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睦月童:西條奈加:ラストシーンに震えてください

「睦月童」(110/2022年)

江戸モノのファンタジーです。で、思ったよりスケールが大きいので驚きました。山の中から連れて来られた座敷童を中心に市井に転がる種々雑多な人情噺が繰り広げられるのかと思いきや、なんと、大変な展開ですよ。

酒問屋のどうしようもない跡取り息子、央介をどうにか更生させるために、親がとった手段が、なんと、あの座敷童をとある東北の村から江戸の自分の家に連れてくることだった。ってところからぶっ飛んでいるのですが、名前はイオといいます。イオは特殊技能、「人の罪を映す」という不思議な目を持っているのです。
ダメダメ息子はイオに出会って、一発で更生してしまいます。自分の罪を、隠したくて、忘れたくて、放置しておいた罪が目の前に鮮やかに浮かび上がるのです。
その後、央介はイオと共に江戸で起こるトラブル、事件を解決していきます。この時点では、幾多の事件を処理した後に、イオも故郷に帰ることになり、央介も立派に成長して目出度し目出度し、という流れだと思っていたのですが、とある事件から、イオの出生の秘密、それはイオが生まれた場所の秘密が徐々に明らかになり、そのイオの一族に対する騒動に発展していくのです。ここからファンタジー度、SFテイストが一気に濃くなっていきます。その一族の過酷な運命に一気に迫ります。

そして素晴らしいのがラストシーンです。小さな体の中で、下手をすれば世の中をひっくり返してしまうような、壮絶な生命のバトルが展開されているとは、、、
生き残るためには手段を選ばない本能の力と、人を思うという心の力、果たしてどっちが勝つのでしょうか?

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