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エリザベスの友達:村田喜代子:人生最高の一冊に出会えました①

「エリザベスの友達」(9/2022年)

人生最高の一冊に出会えました。読書が趣味で本当に良かったです。あまりにも感動したので、数回に渡って書いてみたいと思います。

痴呆の老人のお話ですが、リアルな描写であり、良い面、悪い面含めて様々な情報が満載なのに素敵なんです。過酷な現実から目を背けているわけではありません。かなり恵まれた老人ホームを舞台としているので、基本的には温かい雰囲気が流れているのですが、たまに冷たい要素をぶち込んできます、秀逸です。

物語は主人公の老女の今のシーンと、多分心の中で思い出している太平洋戦争の戦前、戦中、戦後のシーンで構成されています。そして、ここがポイント、彼女は戦前に夫の仕事で『天津』に渡っているのです。その当時の天津は、列強諸国が中国の利権を巡って、敵でありながらも微妙な関係値で共生しているというインターナショナルな町だったのです。

この華やかな頃の天津と、疲れ切った大日本帝国からの日本と、現在老人ホームで老女の娘二人が見ている風景が入り混じるのです。この絶妙なバランスに心打たれます。これが小説の醍醐味です。頭の中を様々な景色が通り過ぎます。

更に、この作品には「歌」という強烈な要素もあります。これについては次回、また書きます。

絶対に読んでほしい一冊です。

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