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読むアート噺 昭和モダン×百段階段~東京モダンガールライフ~ 文化財「百段階段」

昭和モダン×百段階段~東京モダンガールライフ~
2024年3月23日(土)~6月16日(日)
ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」



はじめに

文化財「百段階段」とは

文化財「百段階段」は1935年(昭和10年)に建てられた、ホテル雅叙園東京で現存する唯一の木造建築です。通称「百段階段」ですが、斜面に沿って造られた7つの部屋を99段の長い階段で繋いでいます。一度外に出られて全体像を見ると、いかにこの構造がユニークなのかがわかると思います。いずれの部屋もその装飾たるや見事なもの。少し贅沢すぎるようにも思えますが、これも時代なのかなと。2009年には東京都の有形文化財にも指定されています。

モガ

モダンガールとは、大正末期から昭和初期にかけて現れた、近代的なライフスタイルを送る女性たちのこと。家庭から社会へ、職を持って自立し、最先端のファッションに身を包み、ヘアメイクにも強さや個性を感じられます。一方で自由で活発な活動は議論の的にもなり、そのピークは大正末期から昭和初期と非常に短い期間となりました。

はじめに


めっちゃ楽しい企画展でした。ファッションや視点は今見てもヴィヴィットでかわいい。今よりも段違いでおしゃれだなと思います。いいものを長く大事に工夫して…というオシャレにも知恵が感じられて、ワクワクとした気持ちになりました。ここは文化財「百段階段」、これ以上ない雰囲気を持つ会場です。昭和モダンが大好きな方も、モダンガールってどんなだったの?という方も、無条件なかわいさと先人たちのセンスに驚きっぱなしで、あっという間に99段を上り切っているんじゃないかと思います。おすすめです!

ここからは順を追って写真で紹介です。

十畝の間

最も格式が高い部屋。横山大観らと並ぶ、近代日本画の大家・荒木十畝による天井画も素晴らしいです。62-63歳の頃に描かれました。
ここでのテーマはモダンガールの装い。銘仙着物や洋装のコーディネート展示や、職業婦人、夜会、銀ブラなどシーンを再現しています。銀座でぶらぶらするのが銀ブラだと思っていましたが、カフェーパウリスタでブラジル(コーヒー)を飲むことだという説もありますね。ちょっとおしゃれをして楽しむ街、銀座の風格はこれからも残ってくれるといいいなと思います。

漁樵の間

デコラティブで言うと一番。文化財「百段階段」一豪華な部屋です。尾竹竹坡が原画を描き、盛鳳嶺が39歳の時に彫刻しました。
こちらのテーマはモダンガールのおめかし。舶来品やそれらにインスピレーションを受けて生まれた国産製品など、香水・化粧品を約50点!また、モガは菓子箱や人形などのモチーフにもなりました。それらの展示を通してモダンガールが生きた時代をアダチヨシオコレクシオンや、株式会社クラブコスメチックスの貴重な資料等で振り返るのがこの部屋です。

手に取るたびに心が躍るデザインとカラフルな容器。かわいい。
ご卒業お祝いセット、こんなんもらったらめっちゃ嬉しい。

草丘の間

礒部草丘による欄間絵と天井絵から草丘の間と呼ばれるこの部屋のテーマは文化財Bar。1929年の婦人世界に掲載されたモダンガールの資格10ヶ条も紹介しつつ、いやー、ここでカッコつけて1杯カクテルいただきたい!という気持ちに。めっちゃおしゃれです。


静水の間

この部屋の控えの間や天井画を描いた橋本静水。他にも池上秀畝や小山大月、長嶋華涯の画もありますが、一番多い橋本静水から名をとっているそう。
こちらのテーマは「描かれたモダンガール 竹久夢二」。雑誌の表紙やセノオ楽譜シリーズ他、夢二が描いたモダンガールを紹介。

星光の間

板倉星光の四季草花が各天井や欄間いっぱいに描かれた部屋。
あの菊池契月の元で学び、京都画壇を代表する画家です。
今回一番テンションが上がったのがこの部屋で紹介されていた小林かいちによるデザインです。かわいくモダンで、ずば抜けたセンスの良さ。20年ほど前までどんな人物かよくわからない、謎に包まれた作家だったそう。2008年に親族の方が現れ、資料などから少しずつ明らかになることもあるが、依然として調査途中とのこと。かいちが手がけたとされる絵葉書や絵封筒の素晴らしいセンスに感動しました。紙質・色など詳細にこだわった復刻版が欲しい…。

清方の間

すごい部屋があったもんだ、とここへ来るたびに思うのがこちら。
鏑木清方が描いた欄間と天井画はもう見事で、とても人気のある作家にこんなビッグプロジェクトを頼むことの贅沢さよ…と思うと気が遠くなります。著作権の関係上、取材でも撮影ができないので、是非現地でじっくりとご覧いただきたいです。
この部屋では、江戸川乱歩×人気イラストレーター・夜汽車のコラボによる『人でなしの恋』が立体展示となって登場。読み進めつつ、イラストの美しさ、部屋の雰囲気なども一緒に文学の世界に没頭できます。

頂上の間

川端龍子門下の天井画が見られる99段上がりきった部屋が頂上の間。私も大好きな西村五雲先生に絵を依頼していたと今回初めて聞いて驚きました。実際に描かれる前に他界されたため、空白の部分がそのまま残っているのだそう。
モダンガール その先の時代へ とし、画家・加藤美紀さんが文化財「百段階段」とモダンガールをモチーフに新作をお披露目。側には絵から飛び出したかのような着物コーディネートがリアルに展示されています。

最後に

予算や周りの人の評判・批判を考えずにとびっきりのオシャレをしていいよ!と言われたら、どんな服を着て、ヘアメイクできれいにして、自分の時間をどんなふうに過ごしますか?
先人たちが心ときめかせたかわいいものは不変です。厳しい今を生きる私たちももう少し、自分を大事に、そんなワクワクとする瞬間を楽しんだり、共有したりできたらいいなと思いました。最高に楽しかったです。文化財「百段階段」へぜひお出かけください。

オンライン限定チケット

グッズ付きのチケットや、ギャラリートーク付きのチケットなど体験、お土産も合わせての提案が嬉しいですね。


プランも豊富に!

↑ランチやアフタヌーンティーなどと、今展入場券などがついたプランも用意されています。世界観に合わせて着物で来られる方も多いという百段階段、全てお任せなら気楽に楽しめますね!

開催概要

展覧会名 昭和モダン×百段階段~東京モダンガールライフ~
会期 2024年3月23日(土)~6月16日(日) ※会期中無休
開館時間 11:00~18:00(最終入館 17:30)
※4月9日(火)は16:30まで(最終入館 16:00)
会場 ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財 「百段階段」
その他情報もあわせて、詳しくは公式サイトをご確認ください。



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