見出し画像

ドロシイ殺し: 小林泰三:やっと追いついたよ!

「ドロシイ殺し」(82/2021年)

アリス、クララ、そしてドロシイ。やっと、僕の不甲斐ない脳みそが小林の仕掛けるワンダーランドに追いつきました。三作品目で慣れたということもあるけれど、「オズの魔法使い」をアリスよりも詳しく知っていたという要素もあるかもしれません。とにかく、このシリーズ、やっと素直に楽しめたかもしれません。

このトリック、切れてます。オズを知っているならば、当たり前のことがトリックになっています。やられました。

あと、蜥蜴くんの思考回路に慣れてきたことも、この作品を楽しむのに大事ですね。いかに会話というものが非論理的に構築されているのか、まざまざと見せつけられました。もし、会話を言葉通りに受け止めていたら、蜥蜴くんのように会話は出来なくなってしまいます。もの凄く頭が良くて、言葉の意味を高速で解析できると、会話って出来なくなるんですね。発達障害?発達し過ぎちゃった障害?天才って生きていくのが辛いのですね。

本筋のミステリ以外にも楽しみ満載の作品です。良い独裁者問題や犯罪をなくすためには犯罪を無視すれば良い問題。哲学を感じさせる巨大な問題をさらりと語るあたり、作者の筆力を感じます。

で、本作の解説で小林泰三さんが昨年亡くなっていることを知りました。ご冥福をお祈りいたします。次のティンカーベルが最後なのか、辛すぎる。やっとペースがつかめてきたのに。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?