天城一の密室犯罪学教程:天城一:珍しい読書体験

「天城一の密室犯罪学教程」(108/2020年)

前から気になっていた作品が遂に文庫化されました。いやあ、こういう読書体験もあるんですね。作品とそれに対する作家自身の講評というか自解というか、不思議な気持ちになりました。

更に、作品の無駄の無さにビックリ。一作目を読んだときは、「え、これが小説なのか…」と思ってしまいました。本当にエッセンスだけ。こんなに読者に負荷をかける作品があるのでしょうか。なんか、現国の問題を解いているような気分。

舞台は第二次世界大戦終了直後あたりがメイン。作者、天城一がその年代の人なんですね。更に数学者でもあり、東北帝国大学数学科卒業とのこと。そして、タイトルにあるように全て「密室」ミステリです。もう、嫌になるほどに密室の連続。密室トリックの勉強をしている感じ。

本書、ミステリ作品部分と、それらに対する作家自身のコメントと言うか、密室に対するアプローチの解説があります。後半では、自分の作品以外の密室ミステリにも言及してます。もう、密室参考書ですよね。

これで夏休みの自由研究、いけますよ。そんな思いも出てくるように、色々な読み方が出来るのでしょうね。正直、軽くは読めません。重いです、疲れます。読書というよりは読解なのかも。でもミステリ作品ですよ、実にソリッド。固く、きつく、鋭い。痺れます。

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