前の週末に、久々に友人と外へ出た。

こんな息苦しいご時世ではあるが、

月曜から金曜の朝から晩まで
マスクをして人との接触を避けて
つらい仕事をして、土日は家に篭って大人しく…

なんて生活、ずっと続けていたら心が死ぬ。

休日は心に栄養を与えなければならない。
少しでも命を繋げなければならない。

そのためには自分の心を開放することが必要だ。

けどこんなご時世。

遊びに行くにも人との接触を避けるための
工夫が必要である。

屋外で人が少なくてパーっとできる場所。

どこだろう。

それは大自然。

元々僕の故郷には海があって、
物心ついた頃から何かしんどいことや
抱え込むことがあれば、
いつもチャリを漕いで海に会いに行っていた。

本とお茶を持って、波の音をBGMに
読書に夢中になったときもあれば、

就活で将来に思い悩んだ夏、
日が落ちるまで砂浜でぼーっとすることもあった。


就職が決まって新しい生活が始まってすぐ、
海が近くにないことがわかってひたすら焦った。

22年間、海がそばにいてくれるのが
当たり前だった。

自分の心を開放できる場所はどこだろう。

結局、電車に揺られること2時間、
友人が住む神奈川まで行くことにした。

海に行くためだけに片道1,500円もかけるのは
もどかしい気持ちになったが、

それだけ海が僕にとって貴重で、
必要な存在なんだと思うと
それくらいの出費はなんでもないものに思えた。

江ノ電に乗ると、なぜか懐かしい気持ちになった。


社会人になって2ヶ月。
忙しさに追われるうちになんとなく忘れていた
大切な何かを少しずつ思い出してきた。

七里ヶ浜についたとき、
何も考えずにひたすら南に向かった。


君が見えた時、
風船が膨らむかのように両目が大きく開いた。

穏やかな潮風に嗅覚が研ぎ澄まされ、

メトロノームのように正確にリズムを刻んで
訪れる波音が聴覚を刺激して。

砂浜に入ると無意識のうちに裸足になっていた。

砂の温もりと柔らかさに両足が弾んだ。

いつのまにか夢中で走り出していた。

爪の間やズボンのポケットに砂利が入っても、
海水で服がびしょ濡れになっても。

子供のように無邪気にはしゃいだり、
いつかのようにぼーっと君を眺めたり。

少しずつ、自分の心が蘇ってくるのがわかった。

いつもいつも、
全てを包み込むように優しく受け止めてくれる君。

透き通る青には嘘がなく、
潜った先にはそれぞれの人生が流れている。

日が落ちて真っ暗になっても、
光を照らし、そっと道を示してくれる君。

そんな君が愛しい。

幼い頃からずっと側に居てくれた君が
もういないのは寂しい。

でも、いつまでも君に甘えていては
いけないのかもしれない。

ずっとここにいちゃダメなんだ。

君がそう教えてくれた気がした。

帰りの電車で、余韻に包まれながら少し泣いた。

目から流れた雫は海水の味がした。

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