緊急を要する車両が通過できないから)

但し、図の通り私の実家はこの旗竿地に隣接しているので、これをくっつけてしまえば一体の大きな土地になり、価値も流動性も全く違うものになります。おばあちゃんにとっては著しく低い価値の土地が、隣地所有者(私)にとっては市場価値になるわけです。

急ぎ不動産会社(甥)の担当の方と話したかったものの、そういえば今日は元旦。餅で溜飲を下げようとするも喉に詰まりそうなので、酒を飲みなおし溜飲を下ろす。

年始は中々開けず、待ちに待って1月12日にご担当が実家来てくれることに。ここは父が代理で話を聞いてくれて、何故か文書で報告してくれたので原文ママ掲載。

1月20日にすかさず買付申込書を提出。
ビーンボールギリギリの価格提出~先方の反応~妥結までの流れは以下のとおり。

1月20日に急いで申込書提出
安すぎると言われるも購入意思表示はポジティブに受け止めてもらえる
大至急買いあがり妥結

この取引のポイントは、同じ土地の価値が売手・買手間で大きく異なる、ということもそうですが、双方が考えている価値の視点も異なる、という点です。
私は純粋な不動産の市場価値で考えているので、相手方の出方次第ではもっと買いあがることも視野に入れていたことに対し、先方は今後の生活費を中心に考えていること、且つ早く資金化したい、というところで早期に話しがまとまりました。

以下は交渉前に不動産鑑定士にざっと意見を求めた際のメール。

39万円/坪で妥結したものの公正価値は220-250万円/坪とのこと

数字で整理します。

  • 購入土地面積: 43.91坪(145.18平米)

  • 購入価格: 1,710万円 = 38.9万円 / 坪

  • 相場坪単価(by 鑑定士): 220~250万円

  • 購入土地の市場価値: 220~250万円 / 坪 x 43.91坪 = 9,660~10,978万円 

  • 潜在利益(市場価値 - 購入価格): 7,950 ~ 9,268万円 

僕がこの取引で学んだこと、そして伝えたかったことは、潜在利益の多寡ではなく、金融リテラシーを持つことの大切さ、持たないことのリスク(主に機会損失)です。
ラッキーな出来事の結果だけを伝えているので、この感覚を伝えるのが難しいのですが、通常なら見送ってしまう些細な出来事や、そんな判断有り得ないと考えがちな状況下で、色々な認知バイアスに捉われず、公正価値を見極め、瞬時に正しい判断が出来ること。
日常には常に非日常や非常識な出来事がさらっと流れてきます。それを機会と捉えて掴み取る・手繰り寄せるアンテナを磨くこと。
これが金融リテラシーを身につけたものの行動様式だと思います。
セレンディピティの本質でもあると思います。

今回の話が日常に放り込まれた時の心のリアクションは概ね以下のようなものでしょう。

  • 隣人のピンポン自宅買ってくださいの唐突さと怪しさ

  • 正月の四方山話を飲んだくれ状態で聞き流して昼寝したい

  • そもそも不動産って一生に一度の買い物では

  • ましてや一見価値のなさそうな不動産を買うなんて

  • 築60年朽ち果て寸前の建物なんかついていてどうするの

変わった出来事が発生すると、リスク回避欲求、先送り欲求、現状維持バイアス等々、やらない理由が大至急押し寄せてきます。
これをぶっ飛ばして「何かおかしい」という直感を持ちアクションをする、そういうことの繰り返しが大切だと思います。

これとは別の、非常識なキッカケから起こった宝くじ話もありますので、金融リテラシー大事話、また書きます。

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