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超短編 『ミルクレープ』

フライパンに油をひき、薄いクレープを焼いて皿の上に載せる。

その上に生クリームを塗り、焼いたクレープを重ねていく。

この作業を繰り返すと、ミルクレープが完成する。

クレープと生クリームの層が厚みを増すにつれて、だんだんミルクレープっぽくなっていく。

そろそろ完成かな?という頃合いで、野心が芽生えてきた。

一番上に、最高の焼き色が付いたクレープを載せたい。

これが思った以上に難しい。

「悪くは無いが、3枚前の方が綺麗だった」

「物凄く綺麗に焼けたけど、次はこれ以上の物が焼けそうな気がする」

という感じで、中々最後の1枚を選べない。

クレープと生クリームの層は、どんどん厚くなっていく。

最高の1枚が焼けないのなら、せめて上にイチゴを飾りたかった。

しかしまだイチゴの季節では無い。


こうして僕は、クレープを焼き続けている。

ミルクレープの厚みは40cmを超えた。

生クリームは残りあと僅かだ。



今アナタは大変なモノを盗もうとしています。私の、心です。