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シライサン:乙一:ホラーを楽しむ

「シライサン」(5/2022年)

あまりホラー系の作品は読まないのですが、たまに読むと、ホラー作品の楽しみ方が分かってくるような気がします。

理論的にホラーを分析するという矛盾した行為が大切なのかも。どういう理由でホラー現象が発生したのか、そこにどこまでこだわるのか、ポイントなんですよね。そもそもホラーに理由はないはずなのに、人はそこに理由を求めてしまうからホラーが成立する。

そして作品にも「ある程度理論的な解」を提示するパターンと「とはいえホラーはホラー」で終わるパターンがありますよね。完全な解を出してしまうと興醒めかもしれない。けれど投げっ放し過ぎは消化不良をおこす。この加減がホラー作家の力量なのかもしれません。そこ、乙一、流石です。ここまでハードに殺しておいて(ここは理論)ここは救うか(ここはホラー)といった緩急の付け方が上手い。ホラーは伝染病じゃないから、突然終了しても全く問題がないというポイント、ついてますね。

本作は乙一が本名、安達寛高名義で監督した初長編映画の原作です。映画は見ていませんが、小説とはかなり違うかと思われます。脚本だけでなく監督まで自分でというのは凄いですね。文字と映像が完全に同調するのでしょうか。小説を映像化する際に、どこをどう変換していったのか、乙一の思考回路を探る意味でも、映画、見たくなりました。作家の脳の中を覗くことが出来る稀有なパターンかもしれません。

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