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兇眼:打海文三:子ども、ドキドキ。

「兇眼」(33/2022年)

打海、もう新作、出ないんだ、と思ってたけど、まだまだ、読んでいない作品、たくさん、あるんですよね。これも、例の探偵社が出てくるので、ちょっと嬉しくなってしまいました。

眼の怪我の原因が想像以上にエグいんだよな、これぞ打海って感じ。そこだけでかなりのドラマだと思っていたんだけど、そこには深入りせずに躊躇なく進むところも打海だね。この物語の核はどこにあるのか、なかなか見えてこない。刺激的な事件の欠片に惑わされて、終着駅にたどり着けるのか不安になる、たまらない。

新興宗教の集団自殺と、同時に消えた5億円。そこから、まさか、あんなストーリーが展開するなんて…。打海作品でよく描かれる圧倒的に強い「子ども」たちがいつのまにか主役に躍り出てくる。ほんと、気が付いたら、彼らに物語が支配されてしまっている、この心地よさ、最高。

一応、子供たちの動機も書かれているけれど、そこは重要じゃないと思った。彼らの行動に理屈は不要、なぜならば、子どもだから。子どもって、そういう生き物だから。その動機、後付けでしょ、理由がないと行動できない大人の言い訳にすぎない。

大人たちを翻弄する子どもを描いているわけでもない、この不思議な緊張関係。年齢なんて関係ない、やれば出来る、やらなければ何も変わらない。子どもにこんな事、出来るわけないだろ、な~んて狭い了見の大人たちは、読まなくてよいです、打海作品。この子どもたちが弾ける感覚にドキドキするのです。



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