マカロンはマカロン:近藤史恵:想像以上に(良い意味で)ヘビーです

「マカロンはマカロン」(109/2020年)

近藤史恵という作家は本当に気が抜けない。マカロンにこれほどの重さを乗せてくるなんて…

で、こんなビストロ、どこにあるんだ。読了後、速攻検索したものの、こんないい店、ネットに情報を出しているはずがない。あと人生、30年、いや、楽しく食事が楽しめるのは15年くらいかもしれない。この短い期間の間に、ビストロ・パ・マルを越えるお店を見つけられるわけないじゃないか…

そんな絶望の気持ちをフォローするにあまりある深い感動が本作品には詰めこまれています。本当に凄いぞ、近藤。表題作「マカロンはマカロン」の他「コウノトリが運ぶもの」「青い果実のタルト」「共犯のピエ・ド・コション」「追憶のブーダン・ノワール」「ムッシュ・パピヨンに伝言を」「タルタルステーキの罠」「ヴィンテージワインと友情」の8の短編が、全て料理とリンクしたちょっとしたミステリ仕立ての日常の謎として展開する。ミステリが足りないとの意見もあるようだが、本作品にミステリを過度に期待するのは間違いだろう。たいした事件じゃなくても良いし、見事な謎解きである必要もない。ここには、料理に寄り添う様々な人生が描かれている。生きているだけで、みんな謎、それを「闇」と読み替えてもいいかもしれない。謎が解けて、今までの闇に光が差しこむ。そこに料理が介在する。

なんて素晴らしい物語なんだ。

表題作はマカロンの本質を突きつけられた傑作だと思います。本当に気が抜けません。でも、必読かと。シリーズ三作目ですが、今回が一番心に刺さりました。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?